コラム:自由な茶

茶道は床の間があり畳を敷きつめたでの茶室でしか出来ないと思われる方も多いと思いますが、昔より野遊びとか野がけといい外で茶会を催すことがありました。今は野点といいましてピクニック感覚で茶を点てて、客に振る舞うこともできます。とくに自由な茶を楽しむのであれば茶箱が合います。茶箱とは茶を点てるのに必要な最低限の茶道具を収納して移動しやすい箱や籠などの容器に入れ収めたものをいいます。
山登り専門の店にも山で一服頂けるような野点セットを目にします。ポリエステルの巾着袋の中には、驚くことにメラミン樹脂でできた茶碗が入っています。山登りですから荷物にならないように軽く、ある程度の衝撃に対して配慮した素晴らしい茶箱です。
茶箱には木地や塗物などの箱があり、竹・籐などで編んだ茶籠があります。中に入れる道具は薄茶を入れる茶器、茶を掬う茶杓、そして茶碗です。茶筅と茶巾は使いますと濡れてしまいますので、茶筅は茶筅筒に入れ、茶巾は茶巾筒に入れてから収めます。
茶器は小振りな棗、もしくは見立てで蓋付きの小物入れでも構いません。見立てたものですと話題も豊富で楽しさが増します。とくに海外の土産物などには茶道具に見立てられるものが沢山ありますので、是非、収めたいものです。茶杓は短い物から折りたたみの細工があるもの、茶碗は箱に収まるほどの小振りなもの、こちらも見立てで茶碗に変わる器を選び自由な取り合わせをします。さらに小菓子の入った振り出しを収めれば、何処でもお茶を楽しむことができます。
古くから茶人は自分自身の茶箱をもち歳月を掛け道具を入れ替えたりしながら茶箱を組むことを楽しみます。茶箱を使う楽しさと集める楽しさがあります。
もちろん点前手続きもあり、道具を置く位置に決まりがあります。しかし、楽しむことからはじめるのも茶箱の良さであります。旅先などで気軽にお茶を点ててみると、違う視点から茶の親しみ方を感じることが出来ます。また、点前の意義を見直せ、道具の取り合わせ方も豊かになります。そして、茶室とは違う和が深められます。

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