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京都ライター塾9期/第1回受講レポ

暮らしや料理など、好きなジャンルで記事を書いてみたい。ライターとして活躍したい。ゆくゆくは自分の署名記事で、憧れのウェブサイトに連載を持ちたい。

受講開始前の私は漠然とそんな風に妄想してはいたものの、ライターという仕事に対するイメージは実のところ、とても曖昧だった。

どうやって仕事を見つければいいのか、クライアントとつながり、仕事をしていくまでの流れはどうなっているのか。一口にライターといっても、どんな仕事があるのか。

いやそれ以前に、そもそも突出した強みもない自分のような人間でも書ける記事があるのだろうか。

2023年7月8日からスタートした京都ライター塾は、そんな初心者以前の人にも分かりやすく、ゼロからライターデビューするために必要なことがわかる講座だ。

講師は歴17年の現役エッセイスト・ライターである江角悠子さん。

第一回目の講座では、ライターという働き方や業界について基礎から知ることができる。また、自己分析のワークや、書きたいけれど書けない人が最初の一歩を踏み出すためのヒントなど、盛りだくさんな内容だ。

▼江角さんが主宰する「京都くらしの編集室」のブログはこちら。


ライターの働き方はさまざま

ライターというと、フリーランスとして自由な反面、自宅やカフェでひとり孤独に黙々と記事を書いているイメージがないだろうか。たしかにそれもひとつのライターの在り方なのは間違いない。

けれども、実際には契約や雇用形態にも色々な種類がある。例えば、今回講座内で紹介された働き方のひとつにインハウスエディターがある。ひらたく言えば、フリーランスではなく会社員として自社のWebサイトや制作物の記事を執筆するライターだ。

あるいは、フリーランスであっても企業と年契約を結んで取引先に常駐するようなケースもある。これを聞くだけでも、ライターの働き方についてのイメージが少し変わるのではないだろうか。

急成長を遂げたメディアの成功事例として有名な某・暮らし系のWebサイトも、実は社内の編集チームと社外のライターが書いた記事、両方が掲載されているそうだ。

実際の固有名詞は一応オフレコだが、講座内では現役ライターだからこそ知る様々な事例を豊富に紹介してもらうことができる。

気になるライターのお金事情

フリーランスにとって、お金の話は避けて通れない。講座内では媒体ごとの特性や相場、過去に江角さんが手掛けた仕事の単価など、他では聞けないお金の話も赤裸々に公開。

この仕事にこの金額!? 1記事でそんなにもらえるの?なーんて、みんなでワイワイしながら業界情報のいわば裏話についても聞いていく。

受講生から江角さんに対しても「報酬が良いけど苦手な仕事と、やりたいけれど報酬は良くない仕事があったらどうしますか」などと突っ込んだ質問も飛び出した。

それだけでなく、支払いのタイミングや価格交渉、交通費の話など、ライターとして生き抜くために必要なポイントもきちんと抑えてくれるのが有り難い。

また、案件獲得から支払いまでどんな流れで仕事が進むのかも教えてもらい、自分が実際に働く姿を想像しながら聞くことができた。

仕事とは切っても切れないリアルなお金の話を聞けるのも、現役ライター主宰の講座ならではだと感じた。

好きは最強。ライターの活躍ジャンル

ライターの執筆ジャンルと言うと、何をイメージするだろうか。私の場合、受講前は料理や暮らしなどざっくりとしたジャンルは思い浮かぶものの、それ以上のことはよくわからないでいた。

ところが、講座内で紹介される事例には想像以上にニッチなものもあり、非常に驚いてしまった。

例えば、あんこライター。例えば、パンダライター。ほとんどの人は、おそらくこれだけ聞いても意味がわからないと思う。

そんなピンポイントな専門ジャンルで、食べていけるだけの仕事があるのか。そもそもジャンルが狭すぎて書くことがなくなってしまわないか。疑問に思う人も多いはずだ。

しかし、これらはいずれも実在する江角さんの友人の事例だという。

あんこライターの方を例に上げると、そのご友人は月に一回あんこを炊くほどのあんこ好き。

京都在住であんこの美味しい和菓子店についても詳しく、聞けばすぐさま良い店をリストアップしてくれるそう。

もちろん取材に行く時も、あんこについて深く知っているからこそできる質問があり、その差は専門外のライターと比べると歴然だ。

そういう人だからこそ、あんこについての特集企画があれば彼女の名前が浮かぶクライアントも多いのだとか。

好きだから自然とそのジャンルに詳しくなり、評判が高じて仕事も集まる。結果、さらに道を極めていくという好循環。

そんな世界があるのかと驚くような事例とともに、ライターという仕事の多彩さや可能性も同時に教えてもらったような感覚だ。

自分が思う以上に世の中は広く、ユニークな仕事や働き方をしている人達がいる。そして、そういう仕事をゲットする上でも"好きは最強"なのだ。

自分に合ったジャンルや働き方を決める

ここまで紹介してきたように、ライターの働き方も執筆ジャンルも、知識のない人の多くが想像するよりずっと多岐にわたる。

だからこそ、自分に合ったスタイルを見つけないと迷子になってしまう恐れがある。今でこそプロフェッショナルとして押しも押されもせぬキャリアを築いている江角さんも、最初の数年は迷子状態に陥って苦労したという。

そこで大切なのは、自分についてよく知ることだ。この講座全体を通しての大きなテーマは「ライターとして幸せになる」こと。

単にライターデビューを目指すわけではなく、書くことを仕事にして、なおかつ幸せという状態を実現するためにも、自分と向き合うことは必要不可欠。

講座内では、その手立てとして自己分析の課題とペアワークが用意されている。

自己分析の課題とペアワーク

第1回目ではまず、「時間もお金も能力もあるとすればやりたいこと」を30個書き出していく。

私も楽しい気持ちで着手したのだが、途中から徐々にペースダウンしてしまい、時間内に30個全てを埋めることが出来なかった。普段いかに自分の正直な夢や願望にフタをして生きているのか、ということなのだろう。小さく纏まっていないでもっと遠慮なくいこうぜ、自分。

また、ペアワークでは2人1組になって、幼少期からこれまでの人生で夢中になったことについて互いに質問しあっていく。

私と組んでくれた方とは2人共通でお菓子作りというキーワードが浮かんできたのだが、どんなところに楽しさを感じていたのかには大きな違いがあるとわかった。

私自身はキッチリ計量して丁寧に一つひとつの作業を行い、お菓子そのものの美味しさやクオリティを追求することに喜びを感じていた。

一方でお相手の方は大量のお菓子を作ってクラスメイト全員に配ること、みんなに対して平等であることに達成感を感じていたのだという。

このエピソードひとつとってもお互いの個性がわかり、興味深く面白かった。健全な他者との比較は、自分を知るうえで大きなヒントになるのだと実感することができた。

書けない理由と乗り越え方

講座では毎回、受けた講義の内容をレポートにしてWebにUPする課題が出る。

受講生の中には書くことそのものや、書いたものを誰かに読んでもらうことにあまり経験のない人もいる。

初めのうちは誰でも多かれ少なかれ、「書けない」気持ちと向き合うことになる。講座の最後には、そんな戸惑いを乗り越えられるよう江角さんがいくつかの話をしてくれた。

中でも印象的だったのは、「イヤだと感じて良い」という話。

たとえば、職場や学校でその場にいない人を「良い人なんだけどねぇー...」とワンクッションおいてから話題に挙げることはないだろうか。

私たちは子どもの頃から、人の悪口を言ってはいけない、みんな仲良くしましょうと教えられて育つ。

だからこそ誰かを嫌うことそれ自体にさえ、どこか罪悪感がつきまとう。あまつさえ他人の欠点をストレートにあげつらい批判するなんて、多くの人には強い抵抗感があるはずだ。

そんな背景もあり、何かネガティブなことを言いたくなってしまった時、枕詞としての「良い人なんだけど」が便利なアイテムとして重宝される。

正直なところ、私にも心当たりがある話だ。

だけど、江角さんによれば、ホントに言いたいのはそこじゃない。枕詞の後ろに来る言葉こそ、嘘偽りのない自分の気持ちだという。言われてみればその通りだ。

また、「ちゃんと理由を言いなさい。」というのも、子どもが怒られる時に言われがちな言葉ではないかと思う。

そうは言っても、モヤモヤした感覚を上手く言葉に出来ないこともある。わかりやすく言語化できなかったとしても、「なんかイヤ」と感じた最初の気持ちは大切にしていいと教えてもらった。

私自身の話をすると、社会人になってからは特に、合理的であるべき、職場で感情を出すなんて未熟だ、などの思いをことに強めてきたように思う。

だからこそ、たとえ整理できていなかったり、うまく説明できなかったりしても、自分の感覚や感情を尊重していいという話に小さくホッと救われたような気持ちになった。

ネガティブなことを盛大にぶちまけた文章をWebの往来に置いておくかはさておき、自分の感じ方に良い悪いも正解もなく、時には人と違っていてもいい。

そう思えるだけでも、抑圧が緩んで書いてみたいことがひょっこり顔をのぞかせるかもしれない。

自分に向き合うこと、そうして湧き出た正直な気持ちや感覚を文章表現に昇華すること。一朝一夕にできることではないが、そのトレーニングを積んでいく今後が楽しみになる第1回目の講座だった。

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