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【R18官能小説】官能作家"霧山純生"の情事 妄想ガール 第11話

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姫初め③

 風呂から上がった私は、美月を旅館に残し、愛車に乗り、駅まで麗奈を迎えに行った。

 駅前のロータリーで無邪気に手を振るシルエットが街灯に浮かぶ。

「霧山先生!ありがとうございます!」

 息を弾ませた若い女が助手席に乗り込んできた。

「久しぶりだね。麗奈」
「ですね。クリスマス以来かしら」

 麗奈がシートベルトを締めると、セーターを優しく押し上げている二つの胸の膨らみが強調される。

 麗奈は美しい娘だ。意思の強そうな整った顔立ちと、上背のあるすらっとした肢体は手足が長く、プロポーションが良い。モデルのようにか細い頼りなげな体型ではなくて、胸も尻もほどよいボリュームだ。そのみずみずしい身体はちょうど良い抱き心地がする。

「美月が待ちかねているよ」 

 彼女の親友の話題に水を向けると、

「もう美月とエッチしたんですか?」

 単刀直入な質問が返ってきた。それは質問というよりも事実確認らしい。だから私は「ああ。もちろん」と、うなずいてみせた。隠す必要も取り繕う理由も無い。

「ふうん。そっか。美月に先を越されちゃったか」

 唇を愛らしく尖らせた娘は不満げな顔だ。運転しつつ、横目でその様子を窺う。

「姫初めかい」
「そうですよ」
「うむ。だが…」

 "だが"のあとが続かない。それに、こういうシーンでは余計なセリフは言わないでおくのがよい。今までの経験から私が得た、男と女の機微というべきものだ。

「ねえ先生?」
「なんだい」
「姫初めの由来ってご存知ですか?」
「ああ、知っているよ」

 私はそこで、日本古来から伝わる"姫初め"の知識を披露した。

「元々は艶っぽい意味など無かった。諸説あるが、正月の二日に柔らかく炊いた飯(姫飯=ひめいい)を食べ始める日を称して「姫初め」。江戸時代になってから、その年に初めて女性と性交する意味が加味されたようだ」
「さすが先生ですね。でも…あーあ。美月に姫初めを取られちゃったかあ」
「ところで麗奈」

 姫初めから話題を変えるべく、さりげなく切り出す。

「お父さんの具合はどうなんだい。暮れに倒れたと聞いたが」

 麗奈の父である氷見茂保(ひみしげやす)氏は、東興大学仏文学部の教授だ。氷見の家系は古く、その起源は南北朝時代にまで遡る由緒ある家柄である。その末裔の美しい娘を意のままに抱く私は、なんの由来も無いただの庶民だ。

「父は風邪を拗らせたらしいです。今は快復してピンピンしてますよ」
「そうか。それなら良かった」
「あーあ。そっか。美月にねえ。うーん」

 せっかく姫初めから話題を逸らせたのに、麗奈はまだお冠らしい。

 まったく、かわいい女め。


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