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【こんな映画でした】126.[緑色の髪の少年]

2020年12月 5日 (土曜) [緑色の髪の少年](1948年 THE BOY WITH GREEN HAIR アメリカ 82分)

 ジョセフ・ロージー監督作品。気になっていて早く観たいと思っていたが、このほどようやく入手。ただ如何せん画質が悪い。廉価版であるせいもあるか。クライテリオン版がないかと見てみたが、無いようだ。いろんな意味で良い作品だと思う。一言でいうなら人々の「差別意識」の問題であり、それに加えてここでは「戦争」批判がある。

 主人公の少年は、まさしく戦争孤児なのだ。ロンドンで両親を亡くし孤児となり、親戚をたらい回しされていく。そして最後に行き着いたのが、舞台となる「祖父」の家。祖父といっても、直接の血縁関係はなかったようだが、人間的に真っ当な人であったことから、少年ピーターは落ちつけることに。ところがある朝、起きて風呂に入ってから髪の毛が緑色になるという珍事に遭遇することになる。

 原因は分からない。使った石鹸が緑色だったためかと彼は思い、もう一度別の石鹸で洗い直すも、髪の毛は緑色のままであった。そこから彼の苦難が始まる。珍しがり面白がる程度の人もいるが、大半は気味悪がり伝染病のようにうつると怖がる人も出て来て、彼らの隠された差別意識が顕然化されていく。
 対策として、まずは医師に相談。しかし分からない。色を染め直すかと問われるも、ピーターは承服しない。最終的に学校にも行けなくなり、家にこもることに。

 それでも思い直して、祖父に付き添われて学校へ行く。早速、友達たちに取り囲まれることに。教室ではブランド先生(バーバラ・ヘイル、撮影当時26歳)が彼を守ろうとして一案。すなわちクラスの生徒たちの髪の色を順に聞いていくのだ。アンケートのように。黒とかブラウンとかは複数いるが、緑色と赤毛はそれぞれ一人。先生がみんなに「何か質問は?」、と。

 しかしその後も、暴力的に緑色の髪の毛を切ろうとしたりする者が出てくる。恐怖心に基づく差別意識は、簡単に消えるものではない。さらに大人たちも常識外れの、毎日飲んでいる牛乳が悪いとか、水道の水が悪いと口にし、ついに祖父のところに談判に来る。祖父は屈してピーターに髪の毛を切るように勧める。涙ながらにピーターは丸坊主に。
 そしてその夜、彼は家出をする。それがこの映画のオープニングシーン、警察署の場面となっている。

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