きたざわたくみ

別名 きたきた  洋の東西に限らず、面白いもの怪しいものを追い求める幻想と現実の世界を…

きたざわたくみ

別名 きたきた  洋の東西に限らず、面白いもの怪しいものを追い求める幻想と現実の世界をフラフラする人です。

最近の記事

五話 「ユウサイトミィカイヲカタルコト」

「やい幽斎、お前は世の怪なる物事に興味を持っているようだが、アヤカシについて語る事はできるか?」 夕食の後、晩酌に付き合ってくれたみぃが私に絡みだしました。 「一応僕も社を預かっている者だ、本家の君ほど詳しくはないが怪を語ることぐらいは出来るさ」 「そうか、なら腕を見てやろう、音の怪にいて知っていることはあるか?」 「音の怪か…」 チャンチャンコの袂に手を入れて私が考え出すと、みぃはちゃぶ台の上にあがり、おいしそうに猪口のなかの燗酒と、アジの開きのアラを舐めだしました。 「そ

    • 四話 「カミカクシノコト」

      「高野聖に宿貸すな、娘取られて恥かくな」 (古いわらべうたより) こんばんは、皆様、幽斎でございます。 皆様は「ヤドウカ」というアヤカシをご存知でしょうか… 夕方白い装束を身にまとい、袋を担ぎ「ヤドウカ」と叫びながら遅くまで遊んでいる子供を袋に入れてさらっていく子取りの怪でございます。 本日は、そのような不思議なお話をさせていただきたいと存じます。 「大変だ、幽斎庵! 子供の様子が変なんだ!」 みぃと遅い昼食をメザシでとっていたところを、駐在の二条が駆け込んできました。 「

      • 幽斎庵事件帳 三話 「ヨミチデソデヲヒクコト」

        みなさまこんばんは、幽斎でごさいます。 雨の夜には怪しきこともたくさん起こります。幽斎の独り言、しばしお付き合いいただければ嬉しく存じます。 「やぁ、降られたよ」 「遅いぞ、幽斎、僕は腹が減って死にそうだ」 川越に仕入れに行って、そこで話し込み、帰宅した頃にはもうかなり外は暗くなってきていました。私の住んでいる山口は、所沢町からかなり離れた場所にございます。夜道も暗く、提灯でもなければ足元もおぼつきません。 「すまないね、魚屋が閉まる直前で、イワシを安くしてくれた。今日は福

        • 幽斎庵事件帳 第二話 ネコニナマエヲツケルコト

          幽斎でございます、先日の一件で、私は図らずとも三毛猫の同居猫を得ました。 もともと気軽な身に、猫が一匹紛れ込んだところで気にはなりますまい… 今日も幽斎のあやかし話にお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。  「さて、君に名前を付けてあげなければいけないね…」  私は三毛猫をのぞき込みました。  「僕は僕だ、名前など必要あるものか!」  三毛猫は直立し胸を張ります、もともとこの猫、化け猫ですから直立するのは不思議ではありますまい…  「しかし猫君、そうもいかぬのだよ。

        五話 「ユウサイトミィカイヲカタルコト」

          短編 幽斎庵事件帳

          時は明治28年 神無月 「みなさんこんばんは、幽斎でございます…私は東京から程よく離れた田舎町所沢で、古書を扱う古本屋の店主にございます。どういうわけかアヤカシ事に縁が深く、日々不可思議に追われる毎日、一時この幽斎の独り言にお付き合いいただければと思う次第にございます」 第一話 「フクネコサマノコト」 ある日のことでございました、私は川越で行われた古書の競売にでかけお目当ての古書を風呂敷包に入れてこの所沢の街まで帰ってきたところでございます。 所沢の街から山口の庵まで、歩い

          短編 幽斎庵事件帳