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公立病院改革1〈2005年〉北陸350床 KN病院(14)

さて、話は診療報酬について。

実際に医師、看護師その他病院職員とヒアリングで対話すると、病院経営の仕組みもそうだけど、医療現場に密着する上で、医療制度そのものの基本的なことをしらないと、全く対話にならない。
知らな過ぎれば、素人だと、すぐばれてしまう。
実際に当時は、我々が素人すぎて、怒り出す医師や職員が何人もいたくらいである。

その知っておかなければいけない重要な一つが、診療報酬体系だ。
診療報酬体系を知らずに、経営を良くしますなどと言っても、プロの職員たちは当然信じない。

無論、僕が税理士として税法を知るレベルで、診療報酬制度を語ることはできないが。
それでも今は、

「医療行為や医療設備のどんなものに点数が付く」
「時代的に、どんな傾向のものに手厚く、どんなものが冷遇気味」
「診療報酬、介護報酬、薬価などがどんなトレンドにあるか」

など、基本的な流れやポイントは了解しており、それが医療者たちとの仕事に大きな意味を持つ。

診療報酬制度は、簡単にいえば医療の価格表だ。
病人、けが人に対する医療行為に対しては、ほぼすべて点数=価格 が付いている。

患者が来るだけで付く点数もあるし、検査をすれば付く点数、薬を出せば付く点数、レントゲン撮れば付く点数、傷の手当や手術をすれば付く点数など、様々である。


その中で、ベッドがある医療施設(主に病院)に特有の点数が、入院料だ。
患者が1日入院すると、病院は、円換算すれば10,000円~100,000円/日 の収入を得る。
重症、重篤であるほど収入は多くなる感じの話であるが、いずれにしても一人でも多くの患者がベッドを利用することが、病院の収入を安定させることになる。

しかし、ただベッドを埋めればいいわけではない。

患者さん〇人に対して、看護師さんが〇人必要であるとか。
患者さん1人について、病室の面積が〇㎡必要であるとか。
看護(介護)の必要度が高ければ〇円だが、必要度が高くなければ〇円だ、とか。
ここ20年ほどは、入院期間が長くなるほど、収入(入院料)が減るとか。

そういう様々な要件、組み合わせで入院料が決まってくる。
昔は、そこまで細かい要件や組み合わせがあったわけでない。
患者が入院すればするほど、バンバン薬を出せば出すほど、面白いように儲かった時代が続いたようだ。

しかし、国が医療費抑制に躍起になり始めた頃から、どんどん細かくなっていった。
ボクが医療界に入った時期は、その抑制が本格化した時期なので、僕は医療界の世知辛い側面ばかりを見ていることになる。

そんなわけで、基本的にはベッドを埋めていけば、収入額は間違いなく増えるが。
「見合いとしての経費をそこそこに抑えないと」
赤字になる。

この診療報酬体系=価格表 は全国(ほぼ)一律だから、重要になるのは、その経費のコントロールだ。
その、経費のコントロール力に乏しく、おカネが不足するのが、公立病院であり、地方公共団体である。

だから、公立病院改革しなければ、という話になるのである。


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