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39 記憶の片隅から浮上した女性

次の探偵を依頼するまでの間。

都内の女の住所のことをぼんやりと考えていたときに、わたしは結婚当初に夫と親しげなLINEをしていた女性Zのことをふと思い出した。

ストーカー事件の後。わたしが望めばいつでも夫の携帯を見せてもらえる約束をして、しばらくは折に触れLINEなどを見せてもらったことがある。

結婚式から半年ほど経ったある時。見せてもらったLINEのひとつに目が止まった。会社の同期である女性Zとの仲睦まじいやりとりである。

「まだ仕事?」
「ううん、もう家」
「そっか、今日は会えないね」

こんなやりとりだった記憶だ。

女性Zとはわたしも何度か飲んだり、会社のイベントに参加したりと顔を合わせたことがある。連絡先も交換している。

「突然すみません、今日お時間あったら少しお会いできませんか?」わたしは夫に内緒でその女性Zを呼び出した。

夫とのLINEのやりとりを見たこと、過去に夫の不倫相手がストーカーになりブラックメールが届いたこと、それによって辛い思いをしたことなど。包み隠さず話した上で、わたしが疑ってしまうようなLINEはやめていただきたいと伝えた。

女性Zは「仲良くさせてもらっていることであなたにイヤな気持ちをさせて申し訳ない。男女の仲では決してない。もうそのようなやりとりはしない」と言ってくれた。

彼女の真摯な態度と言葉に、わたしはスッキリした気持ちで帰路についた。その後、女性Zとわたしは、たまに顔を合わせる先輩と後輩のような仲となった。

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