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【こんな映画でした】435.[メルトダウン]

2021年11月 6日 (土曜) [メルトダウン](2004年 AMERICAN MELTDOWN アメリカ/ドイツ 90分)

 ジェレマイア・チェチック監督作品。これで[妹の恋人]に続いて二作目となるがまったく趣向が違う。こちらはアメリカ合衆国の国家悪を暴く(描く)ものだ。佳作である。現代に生きる人々の必見の映画だ。

 俳優はFBIのテロ対策班の責任者シェイにブルース・グリーンウッド(撮影当時46歳)、10月 9日に観た[アイム・ノット・ゼア](2007年)や[アイ,ロボット](2004)に出ていたようだ。女優では警官役ゾーイにレスリー・ホープ(撮影当時37歳、主にテレビに出ているようだ。よって初めて)。

 見事に国家悪を描いている映画だ。したがって(?)映画評は低いようだ。「ロトントマト」では映画評論家は誰もコメントしていない、というかコミットしていない。ゼロである。オーディエンスはさすがで71%。これはさすがというべきか。真っ当な人たちはいるものだ。

 作られたのは2001年の9.11からまだそんなに時間が経ってない頃である。だからこの事件の真犯人は、アメリカ政府が主張したようにビン・ラディンたちであると断定されていた頃だ。

 しかし驚くなかれ、この映画ではラストシーンになるが、このテロの犯人は「イスラム原理主義者たちで、その拠点はフィリピン」だと報道させている。6人のテロリストたち(?)を全員殺害して、その者たちの写真などを公開せずに、このように断定した報道がなされたわけだ。濡れ衣である。

 事実は、元アメリカ兵、それもアフガニスタンに派遣されていた兵だということ。彼らは(一人を除き)国家に警告すべく、決行したということであった。もちろん政府からしたらとんでもないお節介で、断固粉砕すべき案件であるわけだ。

 だから対策の首脳陣、なかでもワシントンはすぐに突入せよ、つまり全員を殺害せよ、と。これに対してFBIの責任者シェイは反対して、犯人たちの身元をまず明らかにする必要があると主張する。

 皮肉なことにこのテロリストと思われたメンバーが、実は元アメリカ兵だったと分かると、生きたままで逮捕するというFBIの意に反して、全員殺すことにするわけだ。これが漏れる・ばれると国家の一大事になるというわけだ。

 結局、アラブ系の人たちに濡れ衣を着せ、国家は国民のためにやるべきことをやりました、というわけである。国家は国民に嘘をつく。フェイクは当たり前のようになっているということだ。

 穿った見方だが、この映画の関係者は、9.11事件の真犯人もこのようなことではないかと推測していたのかもしれない。だとしたら慧眼としか言いようがない。あれから20年経つがいまだに真相は明かされていないのだが。

 また軍人というものの非情さもよく描かれている。問答無用で撃ち殺している。命令があれば平然と殺していく。それが軍人の本質だということだ。国家の安全を守るための軍事力ということで。

 原題は「アメリカのメルトダウン」、つまりアメリカ国家としてのメルトダウンであり、原子力発電所のメルトダウンだけを意味するわけではない。

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