恩田陸「蜜蜂と遠雷」(ペンネームは恩田三姉妹から)


例えば、色々なゲストが来るライブやフェスなどの会場で
特にファンじゃない人が出て来て、こちらも少し気を抜いて聞いていたら
その歌や演奏が素晴らしくてはからずも涙が出る、というのが稀にある。
この涙は、小説を読んで頭で理解して泣くというのとは
異なるシステムで流れる涙だと思う。
何が何だか分からないままに、自分のキャパシティを超えたものに
突然つかまれ驚き、その驚愕に身体が反応したというか。
この小説はその、後者の涙が出るのだ。
ものすごいものを「聴いて」しまった。という気持ちにさせる。
読者たちは、天才たちのコンクールを“実際に”聴いている。

特にファンじゃなかったのに演奏の素晴らしさに涙が出る、と書いたが、
私のつたない経験のなかで最大のそれは、矢野顕子である。
恩田陸さん、ペンネームは「やっぱり猫が好き」の恩田三姉妹からとったそうだ。(素敵!)このドラマのテーマ曲は矢野顕子「David」だったね。

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