小規模事業者持続化補助金の不採択理由を考えてみる
まえがき
本年度も様々な補助金が行われていますが、なかでも賑わいをみせているのが「事業再構築補助金」ですね。
事業者さんのコロナを契機とした新事業への進出や会社再編などを後押しする経産省の事業です。
そんな中、既存事業で大掛かりなリスクを背負えなくても、販促活動や様々な工夫を行って事業の継続・発展を行いたい小規模事業者さんもいます。
中にはフリーランスの方や個人事業主でも逆にこのご時世を契機に挑戦を考えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
小規模事業者の地道な販路拡大・開拓を支援する事業「小規模事業者持続化補助金」が今年も実施されております。
現在、一般型で第6回の締め切り受付中(10/1まで)、以降8回まで行われる予定です。
また、特別枠として「低感染リスク型ビジネス枠」も実施されており、こちらは現在、第4回が11/10締め切りで受付中です。
それぞれの詳細については、下記をご覧ください。
一般型
低感染リスク型ビジネス枠
全体的な採択率(2021年)
採択率は40~50%程度です。補助金の平均採択率よりはやや高いです。
昨年、一昨年の一時は90%が採択された事があったので、「通りやすい補助金」として知られていましたが、今年についてはそうでもないですね。
通常通りの補助金採択率となっています。
個別の採択率を見てみます。
■ 低感染リスク型ビジネス枠
今年行われた特別枠ですが、2回採択発表が行われています。(執筆時点9/21)ここまでの採択率の平均はだいたい49%程度と半数が採択となっていますね。
■ 一般型
昨年の1回、2回はコロナ特別型や事業再開枠があったりと多少別と考えて、大体50%程度で推移していますね。
半分が不採択となる補助金
というわけで、他の補助金に比べて多少通りやすいとはいえ、やはり普通に考えたらなかなか難易度の高めの申請ですね。
採択になりやすい。というか、今回の本題ですが、不採択となってしまうような申請についてしっかりと考えて行ければ、逆に採択に近づくのではないかなと思います。
小規模事業者持続化補助金の不採択となってしまう理由
様々な理由があると思いますが、いくつかあげてみようと思います。
1,決まった様式に書かれていない。書類の提出不備がある
2,小規模事業者持続化補助金の目的に沿った事業ではない
3,補助事業経費のほとんどが「汎用性」の高い物品購入に充てられている
4,申請者の姿が見えてこない
5,わかりにくい効果目標を掲げて、わかりにくい表現で記載されている。
諸説あると思いますが、ワタクシが考える不採択理由は上記が多いというように感じます。
それではそれぞれのお話をしてみようと思います。
決まった様式に書かれていない。書類の提出不備がある。
例えば、事業所が「商工会」の管轄地域であるにも関わらず、様式を「商工会議所」のホームページよりダウンロードしてしまい、違った様式に記載、提出してしまう。(こういったミスは様式4を管轄の商工会・商工会議所で発行する際にチェックするはずですが、まれに見逃してしまう場合もあります)
書類の提出不備ですが、防ぐ方法としては申請前に確実に管轄の商工会・商工会議所に確認してゆく事です。
オンライン申請でも、郵送申請でも一度、書類チェックを第三者にお願いしたほうが確実ですね。
審査もされずに不採択は悲しいですので。
小規模事業者持続化補助金の目的に沿った事業ではない
さて、小規模事業者持続化補助金の「目的」とは一体何でしょうか。というお話です。
このお話は結構重要で、その後の理由にも深く関わってくるお話です。
まずは、公募要領の最初、「重要事項」から抜粋します。
小規模事業者自らが自社の経営を見つめ直し、経営計画を作成した上で行う販路開拓の取組を支援するもの
わかりやすく言うと、自社(自分)の良いところや課題を見つけて、新しい計画を作って販促してゆく取組をしてくださいね。ということです。
で、「目的」に合わない事業とは何か。
これは、ひとつづつお話しますと
「自社の経営を見つめなおしていない」
これは、既存の取組の広報だけを行ったり、自社の汎用的な紹介ホームページを作ったり、特に何か課題や強みを活かしているとは言えない事業です。
つまり、まずは現状の課題を洗い出すとともに、しっかり「売り」となる強みを探ってそこを販促してゆく取組である必要があります。
「経営計画を作成していない」
これは、補助金のいわゆる「申請書」というものが、「お金をください」というものではなく、「経営計画」を書面にして審査してもらうものという事です。
申請書が終始、「補助金があればこれが出来ます」とかそういった趣旨になっていると、「補助金ありき」の文字通りの「申請書」になってしまうので、目的と違います。
小規模事業者持続化補助金の申請書は「経営理念」や「事業の概要」を書く欄がきっちりと用意されています。
こうしたことも真剣に考えているかが審査のポイントです。
「販路開拓の取組ではない」
既存顧客の満足度のみを上げる取組。あるいは、「本事業の完了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれる事業活動」でない場合は、補助対象外となります。
どういうことかというと、つまり
・良いものでも売れる見込みがない(時代が追い付いていない)
・市場ニーズがまったく考慮されていない
・顧客を増やす取組ではない
こうした事業は「目的」とは違う。なんかズレているような取組です。
目的は第一に考えなくてはなりません。
また、単純に生産性向上を図り、業務効率の改善などで生産のボトルネックを解消してゆくような取り組みは「ものづくり補助金」でカバーする物でもあるので、そうした棲み分けも考えてゆく必要があります。
補助事業経費のほとんどが「汎用性」の高い物品購入に充てられている
補助金の経費は、その補助事業でのみ使う物品やシステム等を導入するために充てる必要があります。
つまり、その物品が普段の業務に使うようなものは対象外です。
たとえば、パソコンやヘッドセット、カメラ、プリンター、特に事業を計画していない自社のホームページ、自社のロゴ入りのみの試供品、既存商品のサンプル。などです。
これが計画の本旨になってしまっている場合、そもそもその事業が新たな販路開拓の目的ともいえない事業になっているはずなので、不採択になってしまいがちです。
一部であれば、計画は採択で該当部分のみ対象外として通知される可能性はありますが、根幹部分がこういった経費であると不採択です。
この辺は公募要領に詳しく書いてあるので、「知らなかった」では通用しません。
申請者の姿が見えてこない
これが最近、とても増えているように思います。
例えばどういうことかというと、事業者さんにウェブ制作やECサイト制作会社さんから営業を受けたとします。
「今なら補助金申請で実質1/3の費用でECサイトが作れますよ」といった形です。
「補助金の申請書はうちで書きますから」とか言って契約を結んでしまう場合です。
こういったケースでありがちなのは、それが本当にその事業者さんの課題にマッチしているかどうか疑わしい経営計画書になっている事です。
事業者さんによって、課題はマチマチです。
コロナで売り上げが落ちたからECサイトをはじめたい。という思いはありにしろ、その抱える強みや課題はその事業者さんによって、それぞれです。
結果、夫婦二人でやっている小さな商店に無理やり高額なECサイトを導入し、運用体制も効果も不明瞭。これまでの強み・・例えば地域の人からとても愛されている、地元密着の店舗さんという活かすべき特徴をまったく活かさない、ただそのECのシステムが立派という事だけを謳った経営計画書が出来上がってしまいます。
公募要領の重要事項にもこう書かれています。
外部のアドバイスを受けること自体は問題ありませんが、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合、本補助金の趣旨に添わない提案と捉えられ、評価に関わらず採択の対象とならないことがあります
目的の経営を見つめなおしていない。そう捉えられますし、何しろ思いが伝わることはないでしょう。
それから、ウェブ系でもう一つ注意したいのは、経費に「SEO対策」など入っているところです。
「SEO対策」は明確に公募要領で経費対象外とされています。
なぜか。
SEO対策は効果が不明です。検索エンジンの最適化。つまり順位を上げるという事ですが、このメカニズムは公表しているところは少ないはずです。
少なくともGoogleは公表していないはずです。
たとえば、サイトにキーワードを埋め込む。なんていう作業は今日び、どこの事業者もやっています。何なら素人でもできる人もいます。
そんなブログサイトもあります。
それを経費として盛り込んで経費を水増ししているようなものは、問題があります。
ちょっと話がそれましたが、お気を付けください。
わかりにくい効果目標を掲げて、わかりにくい表現で記載されている。
上記の「申請者の姿が見えてこない」と密接した話ですが、審査に出すのは「経営計画書」ですから、効果は明確に、わかりやすいものであるはずです。
それはすなわち「数字」です。
たとえば、ECサイト事業を行う時に、目標とすべき明確な数字は「売上高」です。もちろん、効果が即効性があるかはわからないので、「アクセス数」や「PV数」なども一つでしょう。
そのサイトを宣伝するための広告の効果もそれで表せると思います。
しかしながら、目標を数字ではなく「ユーザビリティの向上」というなんともわかりにくい効果目標を、「ユーザビリティ」というなんとも言えない表現で書く人もいます。
ユーザービリティの向上は確かに重要だと思います。
顧客がECサイトで購入する際に単純で使いやすく、比較的読み込みが早いサイトの方が良いでしょう。
だったらそう書くべきで、、たとえば
他社比較でA社のサイトは画像を全て読み込むまでに1分かかるが、このサイトでは30秒で読み込めるとか。
購入ボタンを従来の物より大きくするとか
ユーザー属性に応じたサイトデザインを施し、ストレスなく、サイト滞在時間を〇秒以上にする。とか
細かく書くべきであるのに、全てを総称して「ユーザビリティの向上」とふわっとさせてはいけません。
ユーザビリティとは具体的にこの作ろうとしているサイトでは何を言うのか。
向上とは、具体的にどれだけ他社に比べて良いのか。
それを明確に書きましょう。
果たしてそれを顧客が望んでいるのか。そういった裏付けの資料があれば、(アンケートなど)計画に厚みが出ます。
結局、どういった計画なら採択に近づくのか
自社が主体的に動く、強みを活かした販促活動である計画であることです。
特徴や、体制をきちんと把握し、実現可能な計画を立て、それが現実に見込める計画であることです。
ECサイト作ったからと言って、しっかり運営できる体制であることが必要ですし、その商品が売れるのか。また売れる層にしっかりアプローチできるのか。
そういったことを記載してゆきます。
物品ありきではなく、計画ありき
結論ですが、サイトを作る営業を受けたから補助金を申請する。という事ではなく、こうした計画があるから、サイトを作ろう。
こうしたことが大事だったりします。
とはいえ、現実問題としてサイト構築が前提で事業を計画・この小規模事業者持続化補助金の申請を行うこともあると思います。
そんな時は、ちゃんと自社、自分の会社や事業の現状を把握して、現実的な構成と目標にして、考えてゆく事が重要です。
小規模事業者持続化補助金の申請に関して、当事務所もサポートを行っております。
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