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44 呼吸をするように嘘をつく

この出張、ニ人が同じ目的地かどうかは憶測の範囲を越えていない。Zの行き先は別の出張先かもしれず真実は闇の中だった。

大きなカバンを持ったツーショットでの入り写真が抑えられたので、証拠としては充分だ。

たが、ひょんなことから同行した裏が取れたのだった。

わたしは携帯の盗み見にもようやく慣れ、手を震わせることなく夫のLINEの非表示リストをチェックできるようになっていた。

その中でたまたま久しぶりにやりとりをした女がいた。

内容を読むと相手は出張先の取引先の女だ。
取引先の女と個人のLINE交換をしていることも、そのやりとりを非表示にしていることも常識から外れているが、非常識の連続の中にいるわたしには気にもならない瑣末なことだ。

「明日はよろしくお願いします。弊社からは私とZが伺います」

LINEの内容から同じ飛行機に乗り、現地の空港からレンタカーで取引先まで一緒に向かったことが分かった。

呼吸をするようにウソをつく夫。

飛行機が見たいという子どもたちを連れて、空港まで送ったその日。道すがらわたしは同行者のことをそれとなく聞いていた。

「他部署(Zの部署)の部長もくるよ。去年、系列会社から来た人なんだ」

部長なんて来もしないのに嘘の同行者のことを長々と話していた。

嘘が分かるようになると、夫の口から出る8割が嘘だということが分かった。

ずいぶんと長い間、騙されてしまった。

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