【事業継続力強化計画】感染症や災害に備える事業計画づくり【申請書の書き方】
きたごう行政書士事務所です!
毎年のように豪雨での各地での災害や、昨年から新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業者にとって自然災害に対する備えを考えてゆかなければなりません。
今回は、中小企業向けの経産省の税制優遇措置・金融支援措置である「事業継続力強化計画」の申請書の書き方についてお話いたします。
事業継続力強化計画とは何?というお話はコチラをご覧ください。
YouTubeでもお話しております。
https://www.youtube.com/watch?v=WZuRErkU0hM&t=3s
申請書、様式のダウンロード
概要をご理解いただいたら、中小企業庁のページより申請書様式、チェックリストおよび手引きをダウンロードしてください。
様式はこまめに更新されますので、最新のものを使うようにしてください。
今回は、事業者単体で申請する場合の書き方を解説します。
まずは、申請書、様式第28と書かれている方から記載してゆきます。
申請書は様式28と(別紙)で構成されています。
様式28
昨年までは押印が必要でしたが、現在の様式では押印は必要ありません。
注意点ですが、認定を受けるべき担当官庁が異なります。
上記のように、静岡県は「関東経済産業局長」が申請先になります。
あて先は手引きのP12に記載がありますので、そちらをご参照ください。
別紙 【1,名称等 2,事業継続力強化の目標】
さて、この別紙からが計画書となります。
書き方のポイントおよび、事業継続力強化計画策定のポイントを踏まえて書いてゆきます。
最初に名称および、資本金などの額、従業員数、業種、法人番号、設立年月日を記載します。
事業所の名称はカタカナでルビを振ります。
ワードでのルビの振り方ですが、ワードでのホームから選択します。
業種ですが、日本標準産業分類の中分類から選択します。総務省のページから自社の業種を選んで記載しましょう。
そして次は目標を立てます。4つの項目ごとに記載します。
【自社の事業活動の概要】
ここでのポイントは「自社の事業活動」と、「災害が起きたらどのような影響が地域や顧客に生じるか」を書く必要があります。
当社の記載例です。
【事業継続力強化に取り組む目的】
目的は、防災・減災対策を行い、どのようになりたいか、3~4つの目的を示してゆくのがよいでしょう。
記載例
目的は事業者様々です。上記の弊所の目的は、ある程度汎用性を持たせておりますが、より目的を絞っても良いかもしれません。
【事業活動に影響を与える自然災害等の想定】
ここでは、自然災害等、何が起こりうるかを想定します。
ただし、ただの予想ではだめで、策定の手引きに載っているとおり、地域のハザードマップや、その他の情報を基に、具体的に想定します。
記載例<自然災害のみ>
静岡県駿東郡小山町は、富士山の麓という事もあり、富士山の噴火に備えたハザードマップが公開されています。
また、土砂災害などのハザードマップもあり、随時更新されています。
こうした情報を見て、判断し、土砂災害は危険性が低く、富士山の噴火では壊滅的な被害が予測されるであろうと想定しました。
続いて、我が国での常に悩みというか、地震大国と言われる列島ですので、地震被害について、調べてみることにします。
ここでは、J-SHIS地図というサイトを利用します。
画像が小さくて申し訳ございませんが、まず色見からして赤紫で危険そうです。当事務所の存する住所をクリックすると、経過30年。今後30年で大地震が起こり得る確立予測が表示されます。
その部分だけを拡大してみますと、今後30年で震度6強以上となる確率が22.2%、震度6弱56.8%、震度5強以上が86.6%、震度5弱以上は98.8%と、かなり高い確率で大地震に見舞われる可能性があります。
そこでこの情報を基に、地震の被害を想定しておく必要があります。
記載例<感染症拡大も想定する場合>
このご時世、感染症拡大に対するリスクは常に想定しておく必要があり、敢えて入れない場合以外は、この感染症に対するリスクも想定したほうが良いでしょう。
この場合、土地柄や、これまでの新型コロナウイルス感染症の感染者数、また緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域になったかどうかを記載すると良いでしょう。
【自然災害等の発生が事業活動に与える影響】
事業活動に与える影響とは実際に先ほど想定した自然災害が起こった際にどういった影響が生じるかを具体的に記載します。
ざっくり書くわけではなく、(人員に関する影響)、(建物・設備に関する影響)、(資金繰りに関する影響)(情報に関する影響)そして、(その他の影響)に分けて記載します。
最初に先ほど想定した災害のうち注意すべき災害と、その概要について書いた後、具体的にヒト・モノ・カネ・情報・その他を記載します。
<記載例:人員>
富士山の噴火による被害は壊滅的とか上記のような記載例は特に書かなくても良いですが、一応想定はしているということです。
ヒト。つまり人員についての影響に関して、リスクを想定します。
地震だった場合、営業時間中は怪我や帰宅困難、停電等による不便などが想定されます。営業時間外は翌日はもちろん、しばらく参集不可能になる可能性もあり、それで事業が止まってしまう可能性があるという事を記載します。
水害・土砂崩れなど自然災害や感染症のケースでも同様に、実際今、こういった自然災害が発生したらどうなるか。また、今後増員した時にどうなるか。こういったことを想定して書いてゆくのが良いでしょう。
<記載例:建物・設備に関する影響>
上記のようにひとまとめにするのも良いですが、地震と感染症の影響を分けて影響を想定したほうが良いこともあります。
あと、単純に読みやすいので、ここからはそういった書き方の記載例をご紹介です。
地震など、自然災害は建物や設備に直接ダメージを与えるものなので、想定を具体的にしておく必要があります。
ポイントとしては
・ 事業所の築年数
・ 耐震基準(旧耐震基準と新耐震基)
・ 消防法の改正前後の建物基準と、火災のリスク
・ インフラについて
・ 道路状況について
を記載してゆくと良いでしょう。
旧耐震基準とは1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準を言います。築40年以上の建物は注意が必要です。
インフラについて、復旧の見込みなどは所在地の自治体のハザードマップなどに書いてあることがあります。
感染症については、直接建物や設備にダメージを与えるものではありませんが、この場合、感染症対策の設備の状況を想定します。
・ マスクや消毒液が品薄になる
・ 飛沫感染防止のパーテーションの有無など
こちらは、この後、現在の取組でも書くことがあるので、誰かが感染した時や緊急事態宣言が出た時にこうしたことが起こり得るなと、ここ2年間ぐらいで実際に起こった出来事を書いておくと良いと思います。
<記載例: 資金繰りに関する影響>
「カネ」に関する事ですが、こちらも自然災害・感染症ともにじわじわとやってくる不安ですので、しっかり想定しておくことが重要です。
当事務所の場合、資金調達に関する想定は自然災害も感染症も同じですが、たとえば有価証券の保管や在庫が自社倉庫にある場合は設備の想定を踏まえて資金繰りの影響を考えておくと良いでしょう。
想定しておくべきことは、自然災害または感染症発生→営業が休止または停止→売り上げがない→資金のひっ迫
という最悪の流れを想定しておきます。
もちろん、すでに対策をしている場合は、そんな中でも起こり得る影響を想定しておきます。
<記載例: 情報に関する影響>
昨今、情報管理の大切さが課題です。
デジタルでの管理でも、紙ベースなどでのアナログな管理でも顧客情報や営業秘密などなくしてしまったらその後いろいろとヤバイな。と思う情報があるかと思います。
当事務所の記載例では自然災害のみを想定しております。
営業の秘密を例えば代表一人の頭の中という怖い状況もあるかとも思いますので、そうした場合は代表が感染症に罹患した時の想定もしておくと良いです。
<記載例: その他の影響>
現状の状況と、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」以外でなんとも該当していない条項を記載します。
・ 行政機関がストップし、必要な手続きが遅くなる
・ 遠方の顧客との連絡が取れなくなった
などです。
【3 事業継続力強化の内容】
(1)自然災害等が発生した場合における対応手順
自社に発生する災害や影響を想定したところで、ここからは計画の本旨となる、「実際に起こった時の対応」を記載します。
まずは初動対応についてです。
1,人命の安全確保
まず最優先すべきは、従業員の命を守る事です。また来訪中の顧客などの避難誘導も想定するべきです。
まずは避難ですが、いざという時に慌てないように、避難経路の設置や避難場所の確認をしておく。手順を確認しておくことです。
安否確認も、営業中の発災、営業時間外や深夜早朝の発災も想定し、災害伝言ダイヤルの活用やLINEなどの活用を想定しておくと良いでしょう。
2, 避難時の緊急時体制の構築
発災直後から遅くとも1週間以内には対策本部などの体制を構築しておくと良いです。
ポイントとしては代表を中心とした体制を構築する事です。
こうしたタイミングですが、地震発災直後でも影響が懸念される震度(6弱以上など)の際や、自然災害の場合は気象庁または自治体の警戒発表、感染症の場合で、緊急事態宣言発令やまん延防止等重点措置の対象地域に指定されたときなど具体的に想定しておくと良いでしょう。
3,被害状況の把握 被害情報の共有
まずは被害を自社で把握後、誰と共有するかを決めておきます。
Twitterなどで「被害なう」ではあんまり意味もないので、共有する相手は、
・ 資金調達先の金融機関
・ 取引先
・ 親会社
・ 支援機関である商工会・商工会議所など
・ 顧問先士業
・ 自治体の災害対策本部などの当局
・(感染症の場合)保健所
こうした具体的に対策を講じれる相手との連携を取ることを決めておくと良いです。
4,その他の取組
無い場合は「なし」でも良いですが、特殊な事業所の場合、たとえば廃棄物処理業で、すぐに対応が求められる場合、スクランブルでの出勤体制や、医療機関などとの連携を取ることが必要とされる業種の場合、緊急受け入れ態勢の構築などを記載すると良いです。
(2)事業継続力強化に資する対策及び取組
初動対応ももちろんですが、そもそもしっかりと対応できるための対策を取っておく必要があり、その事を決めてゆきます。
ここでのポイントは、「現在、何を取り組んでいるか」と「今後、どうしてゆくか」の両面を書いてゆきます。
A 自然災害等が発生した場合における人員体制の整備
現在の取組は、たとえば工場などで既に安全管理者などがいる場合など、すでに災害対策の取組をしている場合に記載します。
今後の計画としては、たとえば役職の設置や、感染症で経験のある人がこれなくなった場合、事業が進まないといけないので、マニュアル化や教育体制を取り、「もしも」に備えてゆく事を記載します。
B 事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入
これに関しては先に解説しておきますと、「発電機の購入」「飲料水の確保のための設備」「防水加工」「耐震性を高める改修」など建物や設備に関する導入計画を記載します。
記載例が零細行政書士事務所でのことなのであまり充てになりませんが、ご参考までに置いておきます。
情報がうりの当事務所ですので、データの管理としての設備投資は必須です。端末保存データをクラウドサービスに格納や、念のため紙での管理、高所に重いものを置かない、排水溝の清掃。という小規模事業者にも小規模事業者成りの書き方があります。
感染症対策の場合、現在、マスクの常備などをしているが、今後は来客用のアクリルパーテーションを導入する。などです。
また、こちら税制優遇を受けたい設備があるときは詳細を記載してください。発電機のメーカー、導入時期などできるだけ細かく書いたほうが良いでしょう。
C 事業活動を継続するための資金の調達手段の確保
この制度ですが、金融支援も受けられます。信用保証枠の追加がありますが、その制度を利用する場合、ここに記載してください。
あとは、今後の取組として、金融機関との連携や商工会・商工会議所のマル経融資を受けるためのあらかじめ連携を取っておくなどあります。
実効性を高めるためには、本計画を商工会や金融機関にも参照しておくのがオススメです。
D 事業活動を継続するための重要情報の保護
当事務所の計画の場合、A、そして主にBと重複しておりますが、情報の受ける被害リスクに対する備えは、こちらに記載します。
Bの取組と重複しない部分としては、データ管理の具体的な手法と、あとは活動記録をこまめにつけるという事です。
その他としては、会社の備品であるパソコンやUSBメモリなど情報媒体を持ち帰らない。とか、セキュリティ対策、2段階認証の導入、耐火金庫の導入などがあげられるかと思います。
(3)事業継続力強化設備等の種類
ここではBまたはDなどで導入計画を書いた設備を記載します。
税制措置を受けたい場合は必須です。
また、こちら使える設備には限りがあります。ここに記載できるのは下記の設備に該当する場合のみ記載できます。
対象になるかどうか微妙な設備に関しては、まずは自社の管轄の「経済産業局」にお問い合わせください。
<記載例>
(2)の項目とは、先ほど記載したA、B、C、Dの計画のうち、どれに該当するかという事です。
設備等の種類ですが、機械設備なら機械設備、建物付属設備ならそのように書きます。
確認項目のチェックの部分ですが、こちら建築基準法または消防法で設置が義務付けられた設備は対象外です。
その確認のためのチェックです。
火災報知機などですね。この制度は、法令順守は当然として、法令違反状態(義務付けられている設備を設置していない)を是正するための制度ではないので注意してね。ということです。
(4)事業継続力強化の実施に協力する者の名称及び住所並びにその代表者の氏名並びにその協力の内容
今回、解説しているのは単独申請のものですが、外部との協力体制を構築するのであればそれを記載します。
無理して書く必要はないですが、金融機関や支援機関など有事の際に連携をとってゆく機関があれば記載しましょう。
ここでは伏字にしていますが、代表者の氏名は忘れずに記入しましょう。
計画当時の代表者の氏名で良いです。
また、このほかにも、
・ 親会社
・ 取引先
・ 保健所
なども想定されると思います。自社の計画に沿った機関を記載しましょう。
(5)平時の推進体制の整備、訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取組
平時の取組を記載する際のポイントとしては年1で見直しを図るなどの計画の実行性を持たせることです。
実際、気象条件や感染症など刻一刻と状況は変化するため、こうした記述は必須となります。
【4 実施時期】
実施時期は最長3年です。
【5 事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法】
金額の欄ですが、損害保険に加入などの場合は実際の保険金額ではなく、復旧に必要な金額を記載します。
【6 その他】
(1)関係法令の遵守
ここへのチェックは必須です。一見関係のないような「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」「下請代金支払遅延等防止法」「下請中小企業振興法」などが挙げられていますが、要するに国の制度の認定を受ける事業者が、経産省関連の法律に違反してはいけませんよ。
という意味です。
(2)その他事業継続力強化に資する取組
以下は取得していればチェックを入れます。
・ レジリエンス認証制度に基づく認証
こちらですが、よりBCP(事業継続計画)に近い認証制度となっております。
・ ISO 22301認証
こちらも関連認証となります。
・ 中小企業BCP策定運用指針に基づいたBCPを策定
既にBCPを策定している場合はこちらにチェックを入れます。
こちらは上記の中小企業BCP策定運用指針に基づいたものであることであるかどうかです。
以上で、別紙の入力は終わりです。
結構、簡単であるかと思います。
結局のところ、いかに災害リスクを明確化し、初動体制、減災・防災対策を行い、平時からやっていくかを策定するものです。
いわゆるBCPよりも数段簡略化されており、なかなか日々の業務に追われてBCPを策定する時間が取れない。という事業者さんにお勧めの制度です。
申請は、管轄の経済産業局へ
こちら申請の方法ですが、2種類あります。
1,オンライン申請
オンライン申請の場合、GビズIDの取得が必要となります。
2,郵送申請
郵送の場合は、管轄の経済産業局へ、
・ 申請書(様式28)
・ 別紙
・ チェックリスト
・ 返信用封筒(A4サイズが折らずに入る封筒)
・ 既に策定しているBCPの計画があればその書面
を、レターパックなどで郵送します。
管轄産業局に関しては、以下の通りです。
申請に関する代理に関して
こちら計画の策定などお困りのことは支援機関、またはきたごう行政書士事務所までお問い合わせください。
申請に関する代理に関して、行政書士の代理提出が可能です。
お気軽にお問い合わせください。
併せて当事務所ホームページの該当記事のご紹介
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