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【こんな映画でした】687.[うたかたの恋]

2020年 9月22日 (火曜) [うたかたの恋](1935年 MAYERLING フランス 96分)

 参った。聞きしに勝る映画であった。世界史でこのような事実というか事件があったように、読んだ記憶があったが。しかし所詮はハプスブルク家の皇太子の話ということで、私にすれば毛嫌いしていた階層の人々のものだ。

 しかしこの映画では見事に乗せられたというか、ヒッチコック流にいうと主人公たちに共感させられて、最後は感動させられる(?)ところまで。なんといってもこれはアナトール・リトヴァク監督のお手柄だろう。

 そしてまさしく17歳のダニエル・ダリューのマリア役、そして[ガス燈]ではいけ好かなかったモーリス・シュバリエが皇太子ルドルフを、観客の気持ちに沿うような演技をしていたと言うべきか。大げさかもしれないけれど、「名作」といっていいだろう。

 作中、日付が二つ出てくる。言うまでもなく推測できるが、一つは彼らが出会った日であり、それは指輪に刻印されている。「1888年11月13日」。そしてラスト、画面いっぱいにその二つ目が表示される。「1889年 1月30日」。つまりわずか二ヶ月半余りのできごとだったということ。

 なおこの監督は1957年に、主役マリアにオードリー・ヘップバーンを起用して、リメークしている。もっとも彼女は撮影当時27歳くらい。未見だが、やはりダニエル・ダリューの17歳には負けているのではないか、と想像する。

 あと貴婦人役で、ルドルフに取り入る狂言回しをシュジー・プリム(撮影当時38歳)が演じている。[どん底]にも出ているようだ。

 似たようなシチュエーションの映画に[短くも美しく燃え]があったな、と。原題のマイヤーリンクは地名であり、そこが彼らの最後の場所であったことからの題名であろう。ヨーロッパの人ならこの題で十分分かるのだろうが、日本ではなかなか難しかろう。そこで邦題は[うたかたの恋]というわけだ。つまり「はかない恋」。名訳かもしれない。

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