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2023 9.22 23 PASSION

昨晩から激しい雨が続き、寝る直前に布団が濡れていることに気付いた。とうとう寝室にも雨漏りが始まったかと思いながら寝たせいか眠りが浅かった。朝4時に目覚めて、昨日の日誌の続きを書いて投稿し、呪術廻戦のネタバレを読んでしまい、五条先生への想いが溢れてやまず、そのまま悲しみの二度寝をした。
7時に再び目覚める。寝室を出るとかなさんがパンケーキを焼いていた。自分は布団にいながら、朝ごはんの匂いと人の話し声を聞くのってなんで幸せなんだろう。みちくんはかなさんにだいぶ慣れてきた。トーマス図鑑を自慢したりしているうちに送迎タイムがきて、いつものように一家でこども園へ。
帰りに汽水空港へ寄る。今日のモーニング喫茶担当はイタガキさん。世界中を旅してきたイタガキさんは世界各国のコーヒー豆を知っている。店ではミャンマー、ラオス、台湾のコーヒーやお茶を出してくれている。コーヒーを飲んで帰ろうかと思ったけど、今日はジグシアターで濱口竜介監督の『PASSION』を観ることにしている。一度帰宅してジグの前に再び来ようということになった。

『PASSION』は大学時代の同級生たちが30歳を目前に控え、パーティーで再会するところからはじまる物語だった。仲のいいグループ内での過去の恋愛模様と現在が、お互いの再会をきっかけにもつれあう。「出たー!恋愛マスターズの映画!」と思いながら観ていた。僕は昔から、人間たちのことを大体恋愛マスターズだと思って眺めるように生きてきた。マスターズは目配せや微妙な言葉のやりとりによって、いつの間にやらいつも仲を深めている。グレーゾーンを楽しむ洒落た人々だ。僕はそれを羨ましいとも思わず、ただ外側から「人間って恋愛マスターズだなあ」と思って眺めてきた。人の恋愛に関心がない。だから映画がはじまって30分間くらいは、人ってこういうの好きだよなあという気持ちでただ存在していた。が、会話が進むにつれて、恋愛をフックにそれぞれの内面がえぐりだされていく。以降は引き込まれて最後まで夢中で観た。そしてとても疲れた。現時点の倫理や制約の中で心のままに生きようとするとどうしてももつれていく。そのもつれに一生懸命向き合う人々。
映画館を出ると雨が上がって晴れていて、丸一日映画を観ていたような気持ちになった。密度の濃い映画を観た。
『ハッピーアワー』の時も思ったけど、濱口竜介という人はどうして人の心の内側で起きていることがこんなにも描けるのか。どこにでもある日常の心の動きだけで物語の起伏をダイナミックに展開する。そりゃ世界の濱口竜介になるよなと思った。

再び帰宅。家の前の苗代に蒔いた種が無事に発芽した。昨日は無かった葉っぱがある。前回失敗したレタスとサラダ菜、失敗の原因は覆土が厚すぎたからのような気がして、今回は一切土をかけなかった。種から根だか芽だか分からないが、種蒔きをして一日後には種から根/芽が出てきた。それが半日経つうちにも伸び続けているのが確認できる。種の状態というのは生を内包した死の状態、生と死の狭間のような不思議な地点にあって、単体で自己完結している存在だ。一度発芽してしまえば、土や水と接続しないと死んでしまう。目のない種は肌感覚で湿り気や温度を感じ、「今だ」というその時を選んで、いちかばちかの賭けとして発芽する。世界と接続するという強い決意を感じる。とか思いながら苗代を見てから再び店へ。

今日はたくさんお客さんが来てくれた。久々に会う友人もちらほら。ジグの上映期間は本当にお客さんが多い。近所にミニシアターができてくれて本当に嬉しい。かなさんの本もよく売れるし、原画展も観てくれて有り難い限り。夕方、ふわーっとした雰囲気を纏いながら世界の濱口竜介がご来店。濱口さん本人は全然「世界の」なんて気負いがない、静かで優しげな人。明日のジグでトークがあるから前日入りしてこの町にいるみたい。凄いことだ。
くたびれた夜は、我が家はうどん屋のちよしに行く。今日もちよしに行くことになるのかどうか。というところで、アキナは「ちよしに打ち勝つ!」と最後の気力を振り絞り、家でうどんをつくってくれた。日誌を書く気力は振り絞ることができなかった。

2023 9.23
今日は遅くまで寝ようと前日に決めていた。予告通り9時前までぐっすりと寝て、朝ごはんはアスコットのモーニングにする。みちくんもずっとぐーぐー寝ていたけど「バニちゃんに会いにいこう!」というと笑顔で家を出てくれる体勢をとってくれた。アスコットには山陰柴犬のバニラがいて、我が家はみんなバニちゃんが大好きだ。
いつものようにモーニングセットBを頼む。そしていつものように店員さんがお菓子をくれた。みちくんはたちまち満面の笑みになる。シンプルな子だなと思う。
アスコットを出て、湯梨浜町図書館へ頼まれていた本を卸して、ついでにおはなし会と工作教室に参加した。司書さんは読み聞かせが上手で、感情の込めどころを心得ている。リズムもよかった。こんなふうに絵本を読むといいんだなあと思いつつ、僕も物語に惹き込まれた。みちくんもそうだったようで、一冊一冊の物語が終わる度に一番最後まで拍手していた。工作では紙コップクラッカーをつくった。わくわくさん的な工作グッズだ。こういうおもちゃは「作ってもしょうがないよなあ」とついつい思っちゃうけど、作っている時間そのものが楽しくて、その時間に意味があるのだと教わった。そして、作り終えたものをみちくんはとても嬉しそうに抱えていた。家でもやってみよう。

オープン前、書店組合の方々が訪問してくれた。時々来てくれていたお客さんは書店組合の組合長で、今日初めて知って少し驚いた。米子の本屋さん、杉島書店の杉嶋さんとも初めて会った。杉嶋さんは本にどんな可能性が秘められていて、本屋に何を期待しているのかを熱く語ってくれて、出会えたことを嬉しく思った。本屋は商売の皮を被った原っぱ(広場)にもなれるし、寺や教会にもなれる。大人しいふりをしながら町に革命家を住まわせることができる秘密の隠れ家でもある。
昼に店を開ける。機内食を頼んでくれるお客さん多数。本もよく動く。今日もかなさんが来てくれて、みちくんとよく遊んでくれる。僕はレジをしたり、みちくんとカニを見つけに散歩したり、みちくんを寝かせるべくドライブをしたりとずっとうろちょろしていた。

閉店間際、近所の古着屋「庫」のオーナー、ともやさんが来て、湖畔サウナ計画を少し聞かせてもらった。良い!北欧のように湖と近づいた暮らしをしたい。実現を願う。

これから今夜はヤマギーのパエリアパーティー。帰ってから日誌書くのは多分無理だからこれで終わる。

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