私は、ただあんたと一緒にいられるだけで幸せなんだよ

 

 劇団バルスキッチン第33回公演『どぎまぎメモリアル ~まぎまぎブルーver.~』を見てきました。毎年春にやっているこちらの公演ですが、昔、女の子の推しがWキャストで出ていたので見るのは2度目なんですよね。
 お父さん(ズドンさん)以外全キャストが違う公演、しかも推しの演じる役が違うため、まったく違う視点で2回目見れて、どぎメモの世界がより好きになった気がします。

 陸くんは、主人公の家でニートをしている……という名目で、実は信宏の会社で働く立派な会社員だ。27歳?(だっけ?)で仕事は部下に任せてある!って言えるの、ちょっと面白い。たぶん前回見ていたときは私は大学生だったのであまり違和感を覚えなかったが、社会人になった今、27歳という年齢のリアルがわかる。IT系だしあまり年配の上司がいないのか、ベンチャーなのか。でもそれにしてはスーツをきっちり着て出社してるの、IT系にしてはけっこうレアな気がする。ゲーム開発だけど営業とかなんだろうか。

 タイトルは楓のセリフだが、私はこれを聞いてはっとしたことがある。拓郎は楓のことを、夢を追いかけている拓郎を応援しているという風に捉えていた。これはある種、推しとオタクの構図に近いと思う。けれど楓は、純粋に恋人として拓郎のやりたいことを応援しているだけなのだ。
 恋人であれば、やりたいことが変わったら別の道を応援するし、ある意味成果を求めていないのだと思う。
 私は以前、女の子の推しがアイドルになったと書いた。アイドルのライブは楽しいけれど、自分には合ってないのを感じる。そもそも会場の9.5割がおじさんで、スタンディングでスペースが狭くて、料金は安いが回数が多い。今は月1~2くらいでふらっと行くぐらいになっている。
 初めて地下アイドルのライブに行ったとき、来てくれると思ってなかったと言われた。それはそうだろうなと思う。だから、拓郎のように映画監督という夢を諦めて別の道に進むという選択の難しさが分かる。

 それぞれの人生のフェーズでしか気づけないこと、抱けない感情というものがあるのだと思う。そういったものを、毎年同じ作品を同じ時期に上演しているどぎメモで気づけるのは、幸せだ。


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