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【こんな映画でした】100.[私の中のあなた]

2021年 5月20日 (木曜) [私の中のあなた](2009年 MY SISTER'S KEEPER アメリカ 110分)

 ニック・カサヴェテス監督作品。初めて。これは様々なことを考えさせる佳作。[幸せのレシピ]に出ていたアビゲイル・ブレスリンが今作でも重要な役を。そしてキャメロン・ディアスがその母親役ということで。

 そもそもは姉のため(臓器のドナーのため)に出産があり(仕組まれ?)、生まれたのがこの妹アナであった。最初から「姉のキーパー」としての役割を背負わされての誕生であった。映画[わたしを離さないで]を思い出すところ。

 病人を家族に持つことの大変さ。なかなかシビアに批判的に描いている。西洋医学一辺倒の考え方に警鐘を鳴らすものでもある。西洋医学は薬、薬、薬。手術、手術、手術。それで最後はもう打つ手がない、で終わりとなる。せいぜいモルヒネで痛みをやわらげ、安楽死というわけだ。

 この映画で意表を突かれるのは、その臓器提供を強要される妹が拒否するために両親を訴える、裁判を起こすというところだ。最終的にそのことの意味が明かされるが、それは「泣かされる」ものである。

 家族の中にあって、一体誰が姉ケイトのことをもっとも愛しているか。それは測れるものではないし、また比較考量するものでもない。それぞれがそれなりに彼女のことを愛し、そしてそのために苦しんでいるのだから。苦しむのは母親だけではない。だが母親はそのことに気付けない。あまりの盲愛とおそらく自分が生んだという責任感からくるものだろう。
 しかしそれは的違いである。でも気がつかない。いや、自分を守るために気付かないふりをしているのかもしれない、無意識のうちに。

 手術を受ける本人の苦しみ、臓器提供を強要(?)される妹への愛情、もちろん純粋に愛してくれる母親への愛情、そういったものの中で本人が最も葛藤し、苦しんでいるわけだ。かくして良い時間を過ごしてケイトは死んでいく。
 それでも最後に面会に来てくれていた親戚の人たちは、その期に及んでまだ奇跡のような楽観的なことを発言している。それに、にこやかに耳をかたむけるケイトの心情を思うと辛い。ケイトは彼らの気持ちを汲み、ニコニコと受け答えするが、もう結論は出ているのだ。今夜で終わりが来る、と。

 だから面会時間の終わった後、母親だけに残ってもらい、これまでの私の人生について感謝の気持ちを母親に述べるのだった。大したものだ。いくら子どもであっても、死に際しての決然たる覚悟というのは凄いものだ。

 凄まじいシーンの一つに、母親役のキャメロン・ディアスが丸刈りにするところがあった。ケイトが抗ガン剤治療のため、頭の毛がそっくりなくなり、それを人から笑われるということからきたもの。そしてスキンヘッドの二人と父・兄・妹の五人家族で歩くシーンが。

 俳優では弁護士役のアレック・ボールドウィンがカッコいい。[ブルージャスミン]でも観ている。そして判事役の女優ジョーン・キューザック、撮影当時46歳。二本観ていた。[ヒーロー/靴をなくした天使](1992)と[スクール・オブ・ロック](2003)。後者では校長役だったか。そして姉ケイト役のソフィア・ヴァジリーヴァ、撮影当時16歳。スキンヘッドにもなって。初めて。

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