『甦るフレーブニコフ』音読記録その11

〈 2092字 〉

『甦るフレーブニコフ』音読記録 は、
2020年末〜2021年初めにzoomで音読した毎回の感想を改めて書き出したものです。

著者の亀山郁夫先生のzoom講義(2022年12月4日(日)10時から12時、ヒッポファミリークラブ主催)がありますので、これを機会に、と思いアップしています。

12月4日までにアップし終わるように、毎日、4日分程度アップしていこうと思います。

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2020年12月23日(水)  第17章 ネヴァ川の十月
「地球のヴェリミール化」
(355〜366ページ)

詩人のようなアーティストたちの内側では、革命家たち(や、民衆?)が起こしている革命と、もちろん同時進行しながら、想像力の革命とでもいようようなことが、やはり爆発的に起きていたのだなと思いました。

このロシア的?スラヴ的?祝祭的?熱狂。
それが乗り移ってる文を読むのが、なんか、ノリノリです。
以下、長文の引用。

〈フレーブニコフがペトロフスキーと共同で書きあげた宣言文の内容はまさにファンタスティックの一語に尽きる。「すべての創造者、すなわち詩人、画家、発明家は国籍、国家、通常の法の外にあることを宣言されねばならない。(中略)すべての国家へ共和国の枠を出て自由に出入りする権利が与えられねばならない。詩人はさまよい、歌わねばならないからだ」。1917年の二つの革命による興奮と期待がどのような回路でむすばれていたのかを説明しつくすことはむずかしい。しかし詩人の想像力のなかに花開いていた幻想が、現実に進行する革命とはまったく異質かつ異次元の革命の理想、いやある意味でもっとも本質的な革命の理想を謳うものであったことは疑う余地がない。〉

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世界と一体化するイメージが、壮大すぎて空恐ろしかったですね。ゴヤの巨人の絵よりもっと大きい巨人を思いました。しかもそれが「詩人」である、ということ。そんな詩人なんて思ったこともなかったです。(2022年11月19日付記。)


2020年12月24日(木) 第18章 一冊の書物
「スキタイ主義」
(367〜376ページ)

音読していると、熱狂に包まれる感じでとても面白いのですが、何を書いたらいいのか意外に思い浮かばないです。

市街戦、夜は砲声のとどろくモスクワにあって、街路を彷徨うフレーブニコフには

〈夢遊病者のように〉
〈恐怖感というものがまったく欠落していた〉

という同行していた作曲家ルリエーの証言が印象に残りました。
この部分の題になっている「スキタイ主義」ないし「スキタイ」は、なかなか山崎にはまだよくわからない感じでした。アジア西部の大昔の騎馬民族。

2020年12月26日(土) 第18章 一冊の書物
「書物とアジア」
(376〜383ページ)

(「本」って言わずに)「書物」って言われるものについて、たくさん書かれていました。「本」が「書物」って言われる時、高踏的に感じます。微妙に嫌な気持ちになります。
(「高踏的」なんていうことばもちょっと使ってみました。)

でも「本」っていう方がよっぽど抽象度が高くて高度な感じなのに、
「書物」っていうただ「かいたもの」っていう呼び方の方を、高踏的って感じるのはなんでなんでしょうかね。

山崎は手製本っていう仕事柄、ずっと、内容であるストーリーやらなにやらではなく「本」あるいは「書物」そのものについて考えてきました。

なので、今日のところは、急に知ってる話が出てきた、みたいな感じでした。
書物至上主義みたいのに囚われた欧州ことにキリスト教世界、というイメージは、わかる気がします。

その権化であるような、革で作った素晴らしい装飾の本、というのを知り、技法も知ったけれども、そこからやっぱりのがれていくような方向へ進むというふうになっている自分と、フレーブニコフを少し重ねて、感じました。

2020年12月27日(日) 第18章 一冊の書物
「世界という書物」
(383〜390ページ)

〈その創造者の名前がフレーブニコフという「空色の」固有名詞によって明らかにされている以上〉
の、「空色の」とは、どういう意味なのでしょうか。

章末は、ライプニッツのことがでてきました。

〈ライプニッツは(中略)一切の理性的真理を数学的演算の方法に還元する学問の体系を編みだそうとした。「普遍数学」、「普遍的記号法」とも呼ばれるこの方法こそ、詩人がその生涯の大半を費やした「時間の法則」の方法上の端緒をなしたものではなかったかと思われる。〉

という記述がありました。
「方法上の端緒」はそうだったものが、発展して、

〈「時間の法則」とは(中略)、固定された世界秩序を、新たな「四次元」空間へと組みかえ、人類全体の生の変革をめざすものであった〉

と、この章は終わりました。

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ヴェリミールの「ミール」は世界を意味するミールなのかな。フレーブニコフという姓名の方にも「空」とかそういう含意があるのでしょうか?だとするなら、自分が世界だという誇大妄想狂的な詩人にふさわしすぎる名前ですよね。(2022年11月19日付記)

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