見出し画像

バトンタッチ #あるべき成仏宴

バトンタッチ

いやあ、まいったなあ、おれとしたことが、車にはねられて即死とは、まあ、それはいいとして、後に残った幸子が不憫だよな 子どももいないし、これからの人生寂しいだろうなあ、なんて思ってたら、いい手を思いついたんだなこれが 親友のKさ こいつが律儀な奴で葬式の時、幸子に目も合わせず焼香して帰りやがった 分かってるんだ、なにせおれたち3人は小学校時代からの幼なじみだからね Kはずっと幸子が好きなんだ 幸子はっていうとKが1番で、おれが2番さ あいつが煮えきらないんでおれが求婚したってわけ Kには親父が残した借金があったし、おれの方が給料がよかったからね あいつが身を引いたんだよ だから、おれはバトンタッチをしたいのさ 分かってるんだ 幸子もKもおれに遠慮してるってことをね そいで3人でよく飲みにいったスナックの峰子ママに頼んだんだ ママはおれが見えるらしいんでね それで今夜、おれの貸し切り予約にして2人を呼んでもらったってわけさ ほらKが入ってきた 5分後に幸子がドアを開ける 今日で48日タイムリミットだ 真ん中が幸子、左がKでおれが右 いつものカウンター席さ ママがおれの方を見てウインクし、手はず通り、おれのキープボトルを2人の前に置く そしてボトルタグを2人は読む おれが1時間前に書いておいたやつをね 
「バトンタッチだK 幸子をよろしく H」
さあ成仏まであと2時間、3人水入らずさ 楽しくやろうぜ

#短編小説 #毎週ショートショートnote #あるべき成仏宴
#ショートショート


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?