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[北白川に場をひらく] シスターフッド書店kaninに聞く (前編)

こんにちは、「北白川まかせろ!不動産」の北白川文化研究員、綿野です。
先日古本屋さんで角野栄子作「魔女の宅急便」をみつけ、なにげなく読んでたら、主人公キキは住み慣れた町を離れ、住む町も、家も、仕事も、すべてひとりで探さなくてはならず。13歳の少女がこなすにしては、魔女のイニシエーションてなんとハード!と思ったのでした。

あたらしい土地に住んだり、お店を開いたり、仕事をはじめたり。これまでとちがう場所で生活や営みをつくろうとするとき。大人でもなかなかうまく事を進めるのは大変。みんなどうやって町を選び、そこに居場所を作っていくのだろう?
今回話を聞いてみようとうかがったのは、昨年北白川に「シスターフッド書店Kanin」をオープンした京極祥江さんです。

京極さんが本屋をはじめようと考えたきっかけは、編集や出版のお仕事に携わるなかで、偏った広告表現やルッキズムを助長しかねない企画などにうんざりした経験から。

「少しでも女性の助けになるような本や知恵を集めて応援できる場をつくりたい!」と小学校の同級生である友人と奮起して、現在の北白川別当町に物件を探し出し、現在にいたる経緯があるそうです。

■シスターフッド書店Kanin (📍北白川堂ノ前町)

シスターフッドとは「女性同士の連帯」という意味で、近年は映画や漫画、小説などのジャンルとしてもよく使われています。
「店長さん」とお呼びすると、「そう呼ばれることにまだ馴染めなくて…。<店番>くらいがちょうどいい感じかも」と笑われました。そうか、個人店を営む=店長というイメージがあったけど、目的や思いを同じくする仲間とそれこそシスターフッドで共同運営するのは軽やかでいい。だって一人で経営って不安だもの。仲間がいたら相談し合いながら経営できる。

シスターフッド書店Kaninの入口。ガラス張りで店内は外からもよく見える。
書籍が並んでいるスペースの奥はカフェスペースも

本とお酒を楽しめる女性のためのブックカフェをコンセプトに据え、フェミニズムやジェンダーに関するさまざまな種類の本をならべた。新刊だけでなく古本、またZINE(個人が創作する小冊子)やフリーペーパーなども豊富。評論やエッセイ、小説だけでなく漫画やアートブックなども。

実は京極さんにこの物件を紹介したの「北白川まかせろ!不動産」の母体である不動産会社・CONTEMPORARY COCOON ROOM 702(通称CCR)
ここに行き着くまで、物件探しはかなり苦難を極めたとのこと。

ー 北白川でお店をはじめようと思ったきっかけは?

京極(以下K)「実は最初は隣町の一乗寺で探してたんです。人気店の「恵文社一乗寺店」や、「マヤルカ古書店」、最近では「アリバイブックス」とか、本好きな人がわざわざ目指してくる町なので、それらの本屋さんに行ったあとにわたしたちのお店にも来てくれないかなって思って。」

ー 一乗寺は隣町ですが、実際お客さんがハシゴをしようとすると徒歩では少し距離がありますよね。

K「私たちの探している条件が金額的にもきびしすぎて、なかなかよい物件に出会えなかったんです。おかげで本当に色んなトンデモ物件ばかりに出会ってきてて、もうお店をつくるのは難しいのかと半ば諦めていました。」

ー トンデモ物件ですか? 例えば??

K「ブックカフェにしたかったので台所付きで探してたんですが、台所が外だったり。隣の部屋とドアが共用だったり…。」

ー ドアが共用?? それは店舗としても営業が厳しそう…

K「この条件ではお店を開くのが難しいのかね、と一緒にやっている友だちと一乗寺のワインバーで愚痴をこぼす日々だったんです。だからこの物件に出会えた時は、やったー!って即決でした。」

ー どういうところが即決の理由だったんですか?

K「もともとCCRさんのほうで改装して使用されてた物件だったのでほぼ居抜き(設備や什器備品、家具などがついたままで売買や賃貸されること)で入れたんです。改装費がほとんどかからないというのが開店資金に余裕がないわたしたちにはとても大きいことでした。」

内見時の店舗の様子

ー 「デュ北白川」というこの複合ビル自体、面白いですよね。1階はテナントで、カフェや整体、ワインショップ、雑貨屋さん、スナック、バーなど異なる業態のお店がキュッと同居してる。

K「そう!そこが面白くて。昔デンマークに住んでいたことがあったんですが、ヨーロッパの建物によくある<パテオ>みたいな作りなんですね。そこにも親近感があったし、工事もいらないので、ここに本棚をつくって、こっちをカフェにして…と、すぐお店のレイアウトイメージが湧いたんです。」

白川通という大通り沿いに建つ複合ビル「デュ北白川」
パテオ風の吹き抜け

ー 実際北白川でお店をはじめてみてどうですか?
K「とにかく静かで、すごくいいです。銀閣寺の周りは観光客や登山の方が多いんですが、こちらの通りまでは入ってこないですし。お客さんはローカルの方というより、こういう変わったテーマの店なのでうちを目指してわざわざ遠方から来店してくださる方がほとんどです。とはいえ、白川通に面してるのでバスの本数も多くてアクセスも便利なんです。」

ー やっぱりKaninを目指して来られる方が多いんですね。フェミニズムやジェンダーに関する本がこれだけジャンルレスに硬軟おりまぜて揃ってるお店ないですもんね。

K「そうですね。女性がほとんどですが、もちろん男性もちらほらいらっしゃいますよ。お客さんはみんな本を丁寧に扱ってくれる方が多くてうれしいです。白川通に出している看板をみて、なんだろう?って近所の方が入ってきてくれることもありますね。近所の大学の学生さんも多いですよ。」

ー 今後なにか考えていることはありますか?

K「まだまだ精一杯ですが、作家さんを招いたり、やりたいことはたくさんあります。今は読書会を開いてて、フェミニズムの古典でもあるシモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』をみんなで読んだり。一人で読むのは大変だけど、みんなで読むと発見がある。あと読んでこなくても全然OKです。」

- 読んでなくてもOKなのは参加しやすいですね

K「ジェンダーやセクシャリティって人に話せないで抱えてしまうことも多いと思うんですが、ここには手がかりになる本がたくさんあるんで。ぜひ仲間に出会ったり前を向いていくためのきっかけの場にしていただけたらうれしいなと思ってます。」

🔍研究員まとめ
本というのは書籍の形をした人であり歴史だ。同時代に生きている人が感じていることはもちろん、もうこの世にはいない人たちがなにを考えどう活動してきたのか。本を開くことはいつでも人間そのものに瞬時にアクセスすることができる。
ここに並べられた本たちの背表紙をみていると、生まれた時代や国籍も立場も考え方も異なるあらゆる女性たちの生き様、知恵とロマンが並んでいるようで、胸がいっぱいになる。
まだ出会ってない女たちが本という形で読まれるのを待っているのだから

📚 Kaninで購入した本

左:「小山さんノート」(エトセトラブックス)
右:『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』和田靜香 著

次回後編は、京都市内の男子校に通う友だちのT君を誘ってKaninに遊びにいってみました。京極さんとT君が一体どんな話をするのかな?

written by
北白川文化研究員 NO.2 綿野かおり
北白川歴 5年

お知らせ
Kaninさんが入っている複合ビル「デュ北白川」1階で現在店舗用物件を募集しています。現在カフェ、スナック、bar、ナチュラルワインのお店、リラクゼーションが入ってます。
詳細こちら▷▷ https://www.ccr702.com/archives/article/19219

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▼公式サイトCONTEMPORARY COCOON ROOM702


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