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北陸新幹線内被災備忘録

13:52 東京発 かがやき531号

富山駅通過後、高岡付近で乗客の携帯電話から地震のアラート音が鳴り響く。

新幹線は左右に揺れながら速度を落とし停車する。脱線しないことを心から願った。

停車後、停電し非常用電気のみがついている状態。

すぐに家族に連絡し、机の下に避難していて皆無事との報告があり安堵する。
が、電話をしている間も揺れは続いている。こんなにも長く揺れた地震は経験がない。

停車直後の外の景色


Yahooの地震速報を見ると、震源が能登半島で震度5強の地震とのこと。津波の危険もあり、警戒が出されていた。その後の報告では震度7であった。

これほど大きな地震であれば、運転再開までには長時間かかることが予想され、気長に待つしかない。

とりあえず、家族の安否確認がとれたので、火の元や水回り、電気の状況、断水の可能性もあり、浴槽内に水を張っておいてもらうなどの対応をしてくれている。当座の食料は確保されているよう。

YahooニュースやXで各地の状況を確認する。
真偽のほどは定かではないが、各地で道路がひび割れたり、火災が発生している状況や、挟まれて救助を求めるツイートが流れている。

金沢の救急病院で勤務している先輩に安否確認の連絡をする。
40分ほどで返事が来たが、DMAT活動中だとのこと。悲惨な現場での活動や、今後押し寄せてくるであろう多数の救急受診患者の対応に追われることになるのだろう。

車内の乗客は比較的落ち着いているが、皆電話で連絡をして、家族の安否確認や新幹線の状況、到着の目処が立っていないことを伝えていた。

電気が復帰してからは、長期戦に備えて手持ちのモバイルバッテリーと携帯電話の充電を開始する。連絡手段や情報収集手段の確保は大切だ。

妻は家の中の落ちたものの掃除などをやってくれている。子どもたちもとりあえず元気にしているようで何より。

日が暮れ始めると寒さがましてくる。19時現在は車内に電気は通っており暖房も付いているため問題はない。
懸念は食料と水分が全くないことだ。
出発前に、妻が作り置きしておいてあった力うどんを目一杯食べてきたので、なんとか乗り越えられそう。
水分はなくても一晩なら乗り切ることはできるだろう。

アラートが鳴り響く度に緊張感が高まる。徐々に揺れの間隔は延びているが、それでも時折大きな揺れがくる。

適宜車内アナウンスが流れる。
脱線はないことが確認されたが、線路や電気設備の点検が必要なために時間がかかること、さらに、一部の区間で徒歩での点検が必要な箇所があるため、さらに大幅に時間がかかるとのことだ。

新幹線内を巡回している車掌が、体調不良者がいないか声かけしている。

急病人発生の場合のために、何かお手伝いできることがあればと名刺を渡しておく。
こういう時こそ救急医の存在意義があるかもしれない。
この時点では急病人は発生していないとのことだが、車内待機時間が長時間になると体調不良者が出てくる可能性は高い。

19時30分のアナウンス
復旧の目処はまだたたず。3号車を子連れの家族が周囲に気兼ねする必要がないようにファミリー専用車両にしているとのこと。こういう配慮は素敵だと思う。

20時23分
軽食を乗せた車が金沢駅を出発したとのアナウンスあり。流石にお腹が空いてきた。余震も続く不安定な状況で運んできてくれる人がいることに感謝の気持ちしかない。
気長に待とう。

22時40分 
差し入れが届いた。お水とカロリーメイトを、一つずつ。お腹空いたよりも、もう眠たくなってきた。

差し入れのカロリーメイトと水


当直明けでさすがに眠い。一眠りしよう。

3時25分 運転再開のアナウンス!朝まで動かないと思っていたが、眠っている間にも整備士さんたちが休まず点検を続けてくれていたと思うと頭が上がりません。速度落として金沢駅に向かっている。

金沢駅に着いたらこの列車は休憩ホテルになると。そんな対応までしてくれるんだね。

3時45分 
休憩車両にはならないとの訂正あり。その代わり、別の車両を用意してくれるよう。金沢駅に着いたらタクシーが捕まるか、えらい長蛇の列になっているのではないか。
配車アプリで予約を検討する。今予約すると5分ほどで到着してしまうため早すぎる。
駅に着いてからの予約で間に合うか?

到着直前のアナウンスで、車掌が医療従事者や乗務員に差し入れを提供してくれた方々への感謝の意を述べていた。
一番大変だったのは乗務員のはずなのに、このような言葉を述べられるのは本当に素敵なことだと思う。

4時05分
金沢駅到着。到着するとすぐにタクシー到着まで10分になっている。この時点で手配した。
改札口は素通りできる。
後日特急券の払い戻し対応をしてくれるとのこと。
金沢駅の外には乗客を迎えにきていた車が並んでいる。

金沢駅下車ホームの様子
改札口の様子


列車停止から終始大きな混乱なく、無事に帰路につくことができた。

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