【配信映画祭2020について】僕のできることは限られているけれど
こんにちは、俳優・監督をしております。
北林佑基です。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、改めまして。
加藤綾佳監督主催の、”配信映画祭2020”に『恋愛電話』『夜が明けるまで』2作品が配信決定になりました。
そこで、ひとつお知らせしたいことがあります。
僕は、この配信映画祭での自分の作品についての利益は全額、ミニシアターの活動維持支援のために寄付します。
なぜその結論に至ったかということと、配信映画祭に参加する経緯を書いていきます。
まず、僕はコロナの影響で4つの俳優業と3つの上映が延期になりました。
毎日のように一つずつ仕事がなくなっていく。
そんな日々が続き、「コロナってやつは相当やばそうだな…」と思い始めていきました。
感染症の本などを読み、ウイルスや菌で歴史が変わってしまったり、国が滅亡したり、コロナ以外にもペストや黄熱病などのウイルスや菌で、今でも多くの方が亡くなっているということを知りました。
僕が思っていたよりも、かなりまずい状況なんだと理解しました。
そんな時、バイト先での先輩の会話でハッとさせられる事件が起こります。
会社内のエレベーターでの出来事でした。
先輩「コロナで俳優業は大丈夫なの?」
僕「決まっていた仕事は全部延期になりましたね…」
先輩「そっか…。アーティストの方々は、今苦しいだろうね…。でも、仕方ないよね。なくても…どうにかなるもんね」
僕「…」
僕は、芸術や表現は衣食住と同じくらいに必要なものだと思っています。
岡本太郎さんは、芸術・政治・経済の三権分立を唱えていました。
僕はまだ、芸術というものの全貌を知らない未熟者ですが、芸術には、表現には、映画には、非常に大きな力を持っていると信じています。
だから、「芸術はなくてはならないもの!生きていく上で不可欠なものです!」
…と頭ではわかっていたけれど、僕は言葉にできなかった。
しかも、先輩のその発言に少し納得してしまう自分がいたのです。
その言葉に、大きく刺さってしまった理由は簡単でした。
それは、僕が表現者として、何もできていなかったからです。
帰り際の電車。
窓の反射に、無力で何もできず家とバイト先を行ったり来たりしてるだけの自分の姿がありました。
世界で大変なことが起こっているというのに、自分は何もできていないじゃないか…。
壁にぶち当たったわけですが、そこでメソメソしないのが僕のいいところです。
即座に落ち込んだ時に聴く、Bloodthirsty Butchers 「アンニュイ」を爆音で聴きながら、
「いや、俺は北林だぜ。あの北林だぜ。できないことないさ!」
とどこから湧き上がるかよくわからない自信をつけ、
「表現者として、何かできることはないか…?」と考え始めました。
その答えを模索する日々が続く中、加藤さんと話す機会が訪れました。
5月に出演予定だった、加藤綾佳さん作・演出の「かよちゃんのこと」の顔合わせの際(現在、公演は延期しています)でした。加藤さんが配信映画祭をやろうと思っていることをチラリと聞いたのです。
私は、「これだ!!!」と思いました。
その時、加藤さんから配信映画祭の話が来るとは思っていなかったので、個人的に自分の作品を配信する企画を進めようと決意しました。正直にいいますと、加藤さんの案をパクっていました。(加藤さん、ごめんなさい!)
しかし、”配信映画祭2020”ほどの規模ではなく、親友の松本とともにそれぞれ作品を出し合い、4作品を配信するという形でした。
その時に悩んだでいたことが、作品を有料化するかどうかでした。
僕のような無名監督が有料化すれば、誰も観てくれないのではないだろうか?
『恋愛電話』は学生時代に撮った作品で、当初、利益目的で撮っていなかったから、有料化するのはどうなんだ…?
まだプロではないとしても、プロを目指すアマチュアとして、少なくてもいいから有料化するべきか…?
自分のやってきたことを無料にするのはどうなんだ…?
いろんな想いが拮抗しているのか、ある日全てを解決する案が浮かびました。
ミニシアターさんに全額、寄付しよう。
私は小学生の時から徐々に、表現をある程度抑えた方が良いと考えるようになりました。
みんなと同じように、まえならえをするのが大人への道で、自分はあれがしたい、これがしたい、それを我慢するべきことなんだと変に学んでいきました。
みんなと足並みを揃えることが、生きていく上で一番重要なことだと。
でも、映画に出会ってから、私の人生は一変しました。
拙くても、下手でも、表現していいんだと教わりました。
時に映画で苦しめられることもありましたが、結局映画に助けられてきた24年間です。
その映画との出会いは、映画館でした。
黒澤明さんは映画の力で世界から戦争がなくなる。それが映画の力だ。といっていたそうです。僕はこの言葉を信じています。それくらい映画の力は計り知れないのです。
映画はこれからものすごいことになっていく。だから、映画と出会える場を、居場所を、失ってはいけない。
僕のできることは限られているけれど、限られているだけで、やらない理由はない。
それが表現者として、僕のできる最大限のことではないか。
僕は、この結論に至りました。
ある日の夜。
加藤さんからPDFのデータで企画書が送られてきました。
内容は、”配信映画祭2020”の件でした。
ざっくりと内容をまとめますと、”配信映画祭2020に作品を出さない?”ということでした。
僕「………ええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」
一旦冷静になろうと思い、一度寝ました。(なんで寝るねん!!)
そして、朝。ラインを開き、もう一度見ました。
ようやく夢じゃないことを確認し、加藤さんに参加の意向を返信しました。
参加の前に加藤さんに一つ頼みごとをしました。
配信映画祭の企画は、利益の一部を支援金にするものでした。
一度決めたことは、曲げない。それが男ってもんです。
誘惑を振り払い、全額寄付金という選択を曲げたくないことを加藤さんに伝えました。
こうして『恋愛電話』『夜が明けるまで』に関しての利益は、全額寄付という形になりました。
だから、「自分の作品を観てください」と言いたいわけではありません。半分正解で半分違います。(半分は正解なんかい!)
僕が伝えたいことは、加藤さんのように多くの方々が、こういう状況の中で1点でも2点でも、プラスにしようとしてくださる方々がいるということ。決してテレビでは流れないのかもしれないけど、”配信映画祭”という家の中でも映画祭を試みる、クレイジーな面白いイベントがあるということ。
そして、僕たちは僕たちで一生懸命、前を向いて生きているということを知っていただけたらすごく嬉しいです。
”配信映画祭2020”は、僕以外にもたくさんの作品があります。
総勢18名の監督が、皆様を配信という形で、全力で楽しませにかかります。
加藤さんが起こした”配信映画祭2020”という波が、もっともっと大きな波になって広がり、作り手も、ミニシアターさんの方々も、観てくださる方々も、みんなで笑顔になれたら嬉しいです。
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配信映画祭2020
https://haishineigasai2020.themedia.jp
2020年5月1日〜5月20日まで 開催!
全18監督の作品を集めた、完全配信の映画祭。
あなたのいる場所が上映会場です。
【上映作品】
〜シアターⅠ〜
加藤綾佳「水槽」
頃安祐良「想いは壁を通り抜けて、好きな人に会いに行く」
宮本杜朗「太秦ヤコペッティ」
福島拓哉「アワ・ブリーフ・エタニティ」
松野泉「さよならも出来ない」
小池匠「青森さんちの祝日」
東海林毅「偏愛ビジュアリスト 東海林毅ショートフィルム選」
〜シアターⅡ〜
伊月肇「トビラを開くのは誰?」「The Light Dances」
柴田啓佑「ヤギ、おまえのせいだ」 「ひとまずすすめ」
岡太地「川越街道」 「よろこび」
佐藤央「結婚学入門(新婚編)」 「MOANIN`」 「MISSING」
〜シアターⅢ〜
滝野弘仁&高畑鍬名「IS THIS WHAT DEMOCRACY LOOKS LIKE?」
亀山睦美「ゆきおんなの夏」
榎本桜「宝物の抱きかた」
髙橋雄祐「still dark」
藤木裕介「だった人」
北林佑基「恋愛電話」「夜が明けるまで」
平波亘「平波亘福袋」(5月14日〜)
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