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公立病院改革3〈2006年〉東北170床 公立F病院(3)

公立F病院の仕事で初訪問したのは、2月の下旬頃だったと思う。
仕事は1年超のタームでの契約だったと思うが、まず最初の業務は
「地方公営企業法の全部適用に関するアドバイザリー業務」
だった。

この辺りのことを、少し説明してみる。

地方公共団体は、市民から徴収した税金や国から交付を受ける地方交付税などを、主な財源として活動している。
そして稼得が予想される歳入額で予算編成して、編成した予算通りにキッチリ使い込むという、財政運営を行う。

一方で、地方公共団体が運営する「地方公営企業」と呼ばれる団体は、税金や交付税以外に独自の「収入」が入る事業を行う。
企業とはいっても地方公共団体が作る企業であって、あくまで公共体の一部であり、中で働く人は基本的には地方公務員である。
地方公営企業は、その収入の範囲で(できるだけ)運営することを求められており、民間企業に近い複式簿記による記帳と財務諸表の作成が義務付けられている。


そういう意味で、企業的に「企業性を発揮」することを求められているから、企業という名称が付けられている感じの話である。
その企業は、主には次のような事業を行うものが含まれる。

水道事業、工業用水道事業、交通事業、電気事業、ガス事業、港湾整備事業、病院事業・・・

そう、病院事業も地方公営企業の一つに数えられている。
税金とは別に、利用者から料金を収受して存続する自治体事業が、地方公営企業に該当する。

ところで、地方公営企業は「地方公営企業法」という法律が適用される。
地方公営企業法は、「組織」「財務」・・・その他いくつもの項目で構成されているが、実は病院事業については、この法律の「財務規程だけ」が適用されている場合が多い。
このように、法の中の一部(財務規程)だけを適用している状況を、俗称で一部適用と呼ぶ。

法の全部を適用している場合は、その公営企業は「事業管理者」を設置し、独立的な地方公営企業として組織編成し、予算を組み、財務運用していく。
つまり、地方公営企業法を全部適用している公営企業は、地方公共団体とは独立的な枠組みを構成することになる(感じになる)。

一方、一部適用の場合は財務規程だけを分離運用するが、管理者は知事や市長などが兼任し、組織は依然として地方公共団体の一部分であり、企業側に予算編成権や人事権はない。
この一部適用の状態では、すべての決定が議会承認を待つこととなり、動きの速い医療情勢に即した予算編成、人材採用などをすることができない。

この一部適用の状態にある条例(規約)を、地方公営企業法の全部を適用させるように変更して、知事・市長などと別に病院長(など)が「事業管理者」となって予算・人事を企業側で決められるようにすることで、経営改革を行おうとする手続が、いわゆる「地方公営企業法の全部適用」化である。
(以下、全適化 という。)


この全適化、前回のKN病院コンサルのときに、その存在は勉強した。
でも、やったことはないし、やり方も分からない。
そのアドバイザーをするのが、この仕事の第一弾業務であった。


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