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悪を! 叩く!/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.3.7-21.3.13)

こりゃア愉快痛快。って体験を久しくしていない気がして、勧善懲悪っていうけどたとえばアベンジャーズですよ。ヴィランのはずの、サノスもヘラもウルトロンも、彼らなりの言い分がある-という描かれ方じゃないですか。だから叩いてスッキリ、とはなかなかならないし、そしてそのモニョモニョした感覚は、世界のいまをそれなりに反映している。
絶対的な悪=問答無用で倒してヨシ。ってクラシカルな物語構成は普遍性を失い、そも絶対的な悪とは何ぞ。という問いが重要に……何の話ですか。

一瞬トボけてみたものの、先週発覚した「集団感染発覚後も個室対応じゃなかった」話に続き、今週も入管方面ヒドい話がありましたね。
入管、あいつらこそ絶対悪。
糾弾する声が耳に入ってくるわけですが、どこか片手落ちというか、それはそうだけど、それだけじゃないのでは。みたいなところで思考がぐるぐる回るんです。

在留資格のない外国人を収容する名古屋出入国在留管理局で6日、スリランカ人の女性(33)が死亡した。遺品となった手紙には「ほんとう に いま たべたい です」と書き残されていた。
救済するのではなく、退去強制令を受けた者を厄介者扱いし、追い返す対象としか考えない、貴局の送還方針とその下での対応が死に至らしめたと言わざるを得ない

現行の非人道的入管しぐさには、サノスにはあった「彼らなりの理」を見出すことすら困難だと思う者ですが、同時に、彼らが「倒すべき敵」なのかというと、そういうことではないと思うんですよ。あなたや私がアナーキストなら話は別だけど。
ここね、血走った目のひとたちの声がどうしても大きく聞こえますけどね、その目的も方法論も合ってます? と疑問を呈さぜるをえない。
なにしろ彼らの非を責めて・攻めあぐねている現状があるわけじゃないですか。だとすれば違う工夫をするべきで……って具体的にどういうことだよ、って聞かれても答えの持ち合わせは無いです。俺にだって無いよ!(キレ気味)
云々の自問自答をしながら、法務大臣の記者会見最新版を読みにいったら、面白い一節に出会いました。

     法務大臣閣議後記者会見の概要 令和3年3月9日(火)

【記者】医療体制の在り方も含めて,具体的にお答えいただきたいと思います。森大臣のときは,少なくとも仮放免の許可については積極的に運用されていたと思うのですが,上川大臣はなぜ仮放免に対して積極的な指示を出せないのかということも含めてお願いいたします。

【大臣】今の御質問でございますが,森大臣のときに方針を出された4月の時点の方針は,今もこの方針を守っています。そして同時に,このコロナ禍におきまして,今のようなクラスター事案も発生していることを受けまして,更にこれを高めていくために,医療機関,あるいは保健所としっかりと連携をとりながら,様々な施策を総合的に打ち出してきているところでございます。
その意味で,今回のコロナ禍でのクラスター発生につきましては大変重いものと受け止めておりまして,私も就任して以来,このコロナの問題については,法務行政として命を預かっておりますので,そこについてはしっかりとギアアップして取り組もうということで,指示を各部署に出しております。出入国在留管理庁の所管も例外ではございません。

前任者比較! これは新しい切り口。
現法相の口調が少なからずガチっぽいところ、鉄壁のディフェンスとはいえ隙はあるんだな。という感想で、この「記者」、使命感に燃えるあまり正面からしか突っ込めないタイプ(御自身の媒体はそういうコンテンツのオンパレード)ですが、今回のは良いパンチだったよなー。
というような、斜めからの感想が耳に入ったら怒られそうなので、小声で言うんですけどね。

■バクちゃん的アプローチを、個人的には支持したい

先々週、知ったばかりなので、続けて小声で紹介するんですが、メッセージって直接的なものと間接的なものが揃うのがイイと思うマンとしては、後者の好例としてしばらく推していきたいです。バクちゃん良いよ。

■もうひとつ、入管関連で紹介しておきたいエントリ

今までもわたしたちの命をのこってるのは 外で自分たちのことを考えている みんなさんのおかげだと思っています。
もしみんながいなければ 入管が自由で好きなように収容者をくるしめると思います。
今のコロナで わたしとすべての収容者を ころされるまえに たすけてください。

■話は変わりますが、これまた賛否が分かれそう……と思った記事

個人的な立場は明確で、走ってきて自分の目の前で転んだ子どもがいれば「だいじょうぶか」って駆け寄る者でありたい、と思って生きているので、在留資格云々よりヒトとしての、自分のカラダが動く方を優先します。
ってところなんですけど、それは個人としての思いですし、そうは思わないひとが居ることも知っているし、そして、それらのミクスチャが社会ってものですから。
それはそうと、前回バズった記事のときにも思ったのですが、珍しい題材を見つけてくるひとですね。

■外国人とか技能自習とか入管とか、そのあたりのキーワード・ウォッチが習慣化している私なので、本邦の「ビジネス入国」のアレな実態を最初に報じたのは上で引いた米元文秋(敬称略)の個人記事だったことは私が保証しますが、今週の毎日新聞が、関連して興味深い取材記事を掲載していました。
話者が野党の参院議員だから言えることで、これは大手新聞社らしい良い仕事ではないか。少し長めに引用します。

20年4月3日に上陸拒否対象地域が73の国・地域に拡大されると同時に、本来は入国が許されない感染症危険情報レベル3の国から「特段の事情」による入国者が急増した。入管当局に開示を求めたところ、当時は永住者や定住者のほか、国際線航空機の「乗員」が多かった。
昨夏以降は、就労が認められる在留資格である「技能実習生」や、就労が原則認められない「留学」の在留資格を持つ外国人が「特段の事情」によって入国するケースが増える傾向にあった。
ところが、全世界からの入国を緩和した昨年11月1日以降、政府は「特段の事情」による発表をやめ、「乗員」などの数も公表資料から消えた。「特段の事情」は入管当局の内部用語であり、法律的根拠はないためという説明だった。外国人入国者数や「特段の事情」の全貌を把握できなくなり、政府の情報公開は後退した印象だ。
入管当局は今年2月5日、公表形式を改め、月別入国者数の推移を昨年4月までさかのぼって公表し、1月には約5万5000人の外国人が入国していたことが分かったが、「特段の事情」による入国者数は集計されていない。また、空港検疫における外国人陽性者の国籍についても開示していない。

記事〆「入国規制をしていると言いながら、実際には多くの外国人が入国している現実を踏まえ、政府は国民に対して十分な説明責任を果たさなければならない。そしてこの機会に、その背後にある在留資格の構造問題にも正直に向き合い、是正を図るべきだ」という主張に、私も同意します。

■その他のニュース

■3月11日があった今週らしい記事を2本、最後に

もし身動きがとれない人がいたら、「今度は自分が助ける側になりたいです」。10年前、たくさんの人に助けてもらったように
気仙沼小では20年から、インド洋大津波の最大被災地で16万人の犠牲を出したインドネシア・アチェ州の小学校とインターネットを通じたリモート交流を始めた。地元中学生がインドネシアの食について調べる活動も行った。菅原さん(引用者注:インドネシアからの技能実習生を受け入れている土木工事業社の社長)は言う。
「子どもたちが『どうしたらイスラムの人が気仙沼で暮らしやすくなるでしょうか』と話している。すごいと思いませんか? 人口減少が続く中、こうした取り組みが交流人口を増やすことにつながると思います」

Thanos’ image from IMDb

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