朝、体が固まる。
朝、体がカチコチに固まって動かなくなった。
まずい。と思う。
なにか分からないが、とにかく動きたくない。重苦しいプレッシャーが、体にのしかかる。呼吸は荒くなり、電話に手が伸びそうになる。
『すみません、体調がすぐれなくて、本日、お休みをいただきたいです』と、何度も頭の中を言葉がリフレインする。休みたい。休みがほしい。
駄目だ。と、言い聞かせる。休んでどうなる。この重苦しいプレッシャーと一日中戦うのか。しかし、仕事へ行くのにも苦しい。
「オーケーグーグル、5分後にアラームを設定」
いつもより五分遅く家を出る。起きるのはいつもより十五分遅かった。重苦しい気持ちで家を出る。走らなくては電車に間に合わないので、走る。もう、泣きそうだ。
誰かに「もういいよ、良くやった」と言ってもらいたい。それで、全部終わりにしたい。
そんな気持ちで、電車に乗り込む。
電車に乗ると、少しだけホッとした。もう、行くしかないという気持ちと、勝手に職場へと向かう乗り物にいつも通り乗れたことに安心する。
体を無理やり動かして、なんとか仕事へ行くルートへ飛び込めた。飛び込んでしまえば、もうやるしかないので、かえって気が楽だ。
職場に着くと、更に気持ちは楽になった。もうここまで来てしまったら、やることをやるしかない。何も決まっていないけれど、仕事をして時間を潰し、できるだけあくびが出ないようにする。
そんな朝だった。仕事を任せてもらってからは、少し楽になってきたがこの朝のしんどさはなんとかならないものか。
特に今日は今週初出勤ということもあり、何をするか分からなかったのも要因の一つである。何があるかわからない。朝起きるたび、仕事に行こうとするたびに、この不安が私を布団に縛り付ける。
顔を洗えず、ヒゲも剃れなかった。なんとか制服だけカバンに詰めて仕事へ向かった。
適応障害を患った人間が、その後鬱を発症する確率は50%だそうだ。欝は突然やってくる。発症すると、それはもう、付き合っていくしか無いのだという。
麻薬のようだと思った。
一度出たらもうアウトだ。その先に待っているのは、長い長い共存生活である。脳がクシャクシャになって、萎縮してしまっているかのようなCTスキャン画像を思い出す。恐ろしいものなのですよ、と、教えられた写真。まるで自分がそうなってしまったかのように感じる。
私はこの体を抱えて生きている。手放すことはできない。
こうしたことばかり書いているからか、最近私のnoteはおすすめらんが「休職」とか「復職」が多く出てくる。私と同じように苦しみ、悩む人がそれなりにいる。そんな中で、私は「発症したらアウト」というバイオハザード方式の思考法を採用しているため、私と同じ境遇の人にいい言葉を届けることはできないだろう。
私は仕事が嫌いではない。だが、通勤は嫌いだ。朝が嫌いで、食事が嫌いだ。睡眠は好きだが、上手く寝付けない。なのに朝は眠い。昼まで眠い。
夜になっていくに連れ元気になる。今日も、出勤したから、悪くない一日だった。でも、だからといって、これが体に良いかと言うと分からない。長期的に見て私は休んだほうが良いのかもしれないし、早く死ぬかもしれない。
でも今は、そんな損得勘定で動くことができない。とにかく一日一日が死闘であり、余裕に溢れた生活など二の次、三の次である。
今は、明日を生きることしか考えられない。一日という短いスパンで、人生が回っている。
仮面ライダーオーズ/OOOという作品がある。そこでは主人公の火野映司は生活スパンが一日であった。ちょっとの小銭と明日のパンツがあれば生きていける。その理論で行くと、今私は手元に数万円の現金と、明日のパンツがあるので生きていけるはずだ。
私の人生は仮面ライダーによって作られている。仮面ライダーのポリシーが一年かけて自分に刷り込まれていく。そして私はヒーローになれないまま、ヒーローの生き様をなぞるかのように「かっこいい」と思う自分を描く。
それでも限界はある。私は仮面ライダーではない。ただの社会人だ。世界を守る力も、信念もない。ただ一日、一日を生きている。その時に、たまに仮面ライダーのことを思い出すのだ。
どうにもならないとき、仮面ライダーの力が欲しくなる。それがフィクションの世界の話だとわかっているけれど、それでも朝起きるだけの力がほしい。
役者さんも過酷な撮影を頑張っているのだから、私も精神病にどっぷり浸かっているとしても、もう少しギアを上げていきたい。
フィリップのように本を読み、城戸真司のように真っ直ぐで、天道総司のようにわがままなかっこいいヒーローの真似事をして仕事をする。
それでも、体が動かなくなる日が来る。カチコチに固まって、何もできなくなるのではないかという焦燥感が襲ってくる。
対応策はまだわからない。今は、急場をしのぐ方法としてエナジードリンクを枕元に置いた。明日、朝飲んでみようと思う。
さて、もう寝る時間だ。
今日のところは、おやすみなさい。
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