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鈴木健吾選手が2時間4分56秒

 2017年3月、日本陸連は男子マラソンのニュージーランド合宿を行った。参加したのは神野大地選手(コニカミノルタ)と鈴木健吾選手(神奈川大学)。※所属は当時。

 学生駅伝のエース区間を走っていたことは知っていたが、当時、このニュース(陸連の情報発信記事だったか?)を見た時、正直なところ〝陸連の海外合宿にこの2人なの?〟とインパクト薄いなという不思議な印象を受けた。

 日本男子マラソンのニュージーランド合宿といえば宗さん、瀬古さんたちの時代、その後もしばしば行われていた現役のランキングトップ15人くらいが選抜されて参加していたナショナルチーム合宿などのイメージがあったからなのか、別の意味で印象に残っていた。同時にこの鈴木健吾という選手、専門家の間では有望なのか、覚えておこうとも思ったのだった。

 2017年は東京五輪の代表選考方法が発表されるはずの3月にまだその全容がわかっていなかったが、このニュージーランド合宿のニュースの数日後、MGC制度が発表された(2017年4月)。

 神奈川大を卒業して富士通に進んだ鈴木選手はMGC出場権を締め切りギリギリの海外レースで掴んだ(ワイルドカード)。MGCの2ヶ月前(2019年7月)、北海道・深川のホクレン・ディスタンスチャレンジの1万メートルにも出場していた。深川に行ってパイプ椅子に座る鈴木選手の話に耳を傾けた記憶はあるのだが、写真や動画を見返しても取材記録に残っていない。収録していなかったのだろうか…。

 MGCファイナリストながらやや印象薄めだった鈴木健吾選手だったが、MGCの本番(2019年9月)では、マラソンの中間走(省エネ)の能力が高い選手だなという強い印象を受けた。独走していた設楽選手を追い詰めた功労者は鈴木選手だったと思う。中間点付近から追いかける集団をリードしていた。大迫、服部、そして優勝することになる中村に臆することなく主導権を握っているように映っていた。

 スタートが遅れ、雨のびわ湖(2020年3月)。名古屋で一山が快走した同じ時間帯でタイムを求め、最後は力尽きた1年前。

 大集団で進んだ前半、選手が絞れたあと、ペースメーカーが抜けカリウキの背後を進んでいく間、流れに乗っかる。無駄のない中間走はとにかく優れている印象をより受けた。抜け出したあと、最後の5キロが一番いいペースだったというのはとにかく敬意に値する。2時間4分56秒。

 新記録おめでとうございます。

 2021年2月28日、最後のびわ湖は日本のマラソンの歴史に深く強く刻まれた。

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