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スキー競技豆知識:サマージャンプ

 新型コロナウイルス(COVID-19、SARS-CoV-2)の感染拡大でスポーツイベントが休止となって以降、国内で初めてのスキー競技会が10月下旬から11月にかけて長野県白馬村、そして北海道札幌市で行われた。

 まだ新型コロナの対処方が全く分からず恐怖心ばかりに包まれていた初夏の頃、秋には有観客でスキージャンプの競技会をやると聞いても信じることができなかったが、実現した。

 白馬では10月22日にラージヒルの記録会を開催後、10月24日、25日にノーマル、ラージの2連戦。その後、移動日を挟み10月29日に札幌・宮の森ジャンプ競技でノーマルヒルを行い、10月31日から11月3日までは大倉でラージヒル4連戦という集中開催。過去に例を見ないタフな競技会だった。コロナ過での再開、有観客、連戦などで話題を呼ぶことにもなったが期間中などに感じた、より理解を深めるプチ情報をTwitter情報なども拾いながら再構成、再掲していく。

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 記録会、公式練習含め競技会のオフィシャルジャンプが13日間に4日連続+移動日+7日連続の11日もあった点。ワールドカップの終盤、ノルウェーで行われるロウエアーというシリーズは公式練習や予選を含めてこれに似た日程でジャンプを飛び続けるが競技場が次々に変わるので「同様」とは言えない。選手は1本のジャンプに相当な集中力を注ぐ。空を舞うジャンプ、風の呼吸で全集中。3日連続同じ台、しかも全てのジャンプが競技となると精神力の消耗は激しいはず。

 例年、札幌では7月(〜8月上旬)にノーマルヒル、ラージヒルの2試合、10月下旬に1試合、ジャンプ大会で行われてきた。新型コロナウイルスが落ち着きをみせないことから競技会の実施は10月以降となった。したがって夏秋の3大会は競技会再開後の10月下旬となった。

 夏にジャンプ!?秋になってもサマージャンプ!?。この呼称について説明する。11月〜3月がジャンプシーズン。4月、5月はオフ。6月〜10月がサマージャンプ。というのがカレンダー上の区分。

2020年夏の大倉山

 サマージャンプの定義は季節ではない。ルール上は助走路によって決まる。氷雪上を滑るのではなくセラミックや陶磁器製の助走路に流水して行うのがサマージャンプ。周囲に雪がなく、着地地点も人口芝のままだったとしても助走路が氷雪であれば冬のジャンプ大会となる。札幌市は2013年に夏・冬兼用の助走路を整備した。冬用はクーリングシステムを使用したアイストラックとよばれる。札幌市はアイストラック(助走路製氷機)導入時に稼働期間を11月からとした。そのこともあり競技カレンダーの上では冬季が11月〜3月、セラミックレールを使ういわゆるサマーは6月-10月となった。

 スキーのジャンプシーズンは11月から始まる。アイストラック(クーリングシステム)完成2シーズン後の2015年から全日本選手権(ラージヒルはNHK杯を兼ねる)が開催時期を秋に移し冬の国内大会は11月開幕となった。さらに3年後にUHB杯も開催時期を変更し、大会名に「サマー」が残った秋の大会を含めて国内大会の開幕シリーズが確立した。

 競技カレンダーのシーズン区分は11月から冬のジャンプ(曜日の関係で10月最終週から冬のジャンプがスタートすることもある)。ただ、冬期間でも融雪が早い春や開幕時の製氷状態が不安定な時は安全な競技運営やコンディションの公平化のため夏のレールを使用する場合もある。競技シーズンは冬開幕なのだがルール上はサマージャンプというややこしい状況が起こりうる。

 今年、冬の国内大会が開幕できるのかとの心配はもちろんあったが、大会日程作成に際して例年通り開催する計画を立て、札幌冬開幕シリーズ3試合と夏から延期された2試合、合わせて5試合が集中開催されることになった。

 コロナ禍によって延期された夏の2大会(札幌市長杯宮の森サマージャンプと札幌市長杯大倉山サマージャンプ)と新型コロナ拡大後初の国内大会、札幌冬開幕シリーズ3試合がひとつになった、というのが「秋」いや「冬」なのにサマージャンプが行われた所以。そして使用助走路は夏仕様のものとなった。

(2020年は例年大会を実施する日が会場が札幌に変更となったオリンピックのマラソンと重なることになってスキー関係者も五輪開催のサポートに回り、ジャンプ大会は開催しない可能性もあった。春に五輪の延期が決まりイベント日程としては空いたのだが、感染拡大防止もあり8月にジャンプ大会を開くことはなくった)

 ルール上、また競技カテゴリーも夏仕様で間違いではないが、10月24日、25日の白馬2連戦、10月31日のUHB杯、11月3日のNHK杯は冬の大会を夏のレールを使用して行った。

20201030大倉山

 話を複雑にしているのは、UHB杯という名のサマージャンプ大会が1984年から2006年まで行われていたこと。10月31日に行われたUHB杯は平成元年(1989)から毎年冬に行なわれていた(2006年は荒天中止)大会が2018-19季から全日本選手権同様、時期をシーズン開幕の11月に変更したものということになる。

 ちなみに2019-20の冬季開幕時の国内大会も全日本ノーマル、ラージ、UHB杯、NHK杯のいずれも夏のレールを使用。その前年の2018-19の同各大会はアイストラック、冬の助走路を使用している。

 FIS国際スキー連盟はワールドカップと同格の夏の助走路を使う大会をグランプリ(GP)と称している。日本では夏仕様の大会であることからサマー・グランプリと表記することが多い。

夏の助走路を使用して行う冬の大会の場合、例えばUHB杯なら「ノルディックスキーのUHB杯ジャンプ(K123 HS137)※夏季助走路使用」。または「スキージャンプのUHB杯(K123 HS137)※夏季助走路使用」というのが適した表現かと思う。

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NHK杯の女子組:優勝、高梨沙羅(クラレ) 2位、伊藤有希(土屋ホーム) 3位、丸山希(明治大学) 白馬ノーマルで小林諭果が表彰台にたったが女子の表彰台はほぼこの3人が占めた。丸山のヘルメットにはNOZAWA ONSEN(野沢温泉)と書かれているがこれが一瞬、NOZOMI NI SEIEN に見えてしまうのは私だけか…。履いていたシューズも気になった。

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NHK杯男子組:優勝、佐藤幸椰(雪印メグミルク) 2位、中村直幹(東海大札幌スキークラブ) 3位、小林陵侑(土屋ホーム) 4位、岩佐勇研(東京美装) 5位、伊東大貴 6位、栃本翔平(いずれも雪印メグミルク)。この日は3位内を外したが伊東大貴の健在ぶりは確かなものだった。また、全日本1本目1位ながら表彰台を逃した佐藤慧一、小林潤志郎(ともに雪印メグミルク)らも海外遠征で好成績をあげるだろうと予感させるものがあった。

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