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あれから7年。-スラムダンク-

 迷った。だってまだ希望を捨ててなかったから。見つかるかもしれないって思ってたから。でももう諦める。もう7年も経つんだもの。
そして決まった。私の買うべきもの。スラムダンク全巻。

 7年前、このマンションに越してきた。たくさんの荷物と共に。
わたしは本が好きだ。漫画も大好きだ。学生時代からバイトをして買い集めてきた大好きな漫画たちと共に生きている。その中でも一番好きなのはスラムダンクだ。一番大事にしてきた。全巻持っている。持っていた。

 引越し翌日、本棚に本を並べていた。
奥行きが広い本棚なので、あまり読まなくなった本や漫画は奥へ、お気に入りで何度も読む本や漫画は手前に置いた。スラムダンクは一番目に入る、1番取りやすい特等席にその場所を陣取る予定だった。
 数日かけて荷物を全部開梱した。ない。スラムダンクがない。あれ、わたしスラムダンク梱包したっけ・・・?
 実家の本棚を調べる。ない。心あたりの人たちメールを入れる。ない。おかしい。どこに行ったんだ。あんなに大事にしていたのに。そしてなぜ記憶にない。わたしの海馬は仕事してるのか。

「ま、いっか。そのうち出てくるだろう。」
そう思った私が甘かった。
スラムダンクは、もう私の手元にはない。
結局どこに行ったのかもわからない。
「内容覚えてるならもういいじゃん」と言う人もいた。
全然良くない。あれはわたしの宝物だ。

 漫画の本は大体発売日の前日には本屋に並ぶ。
いつも絶対その日に買いに行った。
新聞配達で稼いだお金を持って。飲食店でバイトしたお金を持って。
毎回表紙の絵が誰になるか楽しみにしていた。
23巻は震えた。立ち漕ぎをして帰った。
へそくりを隠したのも23巻だ。

「国民全員に一律10万円を支給します。」

 ほぼ全巻が第1刷発行だったわたしのスラムダンクは今年、114刷になってわたしの元に戻ってきた。

安倍さんありがとう。
そしておかえり、わたしのスラムダンク。

おわり。

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