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【こんな映画でした】325.[たそがれの女心]

2021年12月28日 (火曜) [たそがれの女心](1953年 MADAME DE... フランス/イタリア 100分)

 マックス・オフュルス監督作品。3作目。ダニエル・ダリュー(撮影当時36歳)とシャルル・ボワイエ(撮影当時55歳)、そしてヴィットリオ・デ・シーカ(撮影当時52歳)の大物俳優三人の競演。オープニングシーンのテロップで、この映画では「宝石」が重要な役割を果たすことが暗示される。
 果たしてその耳飾りのダイヤの宝石が、何人かの間をぐるぐると回っていって、その間にもともとの持主である伯爵夫人のその耳飾りに対する思いが変化していくのが面白い。そしてその微妙な色合いを見事に描いているといえようか。

 後で思い出して数えてみると、最初に購入されてから、最後に教会に寄付されるまで13回であった。そういえばルーレットに13にばかり賭けて有り金をすってしまい、この宝石を手放すシーンもあった。

 カメラアングルも新鮮である。クローズアップとか、一階の出口から出ていく人を二階から俯瞰で捉えたり、と。あるいは書いた手紙を細かく破って、列車の窓から吹き飛ばしていくシーンとかも。なお紙吹雪が飛んでいったところから雪景色に変わっていくのも見事な転換の仕方だ。

 この紙吹雪を観て[砂の器]でのシーンを直ちに思い出した。もちろんこちらは紙ではなく布切れであったのだが。とまれ先例があったということか(松本清張原作なのでそこに書かれていたのかもしれない)。

 何と言ってもダニエル・ダリュー(2017年100歳で亡くなっている!)が魅力的、美人である。ツンとすました、男性を弄ぶような雰囲気を持って登場。その後ヴィットリオ・デ・シーカ演じる男爵との間に真の愛情を持つに至ると、その表情がしっかりしたものに変化していったように私には見えた。

 ラストはどうなったのか、はっきりとは観客に見せてくれない。それがまた上手いというべきなのかもしれない。つまり伯爵夫人は心臓が弱かったということで、決闘の銃声を聞き、亡くなってしまう。ラストシーンはその伯爵夫人の持ち物であった耳飾りが、教会に(夫である伯爵から)遺贈されたシーンのアップであった。

 なお決闘した二人の男性の生死は、はっきりとは映像化されてない。一発の銃声であるから、可能性としては一人が亡くなっていることに。やはり男爵が殺されたことを意味しているのであろう。その前の銃の練習で、軍人である伯爵の腕前が紹介されているので。

 ただ不可解なのは、この決闘のやり方だ。これまで見てきたものは、二人が合図とともに同時に撃ち合ったものだった。ここではまず挑戦者が撃つことになっていた。それが当たれば、もう一方は発射することなく死んでいるということになる。

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