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6年「スポーツの力」【よりよく生きる喜び】の指導案はこうする

こんにちは。
今日は道徳 D「よりよく生きる喜び」についての解説です。
「よりよく生きる喜び」
この内容項目は難しいんですよね~。
5・6年(高学年)にしかない内容で、
教材も1つか2つしかない。

授業をした後で、
「結局、なんだったの?」と
手ごたえなしで終わることが多いですよね。

今日は、「スポーツの力」という教材をもとにして、
この難しい内容項目を解説します!

目次です。

1 教材概要
2 教材と内容項目
3 発問
4 まとめ



1 教材

・6年生「スポーツの力」(日本文教出版)

・D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること
・【よりよく生きる喜び】
・5・6年の目標・・・よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し、人間として生きる喜びを感じること
・「スポーツの力」概要

パラリンピック選手の佐藤真海さん。彼女は、20歳の時に病気が原因で足を切断します。
絶望の中、出会ったのはスポーツでした。水泳、陸上と取り組むうちに自信を取り戻し、
アテネパラリンピックに出場をするほど活躍をします。
しかし、2度目の悲劇が起こります。故郷の宮城県が、東日本大震災で被災しました。
佐藤さんは、スポーツの力で地元を励ます活動、
それと同時に障がい者スポーツへの理解と支援を広げる活動にとりくみ続けています。

2 教材と内容項目

・「よりよく生きる喜び」という内容項目は、
新学習指導要領になって初めて加えられました。
つまり、それほど実践が世にはありません。
授業づくりに困っている先生は多いのではないでしょうか。

・内容項目の目標をもう1度確認してみます。
①よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し、
②人間として生きる喜びを感じること

①では、偉人や人として模範となる人について考えること、と言っています。
何について考えるのか。強さと気高さです。

・これは、どちらも心のことを指します。
心の強さとは、人によって定義が異なることでしょう。
つらいことにも負けない精神的な強さ。
優しさを発揮することで第三者に伝わる強さ。
いずれにしても、心の強さは人から教え込まれるのではなく、
子どもが自分で気づくことが大切です。

・気高さも同じです。
気高い、というと浮かぶ人物は誰ですか?
私は、ドラゴンボールのベジータ、ピッコロ、
ワンピースのゾロ、などが思い浮かびます。
自らの考えを大切にし、決して他人には強制をしないが、
自分自身には徹底して厳しく在り続ける。
そんなところでしょうか。
「プライドと誇りを兼ね備えている」と言ってもでしょう。

・ベジータ、ピッコロ、ゾロなどは極端な例ですが、
誰しも心の強さと気高さをもっています。
そのような、人が本来もっている心の本質について、
教材で出てくる人を扱いながら、
自分の心にも似たものがある、と気づくことが、
この内容項目では大切なのです。

・それが、②人間として生きる喜びを感じること
につながります。
困難にぶつかっても、
人の助けや得意なことがあって、
再び頑張ろうと思えることがあります。
自分で見つけた道を突き進むと、
つらいこともありますが、
やってよかったと思えることも多いです。

・「成長したい」という気持ちは、
人間が本来もっているものです。
その成長欲を満たしたとき、
人は「生きててよかった」と思えるのです。

・これは、欲しいものを手に入れたとか、
好きなものを食べることができた、という
短期的で一時的なものではありません。

長い時間をかけて、努力が実り、
成長が成就したと感じられるほどの
努力を注ぎ込んだときに、
「生きててよかった」と思えるのです。

おいしいものを食べたときに
「生きててよかった」とおいしさを表現するシーンがありますが、
あれはただの誇張表現です。
道徳的に考えると、本質とは異なります。


・と、「よりよく生きる喜び」だけでもこれだけ説明が長くなります。

結局、どうやったらいいの?
はい、前置きが長くなりました。

結論を言います。
教科書の偉人について「〇〇さんはすごいなあ。」と
自分とは別次元という感想をもたないような授業を心がけましょう。

・偉人だろうと、有名人だろうと、
同じ人間です。
成長したい欲もあるし、
挑戦するときの恐怖もあります。
教材ではよい部分だけをピックアップして描かれていますが、
書かれていない裏を発問で突いて、
考える機会を設けることが、
内容項目に迫ることにつながります。


・では、教材を見てみましょう。
パラリンピック選手の佐藤さんが、スポーツを通して勇気づけられ、挑戦を続ける。
よい部分だけを切り取って考えたくなるように書かれています。

・佐藤さんは、つらい時にスポーツがありました。
でも、スポーツに出会ったときに、
「これだ!」と運命の出会い的なものがあったわけではありません。
佐藤さんとスポーツをつなげたものはなんでしょうか。
これ、1つの発問になりそうですね。
私は、佐藤さんの「挑戦する心」だと思います。
足を失っても、下を見て挑戦しなければ、
スポーツの力を感じることはなかった。
佐藤さんが挑戦したから、スポーツによって力をもらったのです。

では、なぜ佐藤さんはスポーツに挑戦したのでしょうか?
これも1つの発問になりそうですね。
「無理だと思っていたけど、そんなことはなかった。」と
本文に記述があるので、ここを読んで答えてくる子がいることでしょう。
しかし、それは答えになっていません。
教科書を読んで答える子には、こう問い返しましょう。
「なるほど。では、無理だと思ったのになぜ挑戦したのだろう?」
これは、教科書には書いていません。
教科書に書かれていないことを聞かれたとき、
初めて本物の思考が生まれます。

・佐藤さんは、足を失ってふさぎこんでいる自分が嫌で、
それを抜け出したいと思って何かに挑戦したかったのだと思います。
スポーツがあるから、挑戦したのではなく、
挑戦したくて、そこにスポーツとの出会いがあったのです。
『スポーツの力』という題なので、スポーツありきで考えてしまいますが、
まずは、佐藤さんの心の奥を考えることが大切です。

・さらに、この話は2段階で展開されています。
①佐藤さんは足を失ったが、スポーツの力で自らを奮い立たせた。
②震災で被害を受けた人を、スポーツの力で励ました。
それぞれ、思いの向かう先が違います。
①は佐藤さんの自分自身。
②は佐藤さんから被災地の人へ。

では、なぜ②人を励ますほどに元気になれたのでしょうか?
スポーツの力があったからです。
人を励ますほどに元気になった佐藤さん。
その元気の源はスポーツです。

ここで「スポーツの力で元気になった佐藤さんはすごい」で終わっては、
意味がありません。
さらに、「あなたにとっての、元気の源はなに?」と聞いても、
子どもはすぐには答えられないです。
考えたこともないのですから。

ここで考えたいのは、佐藤さんの心の強さ、そして佐藤さんの信念です。
教科書にはほとんど記述がありません。
佐藤さんはなぜ、こんなに心が強いのだろう?
佐藤さんの座右の銘があるとしたら、なんだろう?
これらの発問で、
佐藤さんの心にフォーカスを当てて、考えていくのです。

・日本文教出版は、6年生の最初の教材として、
この「よりよく生きる喜び」をもってきています。
難しい内容項目をあえて1つめの教材にするからこそ、
これからの時代に必要な力はこれ!と、
重点であることのメッセージを送っているのです。
(オリンピックイヤーだからということもあるでしょうが・・・)

・教材の内容だけでなく配置も、教科書会社のメッセージがたくさん詰まっています。
なぜ、この時期にこの教材を扱うのか。
なぜ、この内容項目の後にこの内容項目なのか。
この順番を考えてみると、また見え方が広がるかもしれません。
(今年は休校があったので、年間計画とはかなりずれた学習の進度になるでしょうが・・・・)

3 発問

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