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いただきますイェイ


 
少しずつ忘れていってしまっているのが惜しいのだが、
昨年末、初体験した食生活のリズムがある。
 
秋ごろから動悸が激しくなり、人生最後から2番目の恋かもと思っていたらバセドウ病だった。幸い発見が早く、基本的な治療でよくなるだろうという医師の見解で、私は仕事を減らし年末までゆっくり過ごすことにした。
この病気は代謝が上がりすぎる特徴があって、空腹を感じている余裕がないくらい常に食べていないと体調が悪くなる。お昼にカレーを食べたあと肉まんとバームクーヘンを食べ、りんごを1個と麦チョコを一袋食べて夕方ラーメンを食べに行ったりしていた。ちなみにカレーはカツカレーだ。なのにどんどん痩せていく。
常に食べていなくてはいけないのに、ごはんをつくる体力がない。なんだか強いご飯ばかり食べることになってしまうから、しばらく実家に帰ることにした。
 
私の実家にはいま母と祖母が住み、隣に家を建てて妹家族が住んでいる。母と妹はいつも「太っちゃう」「ちょっと痩せた」「でも健康診断問題なし」「(らに子)もう食べないの?かっこつけてるの?」などと言っている人たちであるが、1週間一緒に暮らしてみて分かった。彼女たちには「食事を抜く」という文化がない。成人に1日3食は多すぎるとか、たまには内臓を休ませデトックスとか、たぶん考えない。朝起きたらまず聞かれるのが食べるパンの枚数だった。朝ごはんを食べ、10時におやつを食べ(菓子パン的な。私会社にいたらこれ1食にカウント)お昼を食べ、15時には隣の家から妹がカステラといかみりんを、めいが焼き海苔を持ってやってきて母が棚から出してくるねりきりやポッキーなどのお菓子を広げ食べまくり話しまくる。お茶も紅茶もコーヒーもがぶがぶ減っていく。焼き海苔は1日8枚まで食べていいらしい。夕ご飯には必ずどこかで揚げ物がこんにちは。食後はすぐに甘いものを入れると太らないと嘘をつかれながらデザートをコンビニに買いにいく。病気になったことでシフトした私の食リズムに合わせてくれているのかと思いかけてしまった。いつも食べてるの、マジで。
 
食べ過ぎの是非はともかく、気がついたことがある。私はそれまで、朝、青汁とヨーグルトを食べて瞑想をしていた。それがいいと思い込んでいたが、いつも体が寒かった。それなのにたまに実家の冷蔵庫を見て「お母さんマーガリン食べない方がいいよ」などと言っていた。朝、母と一緒に起きて家中の窓をあけ、マーガリンをがりがり塗ったトーストと、卵とブロッコリーとハムとスープを食べた日は体があたたかくて機嫌がよくて、目がよくなったような感じがした。やっとわかった。私の方がズレている。
 
「あんたは頭でっかちなのよ」と母には10代の頃からよく言われていたが、たくさん食べてしゃべってを1日のなかで複数回繰り返す女たちのパワーを垣間見た。妹は、満杯の一斗缶を片手にひとつずつ持って庭の外にいる誰かになにかをしゃべりながら歩いていた。祖母の在宅介護中の母はトイレの後始末をして「すごいうんちが出てすっきりよ!たくさん食べるから元気元気〜」とにこにこ私に話しかけながらリビングを横切っていった。ほんとうにしょうもないが本当のことだから書くが私はそのときカレーを食べていた。カツカレーではない。
 
症状が落ち着き、食欲がもとに戻った私が気がついたのは、食べることへのネガティブな気持ち(みたいなものがあったのもびっくり)が消えていたことだった。甘いものを食べるとき「しんどい思いしたんだから食べるべきなの」みたいな思いがセットになっていた。実家の女たちは違う。「ごはんのあとは甘いものイェイ」「ごはんまでまだちょっと時間あるから甘いものイェイ」「新しい商品がでたからイェイ」だ。健康なら、それでいいのだ。
 
 
ご心配いただいたみなさま、優しい言葉をかけてくれたみなさま、
クレンズしてくれたばななさん(涙)ありがとうございました。
どうやってお返ししていけば良いのやら、感謝でいっぱいです。
 

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