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アイポイントというスペックについて思っていること

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ファインダー関連のスペックの中でいちばん厄介なのが「アイポイント」というヤツだと思っている。

スペック表にはシンプルに数字で「××mm」と書かれている。

が、それは表向きのものであって、言わばメーカーの建て前にすぎない。

数字は数字として、そのうしろにくっついている注意書きの中身とセットでないと正しく読み取れない。

そういうスペックであるアイポイントについて、少しばかり考えてみたい。

ファインダーののぞきやすさの目安となるスペック

アイポイントは、おおざっぱには双眼鏡や顕微鏡といったのぞき込むタイプの光学機器ののぞきやすさの目安となるもの。アイレリーフとも言う。

カメラのファインダーの場合はどれぐらい遠くからファインダー像およびその外側の表示が欠けることなく見られるかを数字であらわすことになっている。

ので、長いほうがいい。それを以前は「ハイアイポイント」「ロングアイレリーフ」などと言っていたが、今は単純に数字を載せるのが主流である。

ちなみに、国内メーカー製の現行のレンズ交換式カメラ(一眼レフとミラーレスカメラである)で長いほうのトップはオリンパスE-M5 Mark IIIとソニーα7 IIの27mm。次いでソニーα1とα7S IIIが25mmでつづく。

反対に短いほうはトップ、と言うか数字の上ではワーストになるが、ニコンD500の16mmだ。以下、同じニコンのD6、D850、D810Aが17mmとなっている。

ついでに書くと、ファインダーを内蔵した現行68機種のうち、どういうわけかアイポイントの数値を公開していない2機種をのぞいた66機種の平均値は21.19mmだ。

アイポイントってどこからはかった数字なのか

スペック表に載るアイポイントの数字についてはおなじみのCIPAが、接眼枠または接眼レンズ(保護ガラスをふくむ)の最後尾から、ファインダー内の映像と情報表示が欠けることなく見られる目の位置までの最大距離、というふうにガイドラインをさだめている。

実際はもっと細かく書かれているが、長くなるのではしょっている。

どちらを基準にするかはメーカーが好きに決めていいことになっている。

ただし、接眼枠のほうの数字を書く場合は注釈は不要。つまり、注釈がないものは接眼枠のほうの数字で確定、と考えてよさそうだ。

また、アイカップなどの取り外せるパーツは外した状態ではかっていいことも書かれている。

ようするに、かなり曖昧な基準での数字だってことである。

ちなみに、だいたいのメーカーは接眼レンズからの数字を記載している。

また、ソニーとペンタックスは接眼レンズからの数字と接眼枠からの数字の両方を併記。パナソニックは注釈なし、つまり接眼枠からの数字と考えていい。

アイポイントだけでのぞきやすさは判断できない

さて、ここまででおわかりいただけたと思うが、問題はまずアイポイントをはかるスタート地点がよろしくないこと。

接眼レンズは接眼枠よりも奥まった位置にあって、撮影者の目はそこまで近づけない。

しかも、その奥まり度合いはカメラによってまちまちだ。

接眼レンズからの数字と接眼枠からの数字の両方を載せているソニーとペンタックスのスペックを見ると、2社の現行16機種の接眼レンズから接眼枠までの距離、つまり接眼レンズの奥まり度合いは平均で3.57mm。

つまり、撮影者にとってのアイポイントはスペック上の数字から平均3.57mm差し引いたものと考えないといけないわけだ。

が、接眼レンズの奥まり度合いは機種によってかなり違う。

ソニーとペンタックスの16機種のうちの最小値はペンタックスK-3 Mark IIIの1.5mm。接眼レンズが接眼枠より1.5mmだけ奥まった位置にある。 

※2021年8月15日追記 ペンタックスK-1 Mark IIのデータが抜けていたのが判明しました。そのため上の一文を

「ソニーとペンタックスの17機種のうちの最小値はペンタックスK-1 Mark IIの1.1mm。接眼レンズが接眼枠より1.1mmだけ奥まった位置にある」

に訂正します。また、関連する個所も修正します。ご了承ください。

それに対して最大値はソニーα7 IIの5mm。接眼レンズが接眼枠より5mmも奥まった位置にある。遠いんである。

「mm」の単位ではかるスペックなのに、その基準となるポイントに3.9mmもの差があるのだ。

まして、数字を出していないメーカーさえある。

そのうえ、アイカップなどの厚みは加味されていない。

上げ底ならぬ下げ底にゲタまで履かせた数字だけ見せられたところでなにもわからない。カメラのファインダーのアイポイントとはその程度の実にあやふやなスペックなのだ。

ニコンの「丸窓ファインダー」と呼ばれるものについて

ところで、最初のほうであげたアイポイントのワーストを思い出してもらいたい。D500の16mmを筆頭に、D6、D850、D810Aといったプロ・ハイアマチュア向けモデルにかぎってアイポイントが短いのだ。

が、これらのファインダーがのぞきづらいとかケラレが起きやすいと言う人がどれだけいるだろうか。

むしろその逆に、トップクラスののぞきやすさだと評価されているはずだ、と個人的には思っているし、このことはほとんどのメガネ使用者が同意してくれると思う。

そう考えると、ファインダーののぞきやすさ、ケラレにくさを左右するのはアイポイントだけではないのではないか、とも思えてくる。

写真を撮るという行為におけるファインダーののぞきやすさ、ケラレの少なさというものは、アイポイント以外の別のナニカもかかわっているはずだと思っている。

それがどういうものなのかを正しく言い当てることができないのがものすごくもどかしいのだけれども、おおざっぱな目印として「丸窓ファインダー」というのがあげられる。

ワタシの中では、アイピースなどを取り外した素の状態の接眼枠が22mm径の円形で、プロ・ハイアマチュア向けモデルに搭載されているファインダー、というぐらいに考えていたのだが、Twitterで、

「D6は違うよ」

とのご指摘をいただいた。

調べてみるとD4まではそうだったのが、D5からはネジ込み式のアイピースが装着できるアダプターが標準装備されている、そういう仕様に変わっていた。

デジカメWatchさんの記事にわかりやすい画像があったのでリンクを貼っておく。これはD5のものだが、仕様としては現行のD6も同じなはずだ。

デジカメWatch「写真で見るニコンD5

なものだから、「丸窓だからいいんだ」とは言えなくなってしまっているのだ。

が、一方で、高性能ファインダーとして名高いパナソニックDC-S1シリーズの接眼部も丸形の接眼枠(ニコンと違ってバヨネット式だが)だったりするのは興味深いところではある。

まとめ

アイポイントがファインダーののぞきやすさの目安になってくれないなら、いったいなにを基準に考えればいいのだろうか?

実のところ、ファインダーののぞきやすさは目の位置だけでなく、撮影者の顔の彫りの深さだったり、のぞき方や構え方のクセだったり、いろんな要素がからみ合ううえにメガネの有無や形状、目との間隔などにも影響を受ける。

となると、ようはもう実際にファインダーをのぞき比べてみないとなんとも言えないことになってしまう。

少なくとも、下げ底にゲタ履きの数字しかわからないアイポイントだけで良し悪しを議論するのは意味がないことだけはたしかだ。

それと、メガネ使用者のワタシの経験上、アイカップをつけた状態でケラレが生じないカメラはあまりないが、アイカップをはずしさえすればファインダー像と情報表示がきちんと見えるカメラは少なくない、ということ。

なので、アイカップははずしてしまったほうが間違いなくのぞきやすくなる。硬い接眼枠がメガネにごりごり当たるのをいとわなければ、という条件つきなので、そのあたりが気になる方はご注意いただきたい。

なお、工具がないとアイカップを取り外せないカメラの場合、思い切ってしまうとメーカー保証が受けられなくなったり、防塵・防滴性に差しさわりが出る可能性もなくはないので、そのへんのリスクをしたうえで自己責任で取り組んでもらいたい。



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