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なぜ芸能人は自殺するのか

さいきん芸能人の自殺が多いので、専門的な話をします。

Twitterなどを見てみると、世間はあまりにも自殺を誤解していて、世の中にとって良くないから書きます。


普通の人は、誰かが自殺と聞けば「何か特定の原因があって自殺した」と思うでしょう。

これは認知バイアス(思考のショートカット)の1つで、個人的帰属といいます。

簡単に言うと

個人的帰属=人もしくはモノのせいにすること

です。

産後鬱、コロナ、人間関係、心の弱さ、遺伝子、など個人的要因で自殺したと考えがちになってしまいます。

しかし自殺は心理学ではなく社会学、つまり社会的要因や無意識の行為であり、個人的な要因ではありません。


なぜ人間は自殺をするのか?

我々は表面的な人間関係で生きています。

人間関係ではメンツ(体面)が非常に重要で、社会生活をする上で、メンツより重要なものはありません。

メンツとは我々が日常で使うメンツと同じ意味です。

社会学ではフェイスといって、メンツが失われたことをフェイスロスといいます。

凄く簡単でわかりやすい概念です、経験的に誰もが多少の心当たりがあると思います。

つまり

 ・人間はフェイスが保たれていれば生きていける

 ・フェイスロスの状態だと自殺したくなる、もしくは自殺する


人によって何を恥と感じるのか違う

私が高校生の頃、同じ中学だった他校の同級生が、喧嘩に負けて学校を退学したと噂で聞きました。

退学した人は、一般的に不良とかヤンキーとかDQNと呼ばれる人種でした。

私はこの話を聞いた時、恐ろしくなったのを覚えています。

なぜなら普通の人は喧嘩で負けても、そんなに恥の感情や居心地の悪さを感じないからです。


人前で歌を歌うのが嫌な人は、歌が下手だと思われるのが嫌なのです。

その同級生は、周りの人間に荒事が苦手、つまり喧嘩が弱いと思われるのに耐えられなかったのでしょう。

居心地があまりにも悪かったので、人間関係、学校、社会から遠ざかったわけです。


ここまで書いたことをまとめると

 1 フェイスが失われると社会生活ができなくなる

 2 人によって何を恥と感じるのか違う

ですが、この2つ以外にも要素があります。

他人にどう思われているか気にする人と、あまりに気にしない人がいますよね?

※ 大人になるにつれて気にするようになる傾向があります。

個人の性格、周りの環境、職種によって違いますが、芸能人というのは、どう考えても前者。

つまり他人からどう思われているか、気にせざる得ない仕事でしょう。


周りは全然気にしていないのに本人は気にする

芸能人は見られ方を気にすると言いましたが、程度の問題こそあれ、本人ばかり気にして周りは気にしません。

自分は周りから好かれていると思っているけれど、本当は嫌われている人は滅多にいません。

逆に周りからは好かれていないと思っていても、まあまあ好かれている場合のほうが多いのです。


先程の同級生の話でいえば、喧嘩に勝った相手は負かした相手を見ても、なんとも思わないでしょう。

次の日に会ったとしても、勝った相手は根に持つことがありません。

喧嘩で負かした相手のことを考えて憂鬱になったり、居心地が悪くなったりしません。


もう1つ例を挙げてみます。

あなた公衆の面前でウンコを漏らしたとしましょう。

おそらく死にたくなることは間違いありません。

しかし周りの人間は、ウンコを漏らさざるえなかったあなたを気の毒に感じて、むしろ親切に接するでしょう。

さらにウンコを漏らした事実に対しても、ほとんど気にしません。

これらのことは、逆の立場で考えてみれば、すぐにわかることです。


自分の惨めな姿を見られたくないから自殺をする

自殺にも種類があって、この記事では詳しく説明しませんが、個人的自殺と集団的自殺があります。

現代の日本だと個人的自殺がほとんどで、芸能人の自殺も個人的な自殺になるでしょう。


自殺者の大半は無職で、男性は有職者の11倍、女性は8倍だそうです。

他にも正規雇用より、非正規雇用のほうが自殺率が高い。

※ 新自殺論 155Pより抜粋

理由は別に、学者や専門家じゃなくてもわかるでしょう?

単純にカッコ悪いから、「非正規雇用です」 「無職です」 と声高らかに言う人は中々いません。

普通こういった格好悪いことは隠します。


自殺の理由はハッキリわからないことが多い

男性と違って女性の場合、周りに助けを求めてる行為が恥だとされません。

しかし竹内結子さんが「周りに自殺したい」ということを相談したとしても、何故自殺したいのか、その理由はハッキリとわからないです。

理由は2つあって

 1 惨めな姿を見られたくないから自殺する、なので理由を隠す

 2 何が原因でフェイスロスしているのか、自分でもわからない


1つ目は、何か知られたくない秘密があり、その秘密がバレるのが恐ろしいから死ぬのです。

人に言えるくらいの理由ならば、そもそも自殺しません。


2つ目は、心理学の用語で自己内観の錯覚といいます。

自己内観の錯覚とは、自分の内面は深く考えるだけでわかると思ってしまうことです。

自分が何が好きで何が向いているのかは、色々なことをやってみないとわかりません。

同じように、自分は何を恥だと思っていて何を隠したいのか、自分でハッキリわかる人は少ないでしょう。


終わりに

気まずさがあると、人は社会から遠ざかってしまう。

自殺した人は何らかの理由があって、現世から遠ざかった、とも表現できます。

芸能人は一般人よりもフェイスが高い位置にあるので、それだけ何かあった時に気まずさを感じやすい(フェイスロスしやすい)のでしょう。


どうして○○自殺したのか? という疑問に対する答えは

「人は気まずさを感じたから自殺をするのだけれど、何に気まずさを感じるのかは本人もわからない」

と、なるでしょうか。


フェイスの概念は人間関係の基本でもあるので、覚えておくと非常に役に立ちます。

相手のフェイスを脅かす行為を、フェイス侵害行為、英語だとFTA(face threatening acts)と言います。

次のことを心がけるのが大事。

 1 相手のフェイスを侵害しない

 2 相手に自分のフェイスを侵害させない

 3 自分で自分のフェイスを侵害しない


出来のよい人間は、われわれに快感をあたえてくれる。出来のよい人間は、 堅いだけでなく、しなやかで、いい匂いのする木で彫られている。それが目安だ。

ニーチェ. この人を見よ (光文社古典新訳文庫) (Kindle の位置No.203-206). 光文社. Kindle 版.

特になんの理由もなくフェイス侵害行為をしてくる人からは、離れたほうが良いでしょう。

確かに厳しいことを言わない人のほうが、人間出来ているような気がします。

※ この出来のよい人間とは、ニーチェ自身のことを言っている。

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