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恋島 #I 魚人(あいうぉんちゅ)

恋島

俺、魚人うおんちゅって言われてるんですと彼は言った なんでも島の海人うみんちゅの中で飛び抜けて素潜り漁が巧いからだそうだ 彼は私の命の恩人だった 一週間の休暇をとってこの島でスキューバダイビングをしていて、海底の岩場に足を取られてもがいてたときに彼が救ってくってくれたのだ 彼は祖父と二人暮らしだった 三ヶ月後、私は再びこの島に来た プログラマーの仕事に疲弊していた、いえ、それは嘘、彼に会いたくなったのだ 着くと直ぐ彼を探した 彼は岬の先端にいた 彼もいつもここで私のことを思っていたと言った 次の日、彼の舟で無人島に渡り、二人で裸で泳いだ 「青い珊瑚礁」みたいねって言ったけど彼は分からないようだった 碧い海 澄んだ彼の瞳 先のことはいい ああ、太陽がいっぱいだ ホテルに戻るとメールで辞表を送り、すぐに彼の待つ岬に走った 彼は夕焼けを見ていた あいうぉんちゅ、叫んだけど 彼にはもちろんは分からない 私は彼にキスをして耳元にささやいた 私は魚人が大好き そしてこの島も海も夕日も

#短編小説 #ショートショート #毎週ショートショートnote  

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