見出し画像

【こんな映画でした】369.[ドリームプラン]

2022年 5月 9日 (月曜) [ドリームプラン](2021年 KING RICHARD アメリカ 144分)

 輸入盤を購入して観る。マルタ共和国製造のようだ。日本版というか日本での発売はまだひと月以上先なのと、この輸入盤の値段が下がり、日本版と価格的には同じ程度になったので購入した。やはり観れるものなら、早く観たいから。そして上手い具合にこの輸入盤には、ちゃんと日本語字幕と日本語吹き替えまで収録されている。明らかに日本向けに作られたと思われる。商売上手である。スピードには価値がある。

 レイナルド・マーカス・グリーン監督作品。ウィル・スミス(撮影当時53歳)主演。彼以外のは俳優はまったく知らない人たちばかりであった。お母さん役のアーンジャニュー・エリス(撮影当時52歳)が上手かった。初めてである。テレビ出演が多いようだ。

 ヴィーナスとセリーナ役の子役たちも、映画のためにテニスの特訓をしたらしい。もっとも試合のシーンは、メイキングで分かったのだが、やはり本人たちではなかった。吹替というか、スタントウーマンというべきか、本当にテニスをやっている人たちだったようだ。で、今の技術の凄いところだが、その代役の顔の部分だけを俳優たちにすげ替えるというわけである。大したものだ。

 メイキングではモデルとなった本物の姉妹も登場しているようだが、あいにくとこの頃は世の中がマスク一色だったせいもあり、彼女たちもマスクかシールドを着用していたので、分からなかった。

 さて後付けになるが、ヴィーナスやセリーナのコート上のマナーとか、プレイスタイルを見ていて、それはお父さんの教育によるところが大であったのだと知った(もちろん、お母さんもだが)。勝ってもおごらず謙虚であれ、と。しっかり勉強をさせていて言葉も四カ国語話せる、と。

 またテニスクラブでだったか、フリーの食べ物が提供されていて、彼女たちが食べているところへ父親がやって来て、すぐにそれを止めさせるシーンもあった。無料だからといって、それも誰かが負担しているわけであり、安易にそれに乗ってはいけないというわけである。

 練習コートは、おそらく黒人専用の公共のテニスコートであろう。学校が終わった後、そこへクルマで行き、練習をしている。ボールもおそらく200個以上あるだろう、それをカートに乗せて、ボール出しをしていた。何と雨の夜にも。その際は、ワンバウンドしてからでは跳ねないので、コートに落下する寸前にノーバウンドで打たせていた。

 コーチは、まず父親、そして母親である。何とビック・ブレーデンにも会いにいっている。そして氏の練習用ビデオを使ったと言っていた。さすがに彼も無料で引き受けてはくれず、さらに何人かのコーチに当たっている。最終的にリック・メイシーというコーチが引き受けてくれることになり、住んでいたカリフォルニア・コンプトンからフロリダへ引っ越すことになる。

 ただここからも父親リチャードは一筋縄でいかず、まず三年間、ヴィーナスをジュニアの大会に出させないというのだ。準備ができるまでと言っているが、おそらく彼が最も心配したのは、当時人気を博したカプリアティやヒンギスが若くして燃え尽き症候群となっていたことがある。

 早くに名声を得てしまい、商業主義に搦め取られてしまうと、まだ未成熟な彼女たちには悪影響が多いと判断したようだ。ただ難しいのは、テニスに限らないかもしれないが、試合勘というものは試合から離れていると失われるもののようだ。そういった意味でも難しい背景があった。

 しかしついにヴィーナス14歳の時、本人が出場したいと強く訴え、すったもんだの末、出場が叶うことに。結果は二回戦で当時世界ナンバーワンとも言われたスペインのアランチャ・サンチェスと当てられ、敗北を喫する。そのゲームは第一セットをヴィーナスが取り、第二セット3-1までいっており、そのままだと完勝できるかと思われた。ところがこの第五ゲームの前にサンチェスがトイレ休憩を。しかもそれが10分近く。コート上でじっと待っていたヴィーナスは、これで崩れてしまった。リックに「卑劣なやり方だ」と非難するセリフを言わせている。難しい問題だ。

 さて映画はこの敗戦で、ロッカールームで泣いているヴィーナスを両親が慰め、コートを後にする。と、そのゲートを開けると、多くのファンが彼女を待ち受けていたのだ。その中を彼らは家路につくことに。最後にその後の彼ら姉妹の戦績についてテロップが流れる。

 以上のようにこの映画はヴィーナスを中心にしている。しかし、リチャードはセリーナにも今は雌伏の時期だとして次のように言っている。「ヴィーナスは世界ナンバーワンプレーヤーになるが、セリーナは史上最高のプレーヤーになる」、と。お父さんも見抜いていたのかもしれない。プロの選手ではナブラチロワが、やはりセリーナをそのように見ていたようだ。そして証明された。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?