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「山月記」病 #惰性のエッヘン解放

「山月記」病

  ある青年が峰子メンタルクリニックを訪れた
  容貌峭刻、肉落ち骨秀で、炯々たる眼光は病の深刻さを物語っている

どうしました? 女医峰子は微笑みつつ尋ねた

実は、このひと月眠れないのです

気になっていることでも?

そうだなあ、強いていうなら自分の絵の才能かな

画家?

一応ね

自信がないの?

自信はありますよ ただもしかしてなかったらって思うんです

じゃあ、絵を専門家に見てもらったら

あんな俗物たちに?ふん、あり得ないね!

  青年は急に尊大になった

峰子はその虚勢の裏に怯えの心があるのを見抜いた

臆病な自尊心性分裂病ね 「山月記」病とも言うわ

ふん、それで薬は?

薬より、エッヘンね

なんだそりゃ

エッヘンって3回言ってみて

エッヘンエッヘンエッヘン ガゥ お、気分が晴れるぞ ガオゥ なんか力がエッヘンエッヘン おお!漲ってきた おれは超天才だ エッヘン
  
  目が光り、牙が、手には毛が、爪が 

(ヤバッ、エッヘンの惰性化で野生化しちゃった)

ちょ、ちょい待ち、そこはお尻よ!痛い、キャー!


#短編小説 #ショートショート #毎週ショートショートnote
#惰性のエッヘン解放 #山月記

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