理想と現実の距離と仮面(1.5)

人々の視線が向かい、集まるところ


オーラとは、人の視線が集まるから発生するものだ、人の視線という矢印をどれだけ集められるかがオーラのあるなしだ、とお世話になっているデザイナー氏がだいぶ前に言っていた。久しぶりにその言葉を実感した。

第二部について書く前に、今回の主演のマリアセレンさんについて少し書いてみようと思う。

わたしは、まったくそのジャンルを見たことがなくても、良し悪しがわからなくても、目が離せなくなる存在をスターというのだと思っている。人には好みがあるので、目が離せなくなる対象は人それぞれだろうと思う。ただ、好き嫌いを傍においても目が離せなくなる存在はいる。

マリアセレンさんは、登場してから歌い出すまで、ずいぶん長い間、舞台上で座っていた。衣装で「ああ、この人が話の鍵を握るヒロインなんだな」ということは、すぐわかる。だからその後どう動くのかと、チラチラと目は行くものの、座っている間は進行している三者のやりとりのほうが気になっていた。

ところが、立ち上がり歌い出した第一声を聞いて、釘付けになった。「うわぁ、スターだぁ!!」と思った。
歌い出した瞬間に、矢印が一斉にマリアセレンさんに向かったのを感じた。わたしのようなまったくの初心者も含めた会場の耳目を集める。スターかくあるべし。

舞台上に立つ人を評価する基準は人それぞれで、ある人は技術の高さやユニークさを評価するだろうし、ある人は立居振る舞いを含む美しさを評価するだろう。もちろん自分の好みを優先する人もいる。わたしの場合はたぶん、視線という矢印をどれだけ集めるか、が基準なのだろうな。マリアセレンさんが登場した瞬間、そんなことを感じたのだった。

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