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【こんな映画でした】176.[狩人の夜]

2019年11月11日 (月曜) [狩人の夜](1955年 THE NIGHT OF THE HUNTER アメリカ 93分)

 辻邦生の『美しい人生の階段 映画ノート'88~'92』に紹介されていた映画。DVDを購入。残念なのは字幕が日本語のみ。だからロバート・ミッチャム扮する伝道師が、「リーリン」と繰り返し繰り返し歌うシーンがあるが、字幕は「頼れ」。おそらく「rely on」だろう。信仰とは頼ることなのかもしれないが、私はそうではないと思うので良い気がしない。その歌声というかも、今一つ、不気味としか言いようがない。

 監督はチャールズ・ロートンで、俳優としては[情婦]を観ている。主役の伝道師役ロバート・ミッチャムは見事としか言いようがない。彼以外も見事なキャスティングだ。ジョンの母親役のシェリー・ウィンタースも良い。何といっても子役が良い。ジョン役はBilly Chapinで、撮影当時11歳だろう。大したものだ。妹役のサリー・ジェーン・ブルースは撮影当時6歳、歌声は本人のものだろう。

 内容は、オープニングからして極めて宗教的と言うべきか。リリアン・ギッシュが聖書の話を子どもたちにする。それは今から始まる映画の中身についてのヒントともなっている。
 ただ内容が内容だけに、長らく公開されなかったようだ。何しろ伝道師がいわば偽善者であり、犯罪者なのだから、宗教関係者の顰蹙を買ったのだろう。ただリリアン・ギッシュ(撮影当時61歳)は、最後まできちんと発言しているのであるが。

 いろんな動物が合間に挟まれて出てくるのも気になる。カエル・カメ・ウサギ・羊・キツネ・鳥籠の鳥(シルエット)・フクロウ、そしてネコ。ラストで伝道師がネコに引っかかれて逃げていく。ネコは魔女の使いということか。

 特異なこととしては、この伝道師は親指を除くあとの四本の指の第二関節と第三関節との間の甲側に刺青をしている。相手から見て右手には「LOVE」、左手には「HATE」と読める。「愛」と「憎しみ」。そんな単純に二つに分けられるのかどうか。しかし彼はそれを利用して説教をする。左手はアベルを殴ったカインの手、だと。

 文化的背景で、分からないことがどうしても残る。少女パールはまだ幼いので簡単に伝道師を受け入れてしまうのは止むを得ないが、ジョンの母親がなぜあんなに簡単に再婚してしまうのかとか、あの伝道師がなぜかくも簡単に牧師としてその地域の人たちに信用されてしまうのか、など。

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