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「物言わぬ他者」だって、あなたの大切な依存先

※これはcotree advent note 5月の5日目、通算35日目の記事です

令和になって、新時代がはじまりました。

元号なんて区切れはあっても、なくても、2019年5月がやってきた、ということには変わりありません。

ただ、自分が生まれて育った時代が終わったということには間違いないので、過去を振り返り、そして今、昔の自分と同じ辛さを抱えている人へのメッセージを書いてみたいと思います。

「依存先を増やそう」とは言うけれど・・・

cotreeの皆さんが日々口にしている「依存先を増やそう」という考え方を、読者の皆さんはご存知でしょうか。東京大学の熊谷晋一郎先生が提唱した考え方です。(よろしければ、下記の記事をぜひ読んでみてください!)

誰にも頼らずに一人で全部できることが「自立」なんじゃなくて、いろんな人に上手に頼る(=依存)ことができるのが「自立」なんだよ、という考え方は深く共感しています。その強力な依存先の一つがcotreeでもある、という思いも変わりありません。

ただ、人に上手に頼る以前に、人と上手にコミュニケーションが取れない、すぐ不安に苛まれて攻撃的になることもあった、という葛藤も抱えていた自分には、どうやったら依存先を増やせるのかがわからなかった。

熊谷先生の考え方は、自分が見ても理想的であるし、それを自分も実現したいという気持ちはあります。しかし、人に頼ろうとしても、うまくしゃべれない自分には、ちょっとハードルが高い考え方でもありました。

まず自分の「好き」を足場にして「安心感」を作る

そんな自分にもできること。それは人に頼る以前に、自分の中で「好き」を足場にして「安心感」をたくさん作ることでした。

ヒントになったのは一年くらい前に読んだLITALICOの野口晃菜先生(@akinaln)のnote。

新しい時代になろうがなるまいが、不安は変わらずにある。自分の先天的な自閉症スペクトラム(ASD)の特性は消えるわけじゃない。いつもそこに待ち構えているし、それでつらい気持ちになることは今だってあります。

そんな時に、野口先生が言うように、自分の「好き」に没頭していました。不安から逃げるために。

・好きなアーティストの音楽を延々と何度も聞くこと
・キッチンにたって自分が美味しいと感じるものをひたすら作ること
・散歩して風に当たること
・自分を励ましてくれる漫画の中のヒーローを何度も見ること
・自分を支える過去の偉人たちの本や記事を何度も読むこと

不安の濁流の中で、自分のそんな好きなものを杖の代わりにしてしがみついていたのかもしれません。流されてしまわないように、苦しさに飲まれてしまわないように。

そうしたら、なんとか不安をやり過ごせた。ちょっとだけ「安心」できた。そんな「安心」の割合を少しずつ、本当に長い時間かけて増やすことで、不安をコンバットすることができなくても、それに支配されることも少なくなりました。

そうしたことで、初めて人にいる場に踏み出す「勇気」をちょっぴり持てたりしました。

そうしてやっと「(人という)依存先を増やす」というスタートラインにたてた気がします。

「人との関わる」ために、「物言わぬ他者」を大切に

「依存先を増やす」のは一つの到達点ですが、「人との関わり」はモノとは違って不安定でもあります。

寄りかかる人はいつだってあなたを受け入れてくれる状態なわけじゃないし、過剰に寄りかかられ続けるとしんどくなる。また寄りかかる方もしんどくなることもある。頼ろうとしたって、逆に自分が傷つくこともある。

だから、そんな時に寄り添ってくれるあなたの中の「好き」を、「物言わぬ他者」を、大切にしてほしいと思います。

「物言わぬ他者」であるあなたの中の「好き」は、人との関わりに傷ついたあなたをいつだって支えてくれる。不安から目をそらさせてくれる。あるいは人との適切な距離感を取るための力になってくれるかもしれない。言葉はしゃべれないけれど、あなたに寄り添う立派な「依存先」って言ったっていいと思うんです。

そこで活力を得たら、また頼る人を求めてあるき出せばいい。そうしながら生きていくのも、ありじゃないかなと思います。

「好き」を大切にして、「安心」を得た先に、誰かとつながり、やさしくなれる

そんなプロセスを少しずつ経てきた自分。

完璧ではないけど、ちょっとずつ人に頼ることを覚えられたり、あるいは人から離れたり、ぼんやりしながらも生きられています。

今もまだ「依存先を増やす」プロセスの途上ではあるけれど、しんどさが消滅したわけじゃないけれど、昔のとてつもなく苦しかったころよりもずっと生きやすくなれました。

ソーシャルメディア時代らしくは社交的にはなれなかったけれど、孤独だった自分も不器用ながら少しずつ人とつながることができました。

そして何よりも、自分と人にちょっとだけやさしくなれました。


今、人との関わりに悩む人へ。そして昔の自分へ。

あなたがなにかを「好き」に思う感覚は、あなただけのもの。誰にも侵されてはならない、尊重されていい感覚です。それをどうかまずはご自身で大切にしてほしいです。

(※まわりの人は、傍目にはわかりづらいかもしれないけれど、無理に引っ剥がすのではなく、苦しさの中にいる人の「好き」をどうか尊重してあげてほしいです)

苦しさの中にいるのなら、まずは「物言わぬ他者」にしがみついているだけでもいい。そこから少しずつ「安心」を増やしていけばいいと思います。

新時代になって、希望に燃え上がる社交的な人が増えているのも目につくでしょう。それで焦りも苦しさも増える日々だと思います。それでも、あなたの歩き方で、あなたのペースで、人の輪の中に歩んでいけばいいですよ。

それがいつかきっと、ここにいないけどあなたをわかってくれる誰かと、あるいはそばにいるけれどあなたをわかりたい誰かと、あなたをつなぎ合わせてくれるはずだから。それがいつの間にかあなたの大切な依存先になってくれるから。

「好き」のかたちも十人十色だけれど、のけものになる人が少しでも減る時代になりますように。


【参考資料】

・朝日新聞社のメディア「withnews」より、連載「#withyou~きみとともに~」


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