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魂の容れ物
3日前に逝った愛猫ムギが身につけていた首輪。革のバンド部分は亡骸と一緒に棺に入れたのだけど、鈴と金具の部分は燃やせないので切って残し、キーホルダーにつけた。
息を引き取った後の亡骸を、もう抱くことも触れることもできなくなるからという思いで何度も撫でたりさすったりしたけれど、実は自分でも意外なくらい亡骸そのものに対する執着はなかった。
光を失った目や、半開きのまま固まった口元、固く硬直した四肢。それはムギの魂の容れ物だったものに過ぎず、そこにムギはもういないという感覚が強かったのだ。
だからお別れの時に「遺髪を採りますか?」と訊かれてもためらいなく断った。
むしろいつも部屋のどこかでチリンチリンと鳴っていた鈴の音の方がなつかしく、ムギそのものの存在を強く感じている。キーが揺れて鈴が鳴る度、ちょっぴりせつなく温かい。
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