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「やってはいけない」の魅力 ~「塊魂アンコール」レビュー~

コンニチハ。
どうも、きすけ(鳥)です。

最近は皆さんいかがお過ごしでしょうか?
新たな年度の始まり。変わりたてのクラスのちょっと張り詰めたカンジ。あるいは無謀な事業計画にため息をついたり、新生活に不安を抱えながら奔走している方などもいらっしゃることでしょう。

おそらくですが、どうもストレスが溜まっちまって何かを転がしちまいたい気分に駆られているんじゃないでしょうか?

私も例に漏れずそんな転がしちまいたい人の1人だったのですが、そんな状況にぴったりのゲームを見つけてしまいました。

それこそ
「塊魂アンコール」

でございます。

かねてより名前は知っていたのですが、最近上述したコロガシ欲が溜まってきたこともあり、今がやりどきかと思って買ってみました。
いざプレイしてみると、シンプルなゲーム性ながら面白さのエッセンスがたっぷり詰まっており、短時間で非常に満足のいくゲーム体験となりました。

今回は自分のプレイ体験を交えながら、「塊魂」というゲームがなぜこんなに面白いのかについて、自分なりの考えをまとめておきます。
塊魂をプレイしたことないよ、転がしたい気持ちと塊魂ってゲームになんの関係があるのって人にも分かるように本文を書いていくつもりなので安心してね。


「塊魂アンコール」とは?

この項では「塊魂アンコール」とはなんぞやっていう方に、ストーリーも交えて簡単にゲームの説明をしていきます。そんなこた知ってらぁって人は、王様レインボーで次の項へすすんでください。

「塊魂アンコール」という作品は、2004年にナムコよりPS2向けに発売されたゲーム「塊魂」のリマスター版です。2018年にNintendo Switch向けに発売され、2020年にはPS4やSteamなどでも発売されました。

ストーリーというストーリーは正直ありません。王様と呼ばれるめっちゃデカい(超デカい)人が酔っ払って地球まわりの星々を壊しまくってしまったので、尻拭いとして主人公のめっちゃ小さい(超小さい)王子が星を再生していくってな感じです。なんとも迷惑ですね。

で、肝心の星を再生する手段はなんなのか。
それは、王子が地球に降り立ち、「塊」を転がして物を巻き込み、大きな塊を作ることです。


??

いや、本当に書いた通りなんですよね。
王子が地球で塊を転がして、はじめは消しゴムとか、みかんとか、小さな物を巻き込んでいき、塊が大きくなると犬とか、人とか、色んな物を巻き込めるようになり、最終的には塊が星になるんですよ。家とかも巻き込んじゃったりしますね。


???

俺もよくわかってませんが、それで星が再生するんだから地球の我々にとってはありがたい(?)ことです。

そういうわけで王子は、地球の色んなシチュエーションで塊を転がして、無くなった星々を再生していきます。それが「塊魂」です。


王様(上)と王子(下にいるちんまいの)
差がありすぎる


転がす、巻き込む、ぶっ壊す!

・「やってはいけない」なら、ゲームでやろう

さてここからは、本題に入って、私がプレイして感じたこのゲームの面白さについてお話ししていきたいと思います。

このゲームの面白さの大半は、全部巻き込んでぶっ壊す!っていう現実では「やってはいけない」ことを、気持ちよくゲームに仕立てあげたことによって生まれていると思います。

ゲーム説明の項でも少し触れましたが、このゲームの後半では、大きくなった塊を転がして街に繰り出し、家や人々をガリガリと巻き込んでいく場面ってのがよく出てくるようになります。

誰におかれましても、一度はちょっと破壊的な想像ってものをした事があるかと思うんですね。「目の前の花瓶を床に叩きつけて割ったら…」「うるせぇ上司や先生をいきなりぶん殴ったら…」的な。
でも、こういう行動って考えはするけど絶対に行動には移しません。なぜか?現実ではそういう行動が法律や倫理の観点から禁止されているからですね。

それでもなんだかまたふと、考えてしまったりもする。人間って不思議な物だなぁと思われますが、ここにはある心理効果が働いているといわれてます。

カリギュラ現象なるものをご存知でしょうか?禁止されると人はかえってやりたくなってしまうという現象をこのように呼ぶらしいです。
「やっちゃだめだろ」と思えば思うほどそういう妄想が膨らんでいってしまう……。そんな人間の不思議さはこの現象によるものだと言えるでしょう。

少々話が逸れましたが、「塊魂」はそんな人間のカリギュラ的な欲求を、ゲームの世界で存分に満たしてくれる作品だと個人的には感じます。

人間がどうしても考えてしまい、しかし行動にはとても移せない破壊的な衝動。「塊魂」はそこから生まれる日々のストレスの受け皿として、非常に適したゲームってな訳です。

配信で見てるときも「うわーっすげーっ」って感じで楽しめてましたが、自分の手でそれができるとなるとやはり格別です。「行っちゃうよ?俺、街潰しちゃうよ?」ってカンジでアホみたいに突っ込んで気持ちよくなれます。

見る時とやる時で、これは本当に感じ方が違うので絶対に自分の手でプレイしてみたほうがいいと思います。


公道をわがもの顔で走る7m超の塊。こわい

・サウンドは心地よく、BGMはさながらドライブ

転がして、巻き込む。そんなシンプルなゲーム性の本作。時にいびつな形も作りながら大きくなっていく塊は目に楽しいですが、耳に入る音でも、このゲームはプレイヤーを楽しませてくれます。

まずは、モノを塊で巻き込んだ時のサウンドですね。プチプチと小気味良い基本の巻き込み音から、一部のモノに固有に設定されている特殊な巻き込み音まで、巻き込みの爽快感を増すように丁寧に作り込まれていると感じます。

後半に大小様々なモノを一気に巻き込んでいった際のわちゃわちゃとした音はもうたまらんです。俺がこの世界全部巻き込んでやるんだ〜!って気持ちに拍車がかかります。

さらにBGMについては、もうこれだけでゲームと同じ時間くらい楽しめるんじゃないかなってほどに素晴らしいです。映画レビューとかで有名なライムスターの宇多丸さんも「ゲームよりサントラを予約した」と音楽面での評価をかなりされていました。
いやゲームも予約してよ。

BGMのジャンルはかなりバラバラで、ステージごとに全く雰囲気が違うといっても良いです。マンボっぽいのとか、ラップ調の曲とか、ホントに色々です。

しかし、そのどれもが意外にも、塊を転がし続ける独特なプレイ体験とよく合っている。自分はさながらカーオーディオのラジオから流れる音楽をイメージしました。車でドライブ中、ふとかかってくる知らない音楽が、妙に運転を楽しくしてくれて……気づけばサビをちょっと口ずさんでしまう、そんな音楽との出会い。

塊を大きくするという目標はあるけれど、そこに向かっての転がし方や旅路は人それぞれと言い換えれば、このゲームはドライブに近いような感じもします。

そんなドライブ感と、良質なBGMが織りなす唯一無二の体験を、塊魂は提供してくれています。
ちなみに自分の一番好きな曲は「LONELY ROLLING STAR」です。エモかわいい感じのナムコらしい曲で、サビはどうしても歌いたくなっちゃいます。


「塊の成長」が変化を産む

さてここまでは、塊魂の根幹、巻き込んでぶっ壊す面白さについて語ってきました。塊魂独自の面白さの大半は上記の内容に詰まってると思います。
この先は、塊魂のシステムについてもう少し深く突っ込み、中毒性のある面白さを生み出す要素を、もう一つ考えていきます。

・変化のないゲームはつまらない

第一にこの事項は共有しておきたいのですが、変化のない単調なゲームって、ぶっちゃけつまらないです。同じことを淡々と繰り返すだけのゲームに中毒性を見出させるのは中々難しいと言ってイイでしょう。

ん?でもそうしたら塊魂も、ずっと塊を転がして物を巻き込むだけのゲームじゃない?
いやいや実は、塊魂はこの単調さを解消するために、ゲームにしっかり仕掛けを施してあります。
それは、塊が大きく成長するというシステムです。

・巻き込んで嬉しい、巻き込めなくて悔しい

塊魂では、ステージの開始時にはかなり小さな塊が与えられ、それを転がして徐々に大きくしていきます。巻き込めるモノの大きさは塊の大きさによって決まるので、消しゴムほどの小さな塊では、テレビのリモコンですら巻き込むことはできません。
それどころか、街を徘徊する犬や猫なんかは我々の小さな塊を見るや否や、遊び道具にせんとばかりに駆け寄ってきます。
動物たちの突進を喰らうと、場合によっては塊の一部が破壊されてしまいます。今の小さき塊には、逃げるしか手段はないのです。


ネズミにすらたかられる、哀れな塊。

しかしこれは何とも悔しい!いつかはお前たちを巻き込めるほど、でっかい塊になって帰ってきてやる!そう意気込んで、プレイヤーは塊を地道に大きくしていきます。

さて悔しさをバネになんとか塊を育て上げ、人の身長ほどの半径を持つ巨大な塊ができました。これを先ほどの動物たちのところに持っていくとどうでしょう。
なんと、今度は犬も猫も、塊に恐れ慄いて逃げていくではありませんか!さんざ怖い思いをさせられたのですから、慈悲は無し。しっかり逃げ道を塞いで巻き込んでしまいましょう。

このように、塊魂には塊を成長させるというシステムが含まれていることで、はじめは倒せなかった敵を、成長して倒せるようになる、という、いわばRPGにも似た痛快な体験が味わえるようになっています。

ただメチャクチャにぶっ壊すだけ、ってのもそれはそれで爽快だと思うんですけど、飽きさせない展開を作るためにも、段階的に壊せるものが増えていくこの成長システムは非常に素晴らしいと思います。

また、反対に塊が小さいうちしか通れない穴みたいなルートもあり、塊の成長という一つのシステムが、成長で強大な敵を撃破する痛快さも、どの道を先に通るかという戦略性も生み出しています。

塊のすぐ右の側溝は、これ以上大きな塊では通れなさそう。

このように、一つのシステムが同時にいくつかの遊びを生み出す形になっていると、デザインがうまいなーと感心します。私もゲームをつくるなら、こういうゲームデザインを目指していきたいものです。



おわりに

というわけで、塊魂アンコールの何故だかやりたくなってしまう面白さについて、言葉を尽くして語ってみました。

あれこれ言いましたが、結局やってみなきゃ、手に持ってあの塊を動かしてみなきゃ、その面白さは分かりません!
少しでも気になったアナタ、今すぐ塊魂に手を出してみてください。転がせば分かる、体で分かります。このゲームは面白いと。
というわけで、ぜひプレイしてみてくださいね〜!

そういえば、もうすぐ続編である「みんな大好き塊魂」のリマスター版も出るらしいですよ!これはもう、遊んでおくっきゃない!!


それでは、さようなら!





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