43 なかなか現れない二人
世の中はコロナが少しおさまり、夜の飲食店が再開してきた頃。夫とZは会社帰りに外食をしてから帰宅したようだった。
わたしが夫の「利用頻度の高い場所」から取ったデータはコロナの真っ只中。それが故にZ宅への入り時間が19:00〜20:00だったのだ。
昨日の誤差は外食によるもの。その誤差に翻弄され、なかなか現れない時間に肝を冷やした。
ただパターンは読めた。
次も「残業」の日に探偵に調査を依頼した。
予想どおり外食後、21:00すぎに仲良く二人で現れた。
ここまで来るとこちらの思うツボだ。
ただ外食している分、立ち寄り時間が短いことが懸念された。裁判に勝てる証拠として成立するだろうか。
相談員Kさんに連絡したところ「その頻度なら大丈夫。あと一回、立ち寄りでもいいから証拠を取れればもう確実だから」
優しいしゃがれ声は、経験から裏打ちされた確固たる説明でわたしを安心させてくれた。
あと一回。最後の調査となる依頼は日曜からのニ泊の出張を狙った。
同時にC子から貴重な情報があがってきた。行き先は不明だがZも日曜から二泊の出張へ行くという。
同じ出張先かどうかはこれだけでは断定できないが、遠方の出張先からは毎回早めに切り上げて、必ずZの家へ立ち寄ることをわたしは把握していた。
ただ出張から何時に帰宅するかまったく読めなかった。
そして調査の夜。
この日は21:00を過ぎてもなかなか現れない。探偵リーダーもわたしも気を揉んだ。我々には待つしか術がない。
そして22:00。
「二人で現れました。Zも大きなカバンを持っているのでふたりとも出張帰りは間違いなさそうです!」
探偵も待ち焦がれた登場に興奮の様子だった。