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姉を亡くした遺族は14日間の隔離だけど五輪選手は即日練習可って線引きとか/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.4.25-21.5.1)

今週は興奮せざるをえないニュースがたくさんあって大変なんですが、たのむまだ俺が理性を保っている間に……映画の話をさせてくれ。『海辺の彼女たち』(2020)。サムネイルは公式サイトから。

思えば去年8月から公開を楽しみにするあまり(noteにも書いてた)

本編を見る前に十分以上の量のテキストを読んでしまい、これ結局配信に来るまで劇場まで足を運ばないパターンだろ俺。どうする俺、劇場公開されたぞ。

2020/8/4

2020/9/16

2020/11/26

2020/12/12

東京で公開されている映画館の所在地、東中野が住んでいるところからの距離が絶妙にアレで。あと感染症のリスクもね、無いことにはできないじゃん?
でも、そもそも技能実習生が直接的なクライアントになることは少ない*とはいえ、民間の日本語検定試験を提供している会社のサラリーマンとしては、業務上からも見ない選択肢はないのでは。
云々、気が向いたら行きます! 以上の現況ではないものの、公開即満席という朗報のお祝いの意味も兼ね、めぼしい映画紹介テキスト各種を置いておきます。ご査収ください。各記事のサムネイルを時系列に並べると、ヒロイン1ショットからヒロイン陣3ショットに訴求方法が変わりつつあることなどが分かって、面白いですね。

* 技能実習生に日本語能力を求める雇用主がほとんどいない、という意味でもあります。ただ、母国から送り出す前と日本入国後、2回、弊社の検定を実習生に受けさせ、成績の伸びをスコアで示し、日本語教育の証明にしている(エラい)監理団体もあるので、技能講習にかかわる人間全員悪。みたいな論調には与さない私です

■今週いちばん注目を集めたニュース

このうち「CT画像に白い影」って毎日新聞記事は独占スクープで、初報から会員限定公開という形でした。
なんだ有料かよ。って文句がどのぐらい可視化されるのかと思っていたら、おそろしいほどそんな声はあがらず、つまり誰も本文を読んでいないのである! というおなじみの感想を含みつつ、それでも本件関連で私がいちばんおお。って声が出たのは、4月30日(金)付、法務大臣閣議後記者会見でした。

全部のやりとりを引き写してもしょうがないので記者Qと大臣A、それぞれ関連しているところだけを抜きます。句読点、用語等も変更したので、原文からの異同有無は元資料のウェブサイトを照合ください。

【記者】大臣は一昨日の審議で遺族と会わない、遺族の求める説明も今はしない。遺族が見せてほしいと言っているビデオをまだ公開しないと回答されていらっしゃいました。なぜ遺族に会われないのか、まず直接お会いして施設内で亡くなったことへの責任者としての謝罪やお悔やみを伝えるのが必要ではないかという声が上がっていますがこの点についてお聞かせください。
【大臣】中間的な報告である現状におきまして、法務大臣として御遺族に直接お会いすることは必ずしも適切ではないと考えて、先般委員会で答弁をさせていただいたところでございます。
【記者】遺族の方たちは中間報告の資料が訳されたものを読んで1分1秒が記載されているこのビデオ、娘の最後の状況をまず私たちの目で見たいと言っております。これは調査の途中だからということは5人の外部の識者に見せている点からも考えると(引用者補足:ビデオは見せられない)言い訳にならないのでは。
【大臣】様々な情報につきましては御要望をしっかりとたまわりながら出入国在留管理庁において適切に対応していくものと承知をしております。
【記者】スリランカ人女性の件で、五輪選手は入国初日から練習ができ14日待機免除ということが言われておりまして、関係者も3日で出られると言われております。
しかし遺族はいち早く御遺体と対面したい旨を再三伝えておりますがこの14日待機が適用されると聞いております。いろいろな方々が即日対面させてあげてほしいと言っていますが入管庁側がこれを強く拒否していると聞いております。即日出てこられると現在改正案が審議に入っていますが、この審議に差し支えるため14日ルールを適用しているのではないかという批判も出ております。PCR検査をしっかり遺族の方々にやり、これが陰性ならば即日、御遺族がまず御遺体と対面できるよう取り計らうべきだと思うのですがこの点についてなぜ入管庁は拒否をしているのかお答えください。
【大臣】御遺族が来日される場合に法務省として行う支援ということでございますが、その時点の状況を踏まえまして適切に判断することとしたいと思っております。

最後のQAがさすが本邦、昨今のオリンピック重視ムーブと一貫している。と感心した(皮肉です)とはいえ、14日隔離にあわせるほうが正しかろうとは思うので、あいつらにズルを認めるならこっちにも。という主張にうっかり賛同しそうになる俺も落ち着いたほうがいいな、と思いました。

落ち着きついでに水をさすようなことを書くんですけど、ウィシュマさんの妹ふたりと、その片方の配偶者、計3人が来日したそうですが、彼らの来日にかかる費用などをカンパで集めるとのこと。
「亡くなられたウィシュマさんのため、また、本件の真相解明と責任の所在を明らかにするために必要な費用」って弁護団がウェサイトに記しているのですが……どういえばいいんですかね。
入管という組織が持つ欠陥ゆえに亡くなった、という話と、「だから入管法改正に反対します」という運動は切り離して考えるべきだと個人的には思うんです。14日隔離は不要、だって五輪選手は……って発想もそうですけど、不要不急の外出を控えろ。だが聖火リレーは問題ない。ってダブルスタンダードを笑えなくなるところまであと一息、みたいな感想がどうしても出てしまう。
法相が繰り返すことで空文化して久しい「適切に判断」ですが、果たして自分たちはできているか。その問いは続けなければ。

■こんなサイトがあるんだな、と今回知ったので紹介

そして今回だけではないことをあらためて理解しました。そのほかにも入管関連で紹介しておきたい記事2本をこちらに。

■ウィシュマさんと同じぐらいの重要度で語られるべきだと個人的に思うニュースがさらにあとふたつあるんですけど、その前にまとめて何本か。

読み応え十分だったので、またそのうち言及したいです(幸か不幸か-いや不幸だけど-ミャンマー情勢が落ち着くにはまだ時間がかかりそうで)。

信濃毎日新聞、この「五色のメビウス」って連載企画が終わったら有料会員やめようと思っているのがバレているのか、ぜんぜん終わらない。むしろ良い記事が次々出てくるんですけど!

ローカル記事扱いですが、ABC朝日放送の取材では「再度の就労を提案し、交渉している最中だった。法的な手続きを取られ、困惑している」。MBS毎日放送の取材では「新本さんが条項の意味を理解していると思っていた。申し立てに困惑している」と、なにしろ会社が困惑していることばかり伝わってきまして、出来れば有耶無耶にならないか。って思ってないよね?

静岡新聞が今年1月、ベトナム人同士のトラブルを伝えたときの博打の名称が「ソデ」、2月に同様の事件が三重で起きたときの伊勢新聞は「ロデ」。
はーん、おそらく現地語にいちばん近い読みが今回のソックディアで、ソデもロデも空耳アワー的なことか。と3ヵ月越しですっきり。

よくある「ちょっと良いニュース」扱いですけど、そういう記事でさえ

唐津は、日本で出会い結婚した妻の出身地という縁はあった。だが土地や資金はゼロからのスタート。地域の人に助けを求めても「外国人にゃ土地は貸せん」と断られたという。それでも地域に溶け込もうと唐津弁を学び、飲み会にも積極的に顔を出すなどして関係を深め、2年がかりで土地を貸してもらい、農業を始めた

「外国人にゃ」って本音が、そんな時代もあったねと。ってなると良いんだけどね。

■さて、今週あまり話頭にのぼらなかったニュース

恋愛禁止、妊娠なんかしたら強制帰国。と言い含められ来日している技能実習生たちですが、それでも子どもが出来てしまい、産まれてしまったときに相談できるひとが周囲にいない場合、「誰が」「何を」「どう」裁くんですか。「何の罪で?」という命題。

被告弁護団の

「本件で死体遺棄罪が成立してしまえば、妊娠した技能実習生は帰国させられる恐怖におびえて孤立出産を余儀なくされ、死体遺棄罪で逮捕される例が増える」

って談話は真っ当で、判決をおそるおそる待っています。
だって判例として影響残るじゃん。

■もうひとつ、最高裁で判決が出ていました

2019年の地裁判決直前に記事化された件の最終回答だと思うんですけど。

中学から部活動で吹奏楽に打ち込み、クラリネットを吹くのが一番の楽しみ。音楽家の道を思い描いたこともあったが、今、夢はない。在留資格がないからだ。「将来を考えるのが怖くて。もしやりたいことが見つかっても、明日があるかもわかれへんし」...夏休み中の8月、女子生徒は最後の公判で意見陳述に立った。涙声になるのを抑え、学校での生活、支えてくれた人への感謝を裁判官に伝えた。「ちゃんと勉強して、将来ちゃんと仕事について、誰にも迷惑をかけずに暮らしていきます。どうか在留を認めてください」
推薦入試を受けた大学からは10月末、合格通知が届いた。

大概のことは、まあしょうがない。って思えるぐらいには社畜としての厳しい鍛錬を重ねてきましたけど、親が不法入国でした/その罪は産まれてきた子も自動的に負わなければならないものだから、生まれてこの方いちども国外に出たことがないことだとか、日本語以外は分からないことだとか、これまでの生活実態は関係なく、国外退去ね。
ってこの話の、どこに納得ポイントを見出せばいいのか、私にはまったく分かりません。

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