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【こんな映画でした】921.[アリスの恋]

2023年 7月 1日 (土曜) [アリスの恋](1974年 ALICE DOESN'T LIVE HERE ANYMORE アメリカ 112分)

 マーティン・スコセッシ監督作品。アリスをエレン・バースティン(撮影当時41歳)。地味な感じの女優だ。どこにでもいそうな普通の女性、といったところ。相手役は歌手で、俳優としてはまだ新米のクリス・クリストファーソン(撮影当時38歳)。そしてジョディ・フォスター(撮影当時11歳)が少年のような感じで出ていた。初めは分からなかった。

 端的に言うなら、女性の自立を描こうとしたもの。主婦アリスの家事のシーンから始まる。そして夫への食事の提供。何か常におどおどしている。それだけ夫の経済力に依存せざるを得ないという状況を表すものだろう。一人息子もそんな父親に馴染んでいない。転機は、そんな夫の交通事故死。彼女は息子を連れてその町を出て行く。自立への旅立ちということになるか。

 オープニングシーンから分かるように、アリスは子どもの頃から歌がうまく、結婚するまでのしばらくは歌手であったようだ。1960年代のアメリカ合衆国のことであるから、女性は結婚したら仕事を辞めて家庭に入るのが当然とされていたのだろう。

 さていよいよ自立への旅が始まるが、肝心なのは仕事を得ることだ。案の定、歌手としての仕事はなかなか見つからない。ようやく見つかり、ボーイフレンドもできたとおもったら、その男(ハーヴェイ・カイテルの迫真の演技)がとんでもないDVで、急いで夜逃げすることになる。

 次の町では、ついに歌手での仕事はなく、ウェイトレスに。ここでデヴィッド(クリス・クリストファーソン)と出会うことになる。あとは映画会社の意向通りにハッピーエンドに。

 今では当たり前のように考えられている女性の自立というものが、この時代にあっては風当たりが強く、たいていの女性はその「男性・夫を支える立場」に満足せざるを得なかったわけだ。アリスの場合も偶然、そのような生き方をせざるを得なくなったわけではあるが、そもそも彼女の中にそのような願望が伏在していたからだろう。

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