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公立病院改革3〈2006年〉東北170床 公立F病院(6)

この日のコンサルを仕切ったJ准教授は、自称「フィールドワークタイプの学者」である。
つまり現場重視型で、確かに学者然とはしておらず、太くてよく通る声をしていた。

そして、義理人情に篤い雰囲気を、出している人だった。
しかしすぐ後に、それは「雰囲気が出ている」だけで、特に義理に篤いわけでないと、身をもって知ることになる。
だがそれも後年になり、出世や学位を目指す学者というのはそういうものだと、得心するようになった。
また、全員ではないにしても、いわゆる学者にそういう人は多いという心構えは、その後の仕事上、とても役立った。

それでもJ准教授のその、実際のフィールドワーク、現場における実力は確かなものがあり、修業期に彼に出逢えたことは様々な面で学びが深かった。

この日は、職員向けの「ワークショップ」を行った。
今回行われたワークショップの手法は、次のような流れである。

1 いま病院に起こっていることと、これからすべきことを職員全体に説明する。


J教授の太い声は、マイクなしでも本当によく通った。


2 職員は5,6人ずつのグループに分かれ、強み、弱み、課題など病院運営のポイントを抽出する。


 とても単純なプロセスだが、大人の職員たちが、結構嬉々として課題や強み・弱みをピックアップしていく、その様子に結構驚いた。


3 その抽出された課題等を、各グループリーダーが発表する。


付箋に意見を記して、まとめて貼るだけ。こんなことで、院内SWOTがある程度可視化されていく。


4 各グループの発表を整理し、経営改善に向けた各現場、各職員の課題を可視化する。


この作業プロセスで、何よりも印象的だったのは、職員の皆さんが生き生きとワークショップに参加されていることだった。


一連の手法はシンプルで簡便だが、たった一日のワークショップで、病院のおかれている状況、それに対する職員たちの認識、内部の人間関係など、様々な実態が浮き上がってきた。

以前、KM病院で何日もかけて数百人の職員と面談して、得てきた所見・実感と同じようなものを、短時間で得ることができた。
非常に有効な手法で、その後私自身も、他の病院で実践するようになった。


今回のワークショップ実施によって、当事務所が請け負ったコンサル業務の大半について、「誰と、何を、どこまで進めるか」という様子が分かるようになった。

次の課題は、地域医療の「診療圏分析」である。


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