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5年『かぜのでんわ』【よりよく生きる喜び】の指導案はこうする!

こんにちは。
今日は『5年「かぜのでんわ」【よりよく生きる喜び】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。

「よりよく生きる喜び」
この内容項目は難しいんですよね~。
5・6年(高学年)にしかない内容で、
教材も1つか2つしかない。

授業をした後で、
「結局、なんだったの?」と
手ごたえなしで終わることが多いですよね。

今日はこの難しい内容項目を解説します!

では、解説です!

1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ

順番に解説します。

1 教材について

D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること
【よりよく生きる喜び】
5・6年の目標・・・よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し、人間として生きる喜びを感じること

5年生「かぜのでんわ」(日本文教出版)

あらすじ

山の上に一台の電話が置いてありました。
先はつながっていませんが、いつもピカピカに磨かれています。
この電話は、『もう会えなくなった人に自分の思いを届けることができる』と言われています。

・おにいちゃんに「会いたい」と伝えるたぬき。
・子どもに子守唄を歌ううさぎのおかあさん。
・奥さんに「ありがとう」を言いにきたきつねのお父さん。
・神様に、生きることと死ぬことの意味を尋ねるねこ。

ある日、くまのおじいさんが電話の鳴っている音で目を覚ましました。
実は、山の上の電話はくまのおじいさんが毎日ピカピカにみがいているのでした。

線のつながっていないなるはずのない電話。
くまのおじいさんが受話器をとると、雪がやみ、数え切れないほどの星が輝き始めました。

「でんわ ありがとう・・・
 でんわ ありがとう・・・・」と言っているようでした。

おじいさんは叫びました。
「届いたんだ! みんなの思いが届いたんだ!」

2 内容項目と教材

「よりよく生きる喜び」という内容項目は、新学習指導要領になって初めて加えられました。
つまり、それほど実践が世の中にありません。
授業づくりに困っている先生は実は多いのではないでしょうか。

内容項目の目標をもう1度確認してみます。
①よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し、
②人間として生きる喜びを感じること

①では、偉人や人として模範となる人について考えること、と言っています。
何について考えるのか。

それは強さと気高さです。

これは、どちらも心のことを指します。
心の強さとは、人によって定義が異なることでしょう。
つらいことにも負けない精神的な強さ。
優しさを発揮することで第三者に伝わる強さ。
いずれにしても、心の強さは人から教え込まれるのではなく、子どもが自分で気づくことが大切です。

気高さも同じです。
気高いと聞いて思い浮かぶ人物は誰ですか?
私は、
ドラゴンボールのベジータ
ピッコロ
ワンピースのゾロ
などが思い浮かびます。

自らの考えを大切にし、決して他人には強制をしないが、
自分自身には徹底して厳しく在り続ける。
そんなところでしょうか。
「プライドと誇りを兼ね備えている」と言ってもでしょう。

ベジータ、ピッコロ、ゾロなどは極端な例ですが、
誰しも心の強さと気高さをもっています。
そのような、人が本来もっている心の本質について、
教材で出てくる人を扱いながら、自分の心にも似たものがある、
と気づくことが、この内容項目では大切なのです。

それが、②人間として生きる喜びを感じることにつながります。
困難にぶつかっても、人の助けや得意なことがあって、再び頑張ろうと思えることがあります。
自分で見つけた道を突き進むと、つらいこともありますが、やってよかったと思えることも多いです。

「成長したい」という気持ちは、人間が本来もっているものです。
その成長欲を満たしたとき、人は「生きててよかった」と思えるのです。

これは、欲しいものを手に入れたとか、
好きなものを食べることができた、
という短期的で一時的なものではありません。

長い時間をかけて、努力が実り、
成長が成就したと感じられるほどの
努力を注ぎ込んだときに、
「生きててよかった」と思えるのです。

おいしいものを食べたときに
「生きててよかった」とおいしさを表現するシーンがありますが、
あれはただの誇張表現です。
道徳的に考えると、本質とは異なります。

と、「よりよく生きる喜び」だけでもこれだけ説明が長くなります。

結局、どうやったらいいの?
はい、前置きが長くなりました。

結論を言います。
教科書の偉人について「〇〇さんはすごいなあ。」と
自分とは別次元という感想をもたないような授業を心がけましょう。

また、「生きる喜び」は人それぞれちがう、ということも押さえましょう。

Aさんがこれに心を打たれるから、BさんもCさんも同じようにそれを生きがいにする、という話ではないのです。

生きがいを見つけるのではなく、
「生きがい」があると、生きててよかったと心から思える。

そんな心の動きを議論できるようにしましょう。

偉人だろうと、有名人だろうと、同じ人間です。
成長したい欲もあるし、挑戦するときの恐怖もあります。
教材ではよい部分だけをピックアップして描かれていますが、
書かれていない裏を発問で突いて、考える機会を設けることが、
内容項目に迫ることにつながります。

では、教材を見てみます。

「かぜのでんわ」は偉人は出てきません。

ということは、①ではなく②に重点を置いて考えればよいということです。

②人間として生きる喜びを感じること

これに絞ると、なんとなく教材の突破口が開けそうです。

この山の上にある電話は、線はつながっていません。
しかし、森の動物達はひっきりなしに押し寄せます。

なぜでしょうか。

「もう会えなくなった人に思いを伝えられるから」です。

では、なぜ会えないのに電話をするのでしょうか。

「もう会えない」ということは、ほとんどの場合が『死別』です。
亡くなってしまってもう会えない。
残された人は、自分の力で生きていかないといけない。

でも亡くなった人は、残された人にとって、とても大事な人だった。
そんな大切な人と、唯一つながれるものが、この電話なのです。

もしかすると、動物たちは電話の線がつながっていないことを知っていたのかもしれません。

でも、電話に話せば『思いが届く』と信じることが、残された人にとっての、
亡くなった人とのつながる希望なのです。

人は、希望がなくなったとき、人生という道を進む力を失います。

この電話を持って話す動物たちは、「また会えるかもしれない」「思いが届くかもしれない」という希望をもち、
電話で言葉にすることで気持ちを整理して、明日の生活への活力へとつなげていくのです。

ファンタジーの教材なので、最後は思いが星になって降り注いできます。
それは「思いが届いた」「希望は捨てなくていい」という作者のメッセージのようにわたしは感じます。

人生は、「夢は叶う」「希望を捨てるな」というような甘いものではないでしょう。

でも、間違いなく言えることは、「希望をもてば、今日という日を充実して生きることができる」のです。

それが、生きる喜びなのです。

この山の上の電話は、身近なもので置き換えるとなんでしょうか?
『もう会えない人へのメッセージ』は、身近なもので置き換えるとなんでしょうか。
くまのおじいさんは、人にとってどんな存在の人と言えるのでしょうか。

この教材は、かなり哲学的な教材になります。

でも、5年生の学習の集大成だからこそ、十分耐えうる立派な教材です。

日本文教出版は、とっても粋なことをします。

1番目の教材で「のび太に学ぼう」、そして最後の35番目の教材で「かぜのでんわ」
いずれも内容項目は『よりよく生きる喜び』です。

『よりよく生きる喜び』で始まって、
『よりよく生きる喜び』で終わる。

道徳の入り口と出口を『よりよく生きる喜び』で引き締めることで、
一年間の道徳の学習が実りあるものになるような配列になっています。

今回の「かぜのでんわ」は、『生きる喜び』を希望にスポットを当てて考えることを軸にすればいいですが、
1年間道徳を学習してきた子どもたちは、もっと広い視点で考えるでしょう。

それはもう、教師の想像を遥かに超える思考の幅になっているはずです。

それは子どもたちの思考が自走し始めた証拠です。

4月から待つ最高学年へのステップとして、
一年間の道徳の学習の集大成として、
子どもにハンドルを握らせるような道徳をしてみてください。

きっと、授業者も子どもも「楽しい!」と思える、
そして感動的な「かぜのでんわ」の授業ができるはずですよ!

3 導入

T:教師 C:子ども

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