鬼多見 直

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【創作小説】さよならも言えなかった

からん。手元のアイスコーヒーが大きく音を立てた。 「え、今なんて?」 「だから、彼氏ができたの!」  窓際の席で燦々と照らされたその表情は、まるで太陽のようだ。 「この前、友達とごはん行ってくるって話したでしょ? 実はその人なんだけどさぁ、流れで付き合おうって話になっちゃって」  露をまとったカフェオレを蜜のように含む女――絵理は、一秒前までは私の恋人の筈だった存在だ。  二人の関係に、偏見や生きづらさが伴う事も承知で、二人で何度も何度も確かめ合った。この関係を約

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