公立病院改革3-34【自治体のブラックボックス】〈2006年〉東北170床 公立F病院

ここで記してきた一部事務組合は「特別地方公共団体」である。
つまり特別ではあるが、一応自治体なので、ここには「職員」「議員」「議会」がある。

組合議会には、各構成自治体の議会議員から数人ずつが選任され「組合議員兼任」となる。
また少し前に記したように、構成自治体から派遣される職員もいれば、事務組合で直接採用する、プロパー職員もいる。

予算書も決算書も、構成自治体のものと別に、組合予算、組合決算に基づいて作成される。

ところで、全国の市民オンブズマンや研究者たちが、普通地方公共団体の予算書や決算書、条例規則や議事録などを、情報公開請求に基づいて閲覧する。
その県庁や市役所に連絡して、そういう窓口に確認すれば入手できるし、その公開権限は首長(市長や知事など)にある。

しかし、一部事務組合の予算書、決算書、議事録、規約(条例に相当)などは、単純に構成市町村の窓口に行っても取れない。
そもそもオンブズマンや研究者で、一部事務組合には別個に予算や議会運営が存在することに(知っていても)ピンと来ている人は、ほとんどいない。

本件メンバーに加わったJ准教授は、自治体運営の専門家であったが、やはり一部事務組合の実態はよくご存じなかった。
この病院で経験した一部事務組合の特殊性は、専門家であるJ准教授も非常に勉強になったようだった。

つまり一部事務組合というのは、自治体運営上の「ブラックボックス」と化していたのである。

県や市の資料を見ても、一部事務組合の職員数は出てこない。
自治体の予算書などには、一部事務組合に、いくらおカネを入れているかは書いてあるが、その組合の収支や資金状態などは出てこない。

各市町村の負担割合なども、個々の自治体の資料からはいっさい見えない。
ただし規約を公開している事務組合は結構あり、ネット等でそこに行きつけば、規約は読める。

しかし、一部事務組合の予算書、決算書を情報公開請求するとか、そこの規約を読むとか、議会議事録を見たいとか。
そういう発想が出る人は、かなりマニアックな存在だ。

そんなブラックボックスである組合の中で起こっている出来事は、日常、地元マスコミもキャッチできない。
病院の専門家やコンサルタントの中で、その存在を認識して、その性質とリスクを説明できる人など、日本にほとんどいない。

それが一部事務組合という、特別地方公共団体である。


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