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オンラインで、何かを作った話

改めて本当にありがとうございました。公演終わったときみたいな疲れ方しました。しばらくやってなかったのでそれは余計に、なんでかわからないですけど起きたら右手がしびれてました。

Pの大石くんがこんなブログをあげてくれたので、


私は私で演出として気になったところとか、書き直したところとか、を重点的に書きます。


※今回は全部公開するよ!ということでこれを書いていますが、お客さんで裏側を知ることによって興ざめしちゃうよ!という方がいたら、ここで戻っていただくのが良いと思います!








■下準備について
今回、お察しのように稽古時間が大変に少なかったので、最初に台本と配役をお渡しして、皆さんに履歴書を作ってもらいました。これは初演のときもお願いしたのですが、今回はバッチリハマった感じあります。
幸笠県亀井郡萩島町、という細かい設定も一緒にお送りしたので、まず稽古場で最初にやる、共通のイメージを持つ、という作業を遠隔で行った感じです。その履歴は実は販売してますので、もしご興味あった方は、どうぞ御覧ください。役者さんという生き物の凄さを追体験できると思います。

■間について
ご指摘いただいたので最も耳目に入ったのは「間のコントロール」でした。
正直これは一番大変だったと思います。私が、ではなく、役者さんが、です。
私の指針としては、シビアなタイミングが要求されるところでは、「リアクションをとる端点を単語レベルまで指示し、普段の2倍位センシティブにちはやぶるしてもらう」という戦略でした。
例えば、「アイデンテティ」という単語がその次のリアクションの起点となる単語だった時、生身の演技であればテティ、くらいの最後までにこの単語をつかめてればそんなに大きく問題ないのですが、それだとこの電波ラグはどうしたって出てきます。
なので、演出の指示としては、「アイデ」まで聞いた時点で、アイデア、アイデンティティくらいまで絞って、次の「テ」ではハイ一択、ちはやぶってください(かるたをすんげえ速度でとるさま。の動詞形)とお願いしました。
で、今回ほんとうにゲネやってよかったな、って思ったのですが、ゲネが140分で、すんげえ疲れたんですよ。普通の会話のペースでやったら。なので、中身は殆ど削らずに、スピードを2倍くらいにしてもらう稽古を、本番の日の昼にやりました。105分になったので、都合35分は削れることが分かりました。そしてここで、各自の役者さんが、どの単語に反応しなくてはならないのか、を精査してもらった感じです。(シン・ゴジラを思い出してください的なお話をしました。)
間に関してはこれが一番、演劇の間に近づける事ができた理由かと思います。

あ、あと、本番中実はチャット欄、というのがzoomの機能でありまして、そこに現状のペースについての情報を常に流し続けました。気分としては、箱根駅伝のランナーの後ろから、監督がずっとなんか言ってる、あれに近いと思います。最初から機能がある事自体は気づいていたので、あんまりガチャガチャ言うのも、集中できなくなってしんどかろう、というのがあったりしたのですが、役者さんに聞いたらいや別に、みたいなリアクションで、試しに使ってみたら意外と好評で本番でも使いました。役者さんの集中を切らさずに送るタイミングを常に狙いながらだったので、2日目にはプライベート(特定の人にのみ送れる機能)を使って、「次入る時ちょっとだけペースアップしましょう」「この話題で畳み掛けましょう」みたいな指示を飛ばしてました。

■戯曲について
コロナ関連のネタをどれくらい入れるか最初迷ったのですが、結果入りました。(ある方が「嘘の境界」みたいな話をされていて、そこはマジで芯食ってる、って思いました。)
そう、萩島とトメニア、っていう大きな嘘に対して、ほかは結構リアルな中で演るのはどうなんだ、っていうところは正直あんまり考察が深められていないと思っています。
これは完全に私がスピード感の方を取った、という選択の結果です。そこの整合性をとるまででもう息切れでした。ここについてはもうちょっと考えたかった、というのもあります。

レジったところはそこそこあるんですが、物理的な接触をする想定のところ、と、ユニゾンでセリフを言うところ、をカットしました。これは両方難しかったですね。
ただ、本来向井さんは〇〇さんを最後これまで物理的に退室を阻む、っていうところがあったんですが、〇〇さんがもう少しこの場に残る必要がある、という設定にしました。

まあでも会議でこのzoom、っていう食い合わせのある意味良さが、あんまり悩まずに済んだ(済ませてしまった)一番の理由です。

■機材・回線に関する考察
私それこそ10年近く前にN○Tの営業をやっていたことがありまして、回線系についてはちょっとだけ知識があったのですが、これ配信するに良い電波、順番に

固定光回線 ≧ フルキャリア携帯電波≧固定ケーブルテレビ回線≧自宅型無線 =格安キャリア携帯電波>ポータブル無線 の順かと思います。

注)
固定光回線:NTTやauの光、nuroとか。
フルキャリア携帯電波:ドコモ、au、ソフトバンクの回線
固定ケーブル:JCOMとか
自宅型無線:コンセントに指す型の方が俄然良かったです
格安キャリア携帯電波:時間帯によってムラが半端なかったです
ポータブル無線:wimaxとか

機材に関しては、新しい、処理速度の早いmacが一番安定していたように思います。人によっては、イヤホン必須(特にラップトップの場合)でした。









そして最後に。
これは演劇なのか演劇じゃないのか的なお話が出てますよ、というのを送ってくれた人がいまして、大いに結構な話だと思ってます。演劇、を、何として捉えていたのか、っていうところが浮き彫りになる感じがしますよね。やっぱりな、っていうのが正直なところです。
先に言っておくと、私は今クリエーターとしてはちっとも第一線にいるわけではありません。マネージャー仕事のほうが多いので、ここについてはまったくもって、そうです。草野球選手みたいなもんです。ただ、そんな草野球選手のもとに、本当に見えないスジを感じて集まっていただいた役者の皆さんは、ゴリッゴリにプロフェッショナルなみなさまでした。
ここに強く書いておきたいのは、そんなスジの弱さ・見えなさにもかかわらず、この賭けにベットしてくださった皆様方がいらっしゃったこと。それは本当にすんげえ勇気がいることだったろう、と思いますし、なんとかこの事態を打破したいという、強いモチベーション無しにはなし得なかったと思っています。そして、その無謀な賭けは、草野球プレイヤーだからできたことであって、今プロフェッショナルなところでやっていらっしゃる方々が、非接触型での取り組み(オンライン、っていうと急に湧いてくる勢がいるので、非接触型、といいましょう)を試行錯誤しておられるのは、大変にリスクが高いことをやっていらっしゃると思う、ということです(評判的な意味でね)。私がもし現役で劇団を抱える人間だったら、このスピードでこの判断をし続けることは、恐らくできなかったでしょう。
そんな中で、観ていただいた方の感想、一つ一つが、私にとっては「今、ここであっていること」の証明でした。作品をどの範囲で捉えるのか、みたいな話かもしれません。この営みに何かしらの形で巻き込まれていただいた方、みなさまの存在こそが、この取り組みを演劇的ななにか、にしていただけたのだと思います。本当にありがとうございました。

だから何が言いたいかって言うとですね。
どれだけ私たちの生活が奪われようとも、演劇をやりたい、観たいと思っている心まで、このウィルスが奪うことは難しいです。もちろん一時的に倒れてしまう方もいるでしょう。それでも、きっと必ずやまた立ち上がることができると、今回のこの創作を経て信じることができました。

私は、できるだけこの状況の中で立ち上がる数々のなにかを、面白がれるようなマインドでいたいと思います。重箱の隅を豪快に突くまで観ていただいた、あなたにまで届きますように。

みなさま、今度はどこかの「劇場で」お目にかかれますと。

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