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ちょっと聞いて~-母と向き合う私のものがたり-

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認知症が進む実母と奮闘する毎日。 幼い頃は憧れだった母の姿。老いてゆくことは当たり前のこと。いつかは来ると覚悟はできていたつもり。私もゆく道なのだから。怒りたくない、理解してあげ…
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#母

NO.15『心の準備』

へっぽこ娘 母の介護認定がおりる前に、姉弟と一度母の今後について色々相談をする機会を設けた。「要介護3」になると特別養護老人ホームに入所することができるようになるので、入所させるかどうかについてもお互いの気持ちを確認し合った。 私の介護の大変さを心配してくれている姉弟は、特別養護老人ホームは数百人の入所待ちがあると耳にしていることもあって、入所させるならなるべく早く申し込みをしておいた方がいいと提案してくれて、その方向で行くことを皆で確認することができた。 まずは、母の現在

NO.14 『複雑に絡み合う』

肋骨骨折による11日間の入院から帰宅した母は、精神的混乱が一層強くなっていた。環境が変わることが認知症にはよくないことはどこかで聞いて知っていたが、ここまでひどくなるとは思っていなかった。表情に力がなくなり、目つきが変わり、ボーっとしていることが多くなった。食事もあまり食べなくなり、見た目でわかるほど痩せてしまった。そんな母の姿を見ると切なくなり、今さら考えても仕方ないことだとわかっているけれど、入院させたことを悔やむ気持ちも湧いてくる。でもそんな風に生気を失ったかのように見

NO.13『母の入院』

病院の先生に言われた一言。母との関りを通して心が色々動く。 こんなことがありました。 ちょっと、聞いて~ へっぽこ娘 母は自然がいっぱいの農村で幼少期を過ごしたこともあって元々足腰が丈夫だった。どちらかというと家でじっとしているより外に出るのが好きで、少し前までは暇さえあればよく近所を散歩していた。仲良くしていた友達が施設に入ったり亡くなったりして「私には行くところがないからつまらない」と嘆いては一人で外出していたのだが、さすがに最近はその足腰も年齢と共に衰えてきて、散歩

NO.12『鍵』

母の様子も少しずつ変化してくる日々。 分からせたい、なおしたい。という事よりも、どうしたら一緒に生きていけるか、お互い気持ちよく生活できるのか。 そんな事を考えさせられる出来事がありました。 ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 母は相変わらず毎日探し物をしている。物がないと盗まれたと言っては主人を疑い、私が時間を費やして見つけてあげてようやく母が落ち着くという繰り返しの毎日だった。私はそれが嫌なので、探さなくても済むように色々工夫をしているが、それにも限界がある。 例えば畳ん

NO.10『事件その2「凶器は隠して…」』

前回の事件の後、また事件が起きました。ドキドキしたけど、これまでとは少し違うふれあいが出来たような…。 いいふれあいって何だろう。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 そして、前回の事件から幾日も経たないうちに第二の事件が起こったのだ。その日は私も母も休みで家にいて、主人だけが出勤だった。朝から自分の部屋で何かしていた母が大きな荷物をいくつか抱えて恐ろしい表情で2階に上がってきた。「まったく、全部何にもなくなっちゃうんだから!」と大きな声で怒鳴っている。見ると片方の手に園芸で使う

NO.4『夢』

ゆく道だからと思っていても、優しくできたり、鬼のようになってみたり。母の事が理解できず悩んでしまう毎日。そんなある日、いつもと少し違う形で、母の事を知れた気がした。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 なかなか寝つけなかったある晩、おかしな夢を見た。広い大きな公園でたくさんの人がお弁当を食べたり遊んだりしている。私は何故か姉と長男(夢の中では7~8歳くらいだった)と一緒に何人かのグループで来ていて、時間になって集合場所に戻ろうとしていた。屋外だというのにみんな靴を脱いで遊んでいて