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大腸の内視鏡検査を受けてきた。

胃腸は強かったはずなのに、そしてどちらかと言うと便秘体質なのに、
数年前から突然の腹痛からの下痢って流れを経験し始めた。
子宮筋腫が見つかった時期と被ってたのもあって、子宮筋腫のせいっていうことにして放置した。

大便をしたら血が混ざった。
鮮血だったから痔ってことにして放置した。
だって便秘気味の人の肛門が切れるのって普通のことでしょ?

水が好きで、ガブガブ飲んでいた。
ある日それをやったら激しい腹痛と下痢に襲われた。
水道局に電話しようかと思ったけど夫に止められた。

健康診断の時に大腸も調べてもらうことにした。
その方法が検便と聞かされて、絶対に再検査になると思った。

*   *   *

検便に引っかかった。
「内視鏡やってもらいまーす。どこの病院がいい?」
かかりつけ医が言う。
「麻酔をしてくれるところ!!」
「僕も内視鏡やることあるけどねー、意識ある方がいいんだよ、痛いっていうのが分かる方がー、、、云々。」
「・・・ふーん。」

候補の病院を2つピックアップしてもらって、自分で電話した。
「麻酔はしてもらえますか?日帰り検査は可能ですか?」
A病院は麻酔なし、日帰りは先生と相談
B病院は麻酔可、日帰り可
だった。

「B病院にします。」
「麻酔してくれるって?じゃあ紹介状にも麻酔希望って書いとくね。」
「4649!」

*   *   *

「あー○○クリニックからの紹介のキシリさんですねー」
「はい」
「あー健康診断でね、あー麻酔希望ね?はいできますよー」
「あ、でも睡眠導入剤処方されてるから効きにくいかもしれないよ。麻酔って言っても点滴で眠くなるお薬入れるだけだからねー、睡眠導入剤飲んでる人は、完全に寝てる間に終わるって言うのは難しいよー」
「わかりました、それでもいいです。」


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                   画像引用:Amazon.co.jp

「じゃあ前日の食事は売店で買ってもらって、前日は夜8時から絶食で、あ、飲み物はいいよ、水とかお茶ね、下剤を処方するから薬局で受け取って、処方通り飲んでね。前日に食べていいものはコレね、売店でセット売ってるからそれ買って帰ってねー」
「わたしアレルギーあるんですけど、それ食べられますか?」
「えーと、アレルギーは書いてないね、もしあれだったら売店で成分表示見せてもらって、もしあれだったら自分でおかゆ作って食べてもらってもいいけど」
「じゃあそうします」
前日に食べても良い食材リストをもらって、検査日を決めて、2種類の下剤を受け取った。

薬局でふと、あの悶え苦しむ下痢の痛みを思い出して、
「この下剤って、夜中に便意で目覚めたりしますか?」
と薬剤師に質問してみた。
「個人差がありますけど、翌朝の便を出しやすくするお薬なのでそういうことはないと思います。」
あーよかった。

検査日前日は、炊飯器でおかゆを炊いて、おかずに少し豆腐を食べるだけにした。豆腐は木綿が好きだけど念のため絹ごしにした。我ながら素晴らしい気遣いだと思った。

ちょうど8時にお風呂に入っていたので、8時の下剤は8時半に飲んだ。
スポーツドリンクの原液みたいな味だった。
苦にならない人もいると思うけど、私にとってはゲロマズだった。
たった250mlだったけど、飲み干すのに1時間もかかった。

10時になった。
コップ一杯の水に溶かして飲んでくださいっていう下剤を飲んだ。
無味無臭だった。素晴らしい。これならどれだけでも飲めるぞ。

11時半に布団に入った。
でも不安で眠れなかった。
だって体の中にカメラ入れられるとか常人の所業とは思えないし、ずっと「バリウム飲むくらいなら死んだほうがマシ」という思考で生きてきたレベルで体内に異物を入れる検査とか大嫌いだし、食べたいもの食べられないし、明日は1人で通い慣れない病院に行かなきゃいけないし、もしこれから毎年検査しましょうとか言われたらどうしようとか、大腸がんだったら死ねるかなーとか、でも好きなもの食べられないで死ぬのやだなーとか、いろんなことを考えた結果、夫を自分の部屋に呼び出して眠くなるまで喋り倒して、そして1時に寝落ちした。

*   *   *

お腹が痛くて目覚める。
トイレに行く。
ベッドに戻る。
ー2分後ー
お腹が痛くて目覚める。
トイレに行く。
ベッドに戻る。
ー2分後ー
以下繰り返し。

もうだめだ。これはもう再び睡眠に入ろうというのは無理な挑戦だ。
電気をつける。
時計を見る。

3 時。

は???????????
あの薬剤師翌朝のお通じを良くするって言ったよね!!??
夜中に腹痛で目覚めるなんて聞いてねぇぇぇぇぇ!!!

結局2時間睡眠で、8時半に病院へ。
「ここに来るまで何回トイレ行きましたか?」
「10回以上行きました。」
「・・・眠れなかったですね・・・。」
「はい!」

これは個人差なのか。これは個人差というレベルなのか。

*   *   *

ここの病院の大腸内視鏡検査は1日10人で行うらしい。
てっきり大部屋のベッドでも用意されるんだと思い込んで行ってみたら、普通に待合室で1リットルの下剤を飲むという修行が待ち構えていた。コップに注いだ200mlの下剤を15分かけて飲め、それを繰り返して1リットル分飲め、そして便が透明になったらチェックするから見せろ、透明になってなかったら追加で飲ませるからな、と指示を受けて一口。
まっず!
まっず!
まっず!
これ昨日のスポーツドリンク原液をちょっと薄めただけやん!味濃すぎやん!こんなんゴクゴク飲めない!

・・・まぁ15分だしな、慌てて飲むことないよな、どうせ検査午後からだし、と自分をなだめながらゆっくりちまちま飲んでいると、なんと目の前に座っている人が30分で1リットルを飲み干した!
ナンダコレハ!
ゆっくり飲まないといけないんじゃないのか!
他の人も競うように飲み始める!
ナンダコレハ!ナンノ競技ダ!
わたしはまだ500mlも飲めてないのに続々とノルマ達成者が現れる!

「もう透明になったぁ?私合格だったわー!」という意味不明なマウント合戦が始まる。こういう場所で初対面の人と以前から友達だったかのように話ができるってすごいスキルだと思う。自分の年齢を顧みると「あのババアどもが」と揶揄することはもう叶わないけど、男性や若い子が彼女たちの会話に加わらないところを見ると、わたしも一応まだこっち側ってことでいいのかしら。

「私今回で3回目よ!」
「私なんか半年前にもやったのよ!」
「うちの嫁ガー!」
「便の色何色だった?私は黄色!」
「完全に透明にはならないのよ!」

ヨーイドンで下剤を飲み始めてから2時間が経過した。
便のチェックをしてもらってないのは私だけだった。
「キシリさん、まだですか?」
看護師が急かす。全員の視線を感じる。

ワタシ ヒッシ デ ノンデ マth。

「ていうか検査午後からなのにそんなに早く飲み干す必要ある?」と言いたいのを我慢する。ここは逆らってはいけない。内科医ならまだしも、内視鏡を体内に入れる現場に立ち会うかもしれない人に歯向かってはいけない。歯医者然り、人質はわたしの体なのだから。

吐きそうになりながら下剤を飲み干して、トイレチェックをしてもらう。
やや不満そうだったが「下剤全部飲んだんですよね?ちゃんと水も500ml以上飲んでくださいね!はいいいです!」と合格をいただく。
その後「あの看護師の検査室は嫌だあの看護師の検査室は嫌だ」という念を送り続けたのは言うまでもない。

午後1時をすぎた頃、最初の患者の名前が呼ばれた。
30分で1リットルを飲み干した、あの人だ。
「わぁ!すごい!」「一番だったね!」と歓声が上がる。
何この世界線。

*   *   *

結局わたしは最後だった。時計は3時半を指している。
「やっぱりそんなに急いで飲む必要なかったじゃん。
 つかわたし午後から来ても良かったじゃん。」
少しの怒りが腹痛にかき消される。
もちろんもう水しか出ないけど、トイレに駆け込む。
だって検査中にピューとか出ちゃったら恥ずかしいし。

「キシリさーん」
やった!狙ってた看護師さんに呼ばれた!一番優しそうな人!
わたしの祈りは通じた!お尻の神様ありがとう!
「先に点滴しますねー」
人生で一番上手な看護師さんだった。お尻の神様ありがとう!

*   *   *

その昔、手術室に入った時も怖くてドキドキしたけど、検査室でもあんなにドキドキするんだね。検査用の青いシーツがかけられたベッドに横になった瞬間、複数の看護師さんに囲まれてあれよあれよと言う間に心電図を付けられ血圧を測られ、次の瞬間先生が横に立って「よろしくお願いしますね」って言われた時は、大口のお客さんの仕事をミスった時のように怯えてたと思う。多分。

姪っ子に「今度わたし、お尻の穴からカメラ入れるんだよ」って言ったら、激しく顔を歪めて「やや!!」って言ってたけど本当にそうだよ。嫌すぎるよ。そして怖すぎるよ。

事前の説明通り、眠り薬はわたしにはあまり効果を発揮しなかった。
薬を入れられて数秒落ちただけだった。
それでも内視鏡を挿入される瞬間を記憶していないのは大きい。
意識が戻ってからは画面をガン見して、感想を言っていた。
「あっ!あった!」
「でか!」
「これ便と一緒に出るんですか?」
「後で先生から説明がありますからね」
看護師さんにたしなめられた。

ポリープを切っている時、先生が「痛くないですか?」と聞いてくれた。
「お腹がちょっとだけ痛いです。肛門は痛いです。」と答えた。
ちょっと笑われた気がする。
激痛ってわけじゃないけど、肛門をいじくりまわされてる感覚。
不快でしかない。けど浣腸よりはマシか。

画面に映っていた時に想像したよりもずっと小さなポリープを取り出して、ちまい子たちはクリップ?で止めて、無事に検査が終わった。
あの大きいポリープは、グーグル先生の画像検索によると陽性に見えたけれど、こっちの先生は「生検の結果はまだ出てないですけど多分陰性だと思います」と言った。結果は来週。また来週。

2度と受けたくない大腸内視鏡検査。
わたしこれからうんちのために生きるわ。

おわり。

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